インタビュー

Interview

山﨑 眞紀子教授 文化情報専攻 文化研究コース

先生の経歴について教えてください。

別に本がたくさんあった家庭環境に育ったわけではないのですが,幼い時から本が好きで,買ってもらった本を何回も読んでいました。つまり,今から思えば本は宝物のように大切なものだったのです。字が読めるようになって,初めて買ってもらった絵本がシェイクスピアの「リア王」でした。自分で選んだのですが,理由はよく覚えていないですが,王女が冠をかぶった美しい姿が気に入って,直感的に選んだのだと思います。

私自身が3兄弟の末っ子なので,「リア王」に出てくる三姉妹の末っ子・コーディリアに加担して,彼女の生き方こそ立派な人間のすることだって思いこみました。

リア王は家督を譲るときになって,自分のことをどれほど大事に思ってくれるか,言葉にして聞きたかった。姉二人は言葉を尽くしてその思いのたけを述べます。コーディリアは姉たちとは異なり巧言令色を嫌い,シンプルに「真心を捧げます」(絵本の言葉)とだけ言います。もっとたくさんの言葉を弄した甘言を期待していたリア王の怒りを買い,勘当されてしまいます。今から思えば,私が文学研究に進もうとした理由はここにあるのではないかと思います。つまり,心に思っていることをいかに言葉にするのか,しかも,コーディリアの二人の姉のように,心にもないお世辞を言うのではなく,心と一致した言葉をどのように表に出すのか,このことに関心を抱き続けてきたわけです。

ですが,ご存知の通り「リア王」は悲劇です。私の人生も,お世辞を言えない(言ってはだめって思いこんできた)ために,どちらかと言えば余り幸運に恵まれない,言ってみれば悲劇的な人生を歩んでき田のかもしれません。

心の中で思っている言葉を,どのように表現すれば,人は自分の信じる道を歩むことができるのか。言葉はとても大切です。そしてそれを心に広く伝える物語という器がどのようなものであればよいのか,そういう観点で見ると,世に残っている優れた小説は実に素晴らしいさう品群が多いです。

インターネットを使った通信教育についてのご感想は?

物理的な距離を飛び越えることのメリットを感じています。

オフラインでのエピソードは何かありますか?

結構たくさんあります。こちらの大学院には皆様,豊富な社会経験を経て入っていらっしゃいますので,一人一人がピンポイントの動機を持っていらっしゃいます。若い学生と接する思いとはまた別な,深い感情が沸きます。

オフラインでは,文学散歩などフィールドワークにも共にできるだけ多く出掛けることを心掛けたいです。

趣味,休日の過ごし方は?

映画や観劇が好きなので,観に行っています。特に映画はDVDで済ますという方法もあるのですが,なんといっても暗い映画館の中で,スクリーンと向き合う時間は,何もかも忘れられて作品世界に入り込むことができるから,非常に魅力的です。

また,文楽や歌舞伎,現代劇など演劇一般もアトランダムに観ています。生身の人間が目の前で演じてくれる,その迫力は何物にも代えがたいですね。また,子どものころからプールなど水に入るのが好きでした。最近はあまり泳げなくなってしまいましたが。

志望者に向けて,一言お願いします。

私は信仰を持たないのですが,何を支えにして生きてきたかというと,文学作品を読むことで,何かしら乗り越えてきたように思います。少し大げさですが俺まで私を支えてくれた文学の神様にとても感謝しています。

「研究」というと堅苦しいイメージがありますが,作家研究にせよ,作品研究にせよ,テクスト分析にせよ,好きな対象を見つけて,とことん読み,調べ,考え,そして書いていくことで,それまで見えなかった地平が開けてきます。その瞬間は何物にも代えがたい至福の時です。一緒に新たな地平を開いていきましょう。

教員プロフィール

PAGE TO TOP