インタビュー

Interview

島田 めぐみ教授 文化情報専攻 言語教育研究コース

先生の経歴について教えてください。

1989年に日本語学校で非常勤講師として日本語を教え始めたのが日本語教育との出会いです。最初のころは日本語教育についての知識はほとんどありませんでしたので、教えるというよりも多くのことを学ばせてもらいました。習得のために「日本語」を学んだ経験がなかったため、すべてが新しい知識で、新しい知識を得ることに興奮を覚えました。そのころ、のちにハワイの日本語を研究するきっかけとなる出来事がありました。それは、ハワイ出身の学生からハワイでは「鳥肌」のことを「goose bumps」ではなく、「chicken skin」と言うと聞いたことです。その理由は、ハワイに多くいる日系人による造語だろうということでした。このような現象は、言語接触が生じている地域では珍しいことではありませんが、当時の私には衝撃的で、長い間忘れられずにいました。

日本語学校で教えるうちに日本語教育を専門的に学びたいと思い、30歳の時に東京学芸大学の修士課程に進学しました。修士論文のテーマは指示詞の習得研究でした。修士課程修了と同時に、日本貿易振興会(現在の日本貿易振興機構、JETRO)で働くことになりました。大学院時代の先生が日本貿易振興会で開発していたJETROビジネス日本語能力テスト(現在のBJTビジネス日本語能力テスト)の開発に携わっていたためです。ここでテスト業務に関わったことが、言語テストについて研究するきっかけとなりました。3年半後、東京学芸大学で専任の職を得ますが、テストの研究は続けました。しかし、当時、テストや統計について学ぶ機会はあまりなく、講習会に参加したり、本を読んだりしながら独学で学んでいましたので、きちんとテスト理論を学びたいという思いが次第に募っていきました。そんなある日、偶然、のちに恩師となる先生から名古屋大学の博士課程に社会人特別選抜があると聞き、翌月には願書を提出し、進学しました。40歳の時でした。そして、現在に至るまで、言語テストについて研究を続けています。

さて、1990年ごろ日本語学校で聞いた「chicken skin」について本格的に調べる機会はその後しばらくありませんでしたが、14年後ようやく実現しました。2004年から2005年にかけて8ヶ月ほどハワイ大学ヒロ校で研究する機会が得られ、日系人コミュニティに入れたからです。振り返ってみると、研究や仕事の多くは人との出会いで道が開かれました。これからも人とのつながりを大切にしていきたいと思います。

インターネットを使った通信教育について,どのようにお考えですか?

海外に住んでいる、仕事を持っている、子育てをしている、介護をしているなどで通学が難しい人はたくさんいます。通信教育は、そのような方々が学べる、すばらしいシステムだと思います。実際、私の指導学生は、海外で日本語を教えていたり、企業で働いていたり、子育てをされていたりします。そのような方々と、インターネットを通じて意見交換することを楽しんでいます。

オフラインでのエピソードは何かありますか?

コロナ禍以前は、日本語教育関係の学会の大会にゼミ生とともに参加していました。食事を共にしながら、発表内容について意見交換をしたり、それぞれの研究の進捗報告をしたりしました。できるだけゼミ生と一緒に学会や研究会に参加する機会を作りたいと思っています。

趣味,休日の過ごし方は?

趣味と言えるかわかりませんが、常になんらかの外国語を学習しています(現在はタイ語を勉強中)。しかし、最近は忙しく、なかなか時間を取れないのが悩みです。

休日も研究をしていることが多いのですが、それ以外には、タイ語を勉強したり、愛犬と散歩したりして過ごすことが多いです。言語教育に携わっているせいか、犬がどのぐらいことばがわかるか、どうやって意志を伝えようとするのかということに関心があり、観察を続けています。

志望者に向けて、一言お願いします。

研究テーマになるヒントに気づけるようセンサーを働かせて、「知りたい」「解決したい」というテーマを是非見つけてください。「知りたい」「解決したい」ことが明確であれば、いい研究ができると思います。

ゼミ生の研究テーマ

  • ・ビジネス場面における日本語の「断り」に関する研究
  • ・「ために」と「ように」の誤用分析 ―意志の問題を中心に―
  • ・日本語教育史における松本亀次郎の教育理念と実践を再考する ―松本亀次郎と周恩来との師弟関係を通して―
  • ・日本語教科書を利用した方言教材開発の可能性 ―肥筑方言のカ語尾形容詞の場合―
  • ・日本語と英語のほめの表現に関する比較研究
  • ・日本語の会話における「不満表明」ストラテジーに関する考察
  • ・日本語教育における「いいえ」系応答詞の一考察 ―初級日本語教科書と自然会話からみるしよう実態―
  • ・初級日本語教育における媒介語使用の有効性―ビジネスパーソンを対象とした教育現場から―
  • ・日本語教育における文学教材の有用性と可能性 ― CEFR と CLIL の考え方を基に―
  • ・バングラデシュ人IT技術者の企業内での日本語使用実態及び課題
  • ・中国人日本語学習者が書いた平仮名の評価 -一般日本人による許容範囲と平均手書き文字から-
  • ・タイ中等教育日本語教育現場における教室Can-doの構築 -日本語教科書『あきこと友だち』使用校における自己評価調査を基に-
  • ・項目改訂がテストの精度に与える影響-日本語オンライン・プレースメントテストを例に-
  • ・ハワイ日系移民「元年者」に対する評価―日本とハワイにおける文献調査をもとに―
  • ・理工系学生に対する日本語の文型指導について―理工系教材の分析から―
  • ・中華圏における借用語「オタク」の派生語「宅男」「宅女」の使用実態について―ソーシャルネットワークメディアから探る―
  • ・中国語を母語とする日本語中・上級学習者の聴解プロセス―非対面会話素材を題材にして―
  • ・シャドーイングが日本語学習者にもたらす効果―発音面の観点から―
  • ・食品製造業分野の技能実習生のためのシラバス開発―リーダーの仲介スキルを含めた現場Can-doと語彙リストの作成―
  • ・CLD児の取り出し授業と在籍学級との連携による日本語能力の向上―国語科リライト教材を活用して―
  • ・ロシア語母語話者の日本語アクセントの産出に見られる特徴―朗読時における発音に着目して―
  • ・日本語学習者のインプット処理ストラテジー使用に関する研究―タイ語母語話者を対象とした行為授受文と形容詞比較構文の調査を通して―
  • ・就職活動用日本語自己PR文の内容分析―外国人留学生と日本人学生の比較から―
  • ・「オノマトペ+する」のアスペクト性の研究―漫画におけるセリフを対象として―

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