インタビュー

Interview

清水 享教授 文化情報専攻 文化研究コース

先生の経歴について教えてください。

大学の学部時代は史学科で日本考古学を専攻し,卒業後は少し出版社で働いた後に東京の葛飾区の発掘の現場で調査員として従事しました。大学生のころから旅行が好きで,何度か中国に旅行したことがきっかけで中国の少数民族の文化に興味を持ち,中国北京にある中央民族大学で漢語と少数民族である彝(イ)族の言語を学びました。大学院に進学し,この彝族の歴史,文化,社会の研究を始めました。彝族は中国の四川省,雲南省,貴州省に居住する少数民族ですが,日本ではあまり知られていません。そして四川省涼山地方という地域で主にフィールド調査を行ない,研究を進めています。今まで彝族の宗教職能者である「ピモ」の研究や,近代彝族民族エリートの研究を行ってきました。彝族は独自の文字である彝文字があり,この文字で書かれた文書の調査なども併せて進めてきました。彝文字文書の調査では台湾の図書館でも調査をしたこともありました。彝族研究以外に雲南省で生態環境史に関する碑文のフィールド調査研究やラオスでランテンヤオの文書調査を行ったこともありました。また最近はネイティブ人類学研究(国内研究)の機会があり,福岡市博多区で行なわれる博多祇園山笠に関してフィールド調査も進めているところです。

インターネットを使った通信教育についてのご感想は?

今まで通信教育部(学部)で,レポートとスクーリングによる授業を行なった経験はあったのですが,インターネットを使っての通信教育の授業の経験はあまりありませんでした。レポートによる指導では,対面でない上に封書でのやりとりとなるため,理解確認がうまくできなかったり,返答にタイムラグが生じたりしていました。そのためどうすればよりよい指導ができるか,さまざま考え悩んだこともありました。インターネットによる通信教育は,これらの問題の解決が進み,まさにリアルタイムで遠隔地における授業が可能となったと思います。ネットを通じてのサイバーゼミの対面授業とメールによる緊密なやりとりは,ネット環境さえあれば世界中で授業が行えるようになるということであり,これはまさにフィールド調査を中心とした研究方法を進めている私にとっても最良の授業ができる可能性を秘めていると思います。

オフラインでのエピソードは何かありますか?

インターネットの繋がらないフィールドではいろいろな経験をさせてもらいました。フィールドで調査をしているときに現地の人と酒を酌み交わし,調査にならないことも多々ありました。祭りのときには牛,羊,豚が野外で大量にさばかれ,人々に供されるのを目の当たりにしました。また野外で死者を荼毘に付す葬礼に参加したこともありました。現地で乗ったトラックのハンドルが壊れて崖に突っ込んだこともありした。このときは幸いスピードが出ておらず,けがはしませんでした。フィールドではそう簡単には経験できないようなことも多く,なかなか刺激的です。

趣味,休日の過ごし方は?

もともと旅行が好きで,若いころは中国やその周辺をリュック一つでフラフラ回っていました。いわゆる「バックパッカー」ですね。最近はあまり時間も取れないので,日本から近い台湾で温泉巡りをすることが楽しみとなっています。台湾は日本と同じ火山帯なのでたくさん温泉があります。また50年間の日本統治もあって,日本の湯治場風の共同浴場も多く,こうした地元の人しか行かない温泉を回るなどしています。ただ亜熱帯の台湾では,温泉上がりになかなか汗が引かないのが悩みどころとなっています。

志望者に向けて,一言お願いします。

すべての物,すべての事に興味と疑問を持ち,その答えが出るか分らなくとも,自分の頭脳を使って思考することは,人間にとってとても大事なことです。そしてこれが「学び」なのです。人類の「知」はこうした人間の興味と疑問の活動の上に成り立っています。すべての物,すべての事がある場所が「フィールド」です。すなわちフィールドはどこにでもあるのです。フィールドから出発する「学び」を始めましょう。フィールドからの「学び」の場が開かれているのがこの大学院です。

ゼミ生の研究テーマ

・日本文化における「媒(なかだち)」としての米:田島祇園祭の事例を中心に

教員プロフィール

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