インタビュー

Interview

和田 万紀教授 人間科学専攻 心理学コース

担当科目を教えてください。

(博士前期課程)社会心理学特講
心理学からのアプローチとして,社会心理学の基本的な枠組み,理論等の習得を目指します。そして,社会的存在としての人間について,様々な研究例から考察していきたいと思います。

(博士後期課程)産業・組織心理学特殊研究
不適応や問題行動などにおける感情や行動の規定因について,社会心理学の基本的枠組みをもとにしながら,考察していきたいと思います。社会心理学の枠組みから,現実場面での経験や取り組みがどのように考察されるのか,また,現実場面での経験知がどのように社会心理学の理論や枠組みへとつながっていくのかを考えます。

先生のゼミの特色・院生のテーマは?

自分が何に興味があり,何をしたいのか,を明確にすることから始めます。 そして,それが「心理学」の大きな枠組みのなかで,どのような方法で,論文として形あるものにできるのか,を考えていきます。その過程のなかで,心理学の面白さを感じていただきたい,と思っています。

実際にデータを収集し始めると,慣れないうちは戸惑うかもしれません。それでも,目の前にあるデータを大切にしてください。手元にあるデータが「いとおしい」と思えるようになれば素晴らしいことだと思います。

指導に際しては,可能な限り,直接的コミュニケーションを大切にしたいと思っています。

先生の研究テーマについてお聞かせください。

人間の情動と行動についてです。遙か昔,卒論で,女性特有の不安と行動についての調査を行いました。女性が抱える特有の葛藤状況においては,世間一般に評価される目標達成行動も抑制されてしまうことがある,という少しショッキングな論文を下敷きにしました。この論文が私の原点です。そこから,行動を決定する認知的過程に興味が移りました。物事をどの様に捉えるのか,そのとらえ方によって次の行動が変わってくる,または,変えることができる,という考え方を基礎にしています。次に,人は何でも正確に物事を捉えようとするのか,正確に捉えることができるのか,という問題がありました。人の認知過程における動機や感情の効果に興味を持ったのです。これらを考える過程で,行動する自分自身を,自分はどの様に捉えて受け入れるのか,という根本的な問題に回帰しました。この問題は,現在,時間という変数を加えて継続しています。

一方,この10年ほど,不安やストレスの低減にむけての取り組みとして,例えば香りや森林,高原といった環境要因のもつ効果を共同研究として行ってきました。これらの知見をまとめて,最近では,教育場面での応用や学習活動の評価をできないか,と考えています。

先生の経歴について教えてください。

大学院を単位取得退学後,幸いにも日本大学文理学部心理学科の助手という「職業」を得ることができました。この職業は,2つの意味で,今の私を形成することになりました。 1つめは,助手という職種です。それまでは学生として在籍していた「学びの場所」が,一転して「職場」となりました。そこで経験したことのなかに,大学という教育の現場が,1年間というサイクルでどの様に動いているのか,研究資金の調達から学生の指導まで大学という組織の運営を実践的に学ばせてもらったと言うことです。ここでの経験や知識が,他の「職場」に移っても,さまざまな観点で応用できる基礎を作ってくれましたし,いざというときに役に立ちました。大学院まで学生という立場で過ごすと,ともすると世間から隔絶した世界を形成しがちです。遅ればせながら,大学という特殊な場ですが,世間を知ることができました。

2つめは,この助手の在職期間に,大学院に再入学をして,学位を取得させてもらいました。職業を持ちながら,学生を続けることを可能にしていただいたのです。仕事が終わってから論文作成に取りかかり,また,時間をやりくりして,実験や調査を行わなければなりません。1日24時間では足りませんでした。それでもあのときに学位取得をめざして行動しなければ,今の私は無かったと断言できます。

その後,短大,大学で教鞭を執るという経験をしました。そこでは,心理学を専攻とする人間は私1人で,他は異分野の先生方という状況でした。「言葉が通じない」という経験をしたのです。その一方で私が「心理学」の旗を立てることになりました。心理学の様々な分野の勉強をして,問いかけに答えなければなりません。その中での楽しみは,1つの問題を複数の分野の先生方と一緒に解くという共同作業の経験でした。例えば情報文化学とは何か,ということについて,社会科学,文学の分野からだけではなく,自然科学や工学の分野からも先生方が加わりました。大変知的好奇心をかきたてられる経験をしました。

このとき私は初めてのゼミを担当しました。ゼミを通じて,1人の学生と向き合うことの難しさ,おもしろさを経験しました。その学生たちとは今も交流が続いています。ゼミという形態の個人教育の実りを実感しました。

現在は法学部に所属しています。日本ではまだ心理学が法学にどのように貢献できるのか,未知数です。それは多くの可能性が残されている,と解釈できると思います。心理学の応用分野の開拓にすこしでも役に立てればと思います。

インターネットを使った通信教育についてのご感想は?

教育の原点は,やはり1対1の対面コミュニケーションにあると信じています。その中で,お互いの人間性にふれながら,何かを育むことができれば最高であると思います。

インターネットでの通信教育は,1対1が基本ですが,直接的に対面することは限定されています。その分,いつでも,どこでも,という利便性が優れていると思われます。この利便性があるが故に,多くの人が学ぶ環境を確保でき,可能にしていると思うと,技術の進歩はすごいと感じます。

その一方で,送られてくるメールを見るたびに,かつてはやった歌のように,メールの画面をそっとなでてみたくなる。画面の向こうにいる人は一体今何を思い,何を感じているのか,大変興味があります。そこには,デジタルの文字に表すことができない何かがあるのではないでしょうか。その何かが私には興味深くてしょうがないのです。

趣味,休日の過ごし方は?

これといった趣味はありませんが,ときどきプールで歩いています。水の感触も好きですし,プールから上がると,体も心もすっきりとして大変気持ちよく過ごせます。

志望者に向けて,一言お願いします

心理学というと,派手なイメージを持たれるかもしれませんが,実際は大変に地味な学問です。何事もそうであるように,心理学を学ぶに際しては,「お作法」があります。
まずは,心理学全般とその方法論についての基礎知識を身につけてください。心理学という学問が,一般に語られているイメージといかに異なるかを痛感されると思います。また,方法論に関しては,統計学や実験計画法,調査法などを学ぶことから始めることになります。多くの方がそこでつまづきます。それでもあきらめないでください。心理学という枠組みで,自分の興味ある事柄を形にすることと,その楽しさを知ってほしいと思います。

教員プロフィール

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