インタビュー

Interview

丸森 一寛准教授 国際情報専攻 経営・経済コース

先生の経歴について教えてください。

学部を卒業した翌年に公認会計士第二次試験に合格し,監査法人に就職しました。在職した6年半の間,さまざまな業種の会社の監査に携わりました。電力会社の監査では,真夏と真冬に火力発電所の燃料タンクに登って重油の計測を行ったり,燃料棒の実在性とその数をカウントするために(定期点検中の)原子力発電所の炉心に入ったこともあります。また,ゼネコンの監査では,建設中のビルの外付けエレベータで地上15階建てのビルディングに上がったり(実は高所恐怖症です。)地下5メートルのシールド工事現場に潜ったりしたことも,今では良い思い出です。

監査の現場責任者として上場準備会社を株式公開させる仕事を最後に監査法人を退職し,経営全般の知識を身につけたいと思って慶応義塾大学ビジネス・スクール(KBS)に入学しました。交換留学生として派遣されたカナダのビジネス・スクールでの半年間を含めトータルで700を超えるケースディスカッションと,修士論文の作成で鍛えられたここでの2年間は,大変有意義なものでした。30歳を超えてから一生付き合える友人達と出会えることもでき,この時の勉強がなければ今の自分はない,と思っております。KBS修了後は独立して会計事務所を営み,その後監査法人時代の先輩や後輩とともに共同事務所を設立して今日に至っております。この間,会計監査や税務のほか,裁判所の選任による特許権裁判における計算鑑定人や民事再生における監督員弁護士補佐人,企業買収における企業価値評価と監査(デューデリジェンス),製造会社におけるABC(活動基準原価計算)導入支援,ゴルフ倶楽部の再建計画策定支援,など様々なプロジェクトに携わってきました。

インターネットを使った通信教育についてのご感想は?

こちらの研究科で初めての経験することになるので,今から楽しみです。ただし,グローバル・ビジネス研究科時代でも講義以外の質疑応答の多くはメールを使って行っており,インターネット経由のコミュニケーションの適時性および有効性については大いに評価しています。今後は,ディスカッションが必要なMBA教育にも応用できるのではないかと,期待しています。

オフラインでのエピソードは何かありますか?

前任のグローバル・ビジネス研究科において,いつも学生の皆さんにお願いしていたことが3つあります。

一番目は,「能力より努力」です。社会人の経験があっても,ビジネス関係の科目のうちその大半は未知の分野です。コアと言われる科目で身につける知識も,所詮は意思決定の道具に過ぎず,学術・研究の最先端の分野に比べたらそのレベルは大したことはありません(他の先生方に怒られそうですが・・・)。したがって,大切なのは,能力ではなく努力です。未知の分野でも,努力すれば知識を身につけることができますし,知識のレベルは努力(かけた時間)に比例します。仕事をしながら,あるいは言葉のハンディ・キャップを抱えながら,の勉強は大変だと思いますが,うまく時間をやりくりしてください。上手な時間管理は,大切なビジネス・スキルの一つです。

二番目は,「道具は使えて初めて役に立つ」です。ビジネス関係のコア科目で意思決定の道具である知識を身につけても,その使い方を知らなければ(あるいは上手く使えなければ)役には立ちません。意思決定の道具の使い方,すなわち身につけた知識を使った意思決定とそのレベルの向上のために,与えられた情報を駆使して意思決定を行う訓練を重ねてください。そうすることにより,意思決定のレベルは確実に上がります。

そして,三番目は,「恥をかくことのすすめ」です。ビジネスの現場における意思決定では,必要な情報が全て入手できることはまずありません。限られた情報で如何に適切な意思決定をするかが問われており,その点で与えられた課題やテーマを考えることと基本的には同じです。与えられた課題やテーマについて,とにかく自分の意見(意思決定)を準備してください。その際,「間違っていたらどうしよう。その場合自分だけでなく自分の会社(あるいは資格・職業)の恥になる。」というような心配は無用です。思い切って自分の意見(意思決定)を述べてください。仕事で間違えた場合には必ずペナルティがつきますが,学校では逆に積極的な意見を述べた点でプラスの評価になる事さえあります。さらに,恥をかけば(間違えば)より強く記憶に残り,それが実務に(同じ間違えをしないという意味で)役に立つことにつながります。同じ時間とお金を投資するのであれば,学校では人より多く恥をかくことを心がけてください。その分意思決定のスキルが向上し,実際のビジネスで恥をかくことが少なくなりますから。

趣味,休日の過ごし方は?

まずは,30年近く続けている(けれど,HDCP15とあまり上達していない)ゴルフです。15年ほど前から所属しているゴルフ倶楽部に足繁く通い,仕事とは全く関係ない先輩や友人との交流で,新たな活力と人生を楽しく生きるための知恵を頂いております。

そして山歩きも数年前から再開しました。冬山も登りますが,決して”ピークハンター”ではありません。自分で作る”山めし”をつまみに飲む美味しいお酒と下山後の温泉が最大の楽しみです。

志望者に向けて,一言お願いします

大学院で考えたい,あるいは解決したいテーマ(問題)を予め決めておいてください。それがベースとなり,教員とのやり取りを経て最終的な論文の研究テーマとなります。ベースがないことには,先に進むことはできません。

また,私自身の経験からも言えることですが,修士論文を完成させることは実務にも大いに役立ちます。不確実な状況下での意思決定は実務では当たり前のことであり,その際には「与えられた情報からロジカルに仮説を構築してそれを遂行することにより検証し,検証結果に基づいて仮説の修正あるいは新たな仮説の構築を行う。」というスキルが求められます。仮説検証型の論文を完成させることは,まさにそのスキルを磨くことにつながるからです。

ちなみに,前任のグローバル・ビジネス研究科のゼミ生の研究テーマ(ビジネスプランを除く)は以下のとおりです。
・「企業統治の日台比較 米国企業改革法の視点から」
・「企業経営における内部統制のあり方と経営者の役割」
・「のれんと企業価値」【税理士試験会計科目免除認定】
・「日本における携帯電話コンテンツビジネス市場についての考察」
・「衰退業界におけるM&Aの有効性に関する一考察~建設業界から見たM&Aの実態について~」
・「CSR活動と企業価値の実証研究」
・「アパレルSPA企業のグローバル戦略の一考察」
・「企業の株主構成と企業価値」
・「成長期の市場における企業戦略~韓国ベーカリー市場についての考察」
・「M&A戦略と企業価値に関する研究(グローバル製薬業界について)」
・「事業売却から見たM&Aと企業価値」
・「ソーシャルゲーム市場における競争戦略」
・「IRと企業価値」
・「組織目標が組織行動に与える影響に関する考察」

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