上野 広治教授 人間科学専攻 スポーツ科学コース
先生の研究テーマについてお聞かせ下さい。
コーチング学に関する研究をしており,特に水泳のコーチングに関する研究を行っております。研究を始めた当初は,水泳部顧問や競泳日本代表監督としての経験を踏まえて,強化戦略やチームマネジメントに関する研究をし,2020年東京五輪に向けての競泳ジュニア強化戦略の検証など,得られた結果を指導現場に活かしていくことのできる研究をしていました。近年では,三軒茶屋キャンパスにある流水プールを活用し,競泳選手の最大酸素摂取量の測定や血中乳酸濃度の測定を行い,トレーニング効果の検証をする生理学的研究や,水泳選手に多い肩の怪我・傷害に関する研究をすることで,現在の競泳指導現場における疑問や諸問題を解決する研究をし、コーチング現場に活かしています。
先生の経歴について教えてください。
大学を卒業して,母校である日本大学豊山中・高等学校の教諭となりました。教員をしながら,水泳部の顧問としてコーチングにあたっておりました。また、日本水泳連盟で競泳日本代表ヘッドコーチや監督をつとめ、指導現場において幅広い競技レベルにおけるコーチング経験を積んできました。日本水泳連盟において副会長として水泳競技の発展・普及に努めると共に、日本オリンピック委員会理事として、オリンピック競技の国際競技力向上に努めてきました。平成28年からは日本大学スポーツ科学部の教員となり、学生や社会の変化に応じたコーチング方法の変化も必要であると感じています。中学生や高校生、そして大学生、オリンピック選手までをコーチングしている経験が現在の研究活動や学生指導に繋がっていると考えています。
インターネットを使った通信教育についてのご感想は?
インターネットの普及に伴い、通信教育の需要が増えてくることは感じておりましたが、2020年の新型コロナウイルス蔓延により世界は新たな時代に突入したと考えております。対面で行っていた大学の授業も感染予防の観点からオンライン授業に変換するなど、今ではインターネットなしでは教育をできない時代になっています。また、学生からはインターネットを使った通信教育の方が集中できるという意見があり、教員の工夫次第で、通信教育だから提供できる教育もあると感じています。通信教育の最大の強みは,いつでもどこからでも勉強することができることかと考えます。特に社会人の方にとっては、仕事も行いながらの勉強となり、いかに時間をマネジメントできるかが重要になってくると思います。インターネットを使った通信教育を活かし,いつでも学びたいときに学べることは,社会人にとってとても魅力的な学習方法だと思います。
オフラインでのエピソードは何かありますか?
オンラインでの教育にも慣れましたが、スポーツのコーチング現場はほぼオフラインです。指導する選手の表情を見ながら直接指導することで、適切な声掛けやコーチングができると共に、問題や課題があった際に、それを解決するにはオフラインの方が良いと感じています。コロナ禍になったからこそ、課題や変化に気づきやすいというオフラインの利点を改めて感じることができたと考えます。一方で,会議や研究に関するディスカッションなどは,オンラインの普及により,どこにいても参加できるようになり,仕事と研究,指導現場など時間を有効活用し,様々な仕事を同時に進めやすくなったと感じています。コーチング学に関する研究を進める上で,コーチング現場の状況を把握しておくのは非常に重要であり,最後は指導現場に活かすという点を考えると,オンラインだけでは研究は完結せず,オンラインとオフラインを上手に活用していくことが重要であると考えます。
趣味,休日の過ごし方は?
社会人になってからも水泳の指導現場に立ち続けていたため,部活動や大会があり、常に生徒や学生のことを考えていたように思います。また、50歳を過ぎてから、社会人大学院に入学し、時間の合間をぬって、論文を読み、大学院で提示される課題やレポートを行っていました。大学院を卒業してからは,所属する学会の学会誌等を読み、最新のコーチング方法を知ると共に、平日・休日問わず、コーチング現場に立ち続け、学生の指導にあたり、現代に即したコーチングの在り方について考えています。
志望者に向けて,一言お願いします
社会人になられてから大学院への進学を志望される方は、何か目的があると思います。大学院では仕事をしながら大学院の時間を作る必要があるため,効率的に物事を進める必要があります。社会人になるとどうしても時間の制約により、仕事や大学院の課題をこなすことに気を取られる方が多いように感じます。大学院での学びは、自ら課題をみつけ、それに関する最新の情報を学び、課題をどう解決するかを考え、道を開いていくものです。これは研究の基本であり,またその後の人生にも活かせることと思います。大学院に進学した目的を忘れずに,有意義な大学院生活を過ごしていただきたいと思います。