インタビュー

Interview

川嶋 正士教授 文化情報専攻 言語教育研究コース

先生の研究テーマについてお聞かせ下さい。

学部生の時に留学した University of Massachusetts at Amherstで,初めて最先端の生成文法を学びました。David Pesetsky, Edwin Williams,Barbara Partee, John McCarthy など,名だたる世界的権威に薫陶を受け,それ以来生成文法における日英比較対照言語学を研究してきました。
 現在は,生成文法を含む統語論の知見を活かし,教育英文法に見られる5文型の研究に取り組んでいます。
 編成における統語理論的問題を研究していたのですが,日本で知らない者はいないほど普及した 5文型が海外ではほとんど知られていないことや,誕生の背景や日本への移入の経緯について,ほとんど研究されていないことに気がつき,英文法や英語教育の史的研究に軸足が移ってきました。

先生の経歴について教えてください。

上智大学外国語学部英語学科に入学し,大学院の博士後期課程まで9年間在籍しました。
 博士後期課程在学中に山形県立米沢女子短期大学に採用され,大学院を中退しました。
 その後,日本大学工学部にうつり,現在に至ります。
 大学院は,単位取得の満期退学とならなかったのですが,これを埋め合わせるために博士号を取得すべく精進しています。
 工学部からは,海外派遣(長期)により,City University of New York, the Graduate School で1年間研究させていただきました。
 大学院総合社会情報研究科では,令和4年度より教えさせていただいています。

インターネットを使った通信教育についてのご感想は?

今年度本大学院で教え始めるまで,通信教育の経験はありません。manaba folioを用いることも,専門的な講義に関して添削を行うことも初めての経験です。いろいろな方々に教えてもらいながら進めています。
通信教育に準じることとして,コロナ禍における遠隔授業でインターネットを用いた教育や研究を行ってきました。慣れてくると,利点のほうが多く感じられるようになりました。
 学会においては「反比例の法則」というものが指摘されます。オンラインの会合では,距離が遠くなるに従い,参加者が多くなるというものです。
 ハンガリー科学アカデミーと日本学術会議の間で開催する「二国間交流事業」というものに参画していますが,2021年度に開催した国際ワークショップでは,多岐にわたる国から発表者・聴講者が集まりました。
 時差さえいとわなければ,世界レベルの研究会に気軽に参加できることは大きな利点と思います。
 通信教育でも,オンラインの利点を生かしたいと考えています。

オフラインでのエピソードは何かありますか?

留学や国際会議での発表,あるいは研究打ち合わせや資料調査などで外国を訪れることが多くありました。多い年は,国際線で7往復したりしました。現在は,インターネットで調査も会議もできますが,やはり現地で得る情報や交流はかけがえがないものです。

2006年4月から1年間City University of New Yorkで客員教授として研究させていただきました。そこで教えていた生成文法における2次叙述(Secondary Predication)研究の第1人者であるMarcel den Dikkenとは今でも交流があります。研究面でもよい関係にあったのですが,お互い音楽の趣味が合うことがわかり,一緒にライブなどに言っているうちにより仲良くなりました。

彼がハンガリーに移った後も研究の交流は続き,現在は日本学術会議とハンガリー科学アカデミーの間での二国間交流事業として大きなプロジェクトが進行しています。

趣味,休日の過ごし方は?

若いころは,体を動かすのが好きでした。夏はダイビング,冬はスキー,春・秋の気候の良いときはモーターバイクでツーリングを楽しんでいました。
 それ以外にジムやプールで汗をかいていたものでした。
 老化が進むのと,良い研究テーマに出会い,研究に没頭するようになったことで,このごろは内向的になっています。コロナ禍で外出できなくなった時も,喜々として書斎に引きこもり,朝から晩まで研究していました。研究の際は音楽をかけます。今も,朝から晩までオペラを聞いています。
 10年間乗っていないバイクは,「修理するより下取りに出して買い替えたほうが良い」といわれています。
 今取り組んでいる大きな研究がまとまったら,買い替えたいと思っているのですが,そのころはさらに大きな研究に喜々として取り組んでいるかもしれません。

志望者に向けて,一言お願いします

大学院では,専門的な研究を行います。しかし,1つのテーマに細分化すると視野狭窄に陥り,目的を理解してもらえない,還元性の低い研究となってしまいがちです。
 自分の専門を深化させながらも,様々な隣接分野の視点から見つめなおすと,今までにない新規な発想を得ることもあります。
 1つを深めることと,射程範囲を広く構えるという不両立に思える事柄が,いつか結実することがあります。肝心なことは,結果が出ようと出まいと研究を継続することです。
私も,常に自分の研究がヒットしてきたわけではありません。取り組む研究の成果が芳しくない時期もありました。時には書けない苦しみも味わいました。しかし,常に何か,調査・研究していました。その中で,現在のトピックに出会い,約10年間研究に没頭しています。
 今は,書けなかった日々を取り返すかのように,論文や著書の執筆にいそしんでいます,これから研究を始める皆さんも,そのような日が来ることを信じて研究を続けてくれるといいなと思っています。
 Work hard. Fly high!

教員プロフィール

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