インタビュー

Interview

加藤 孝治教授 国際情報専攻 経営・経済コース

先生の研究テーマについてお聞かせ下さい。

私は大学卒業して,1988年に銀行に就職しました。そして,40歳過ぎになったときに研究を志し企業に勤めながら,本大学院に入学し研究を始めました。最初に取組んだ研究領域は,銀行時代に携わっていた産業調査部の仕事を発展させたもので,小売業界,食品業界,物流業界などの業界研究でした。研究を始めると,最初に取り組んだ小売企業の競争戦略から,どんどんと興味が広がり周辺産業の戦略を研究し,さらに企業組織を強くするための組織論(人的資源マネジメント)や,流通・物流の仕組みの変遷などへと産業研究・企業行動研究の分野で研究分野は広がっていくこととなりました。

その後,研究を深めていく過程で,日本の有力な小売企業にファミリービジネスが多いということに始まり,ファミリービジネスに注目するようになりました。現在は,先に挙げた企業行動・業界研究とファミリービジネス研究を組みあわせた領域がメインの研究テーマとなります。また,ファミリービジネスに地方の有力企業が多いことから,地方の産業活性化にも興味をもって取り組んでいます。

先生の経歴について教えてください。

私は1988年に大学を卒業して,最初は銀行員となりました。銀行員時代には,支店営業から始まり,幅広な経験を積んでいます。その中で,現在に繋がることとなったのが,産業調査部での業界研究と本店営業部で小売業界・小売企業に対する貸出営業を担当したことです。小売企業の調査・営業担当として培った経験が,企業行動・業界構造に興味を持つことに繋がり,現在の研究に活かされています。

また,銀行という組織の中で過ごすなかで得た金融の知識は産業を考えるうえで欠かせない知識であり,また,企業組織の中での経験が組織論(人的資源管理論)にもつながっています。社会人時代の経験を活かして,研究活動・学生指導を進めていきたいと考えています。

また,私は岐阜県の出身です。地方の出身であることが,現在の日本経済の大きな問題である地方創生に大いに興味を持つことに繋がっています。地方経済の活性化ができない限り,日本経済の再生はないものと考え,何か役に立てないかと考えています。

インターネットを使った通信教育についてのご感想は?

社会人時代にこちらの大学院の修士課程・博士課程を修了して,現在に至っています。忙しい銀行員時代に学ぶことが出来たのは,インターネットを使った通信教育だからこそです。この仕組みの良さはよく理解しています。最大の強みは,学習・研究するための時間的制約,物理的制約がないことです。社会人は,どうしても仕事に追われ,時間に制約が多く,大学院のキャンパスに通うのは大変なことです。インターネットを使った通信教育での学びのスタイルを活かし,いつでも学びたいときに学べることは,とても魅力的な学習方法だと実感しています。また,遠隔教育でありながら,インターネットの仕組みを使うことで,一人で学習するのではなく,会議形式で仲間のいる環境での学習ができる点も大いなる強みだと感じています。ただ,この学びは受講生が機会獲得に動かなければ,何も学べません。自主的な学習だと,ついついさぼりがちになりますが,インターネットの向こうに先生がいて,仲間がいる環境を意識することで,研究を続けることができるでしょう。

オフラインでのエピソードは何かありますか?

インターネットを使った学修スタイルが,本研究科の特徴ではありますが,同時にオフラインで対面での学修も体験できます。コロナ環境下で完全リモートでの学修という体験を経たことで,対面とオンラインの組み合わせが院生の満足度を高めることに効果的であることが良くわかりました。本研究科では学修者の皆さんは,時間や空間を超えたオンライン上での学びを進めつつ,いざというときには対面で個別に指導を受けることができます。対面とオンラインの組み合わせができることが最大の魅力であるということを実感しています。

また,入学後の最初のステップが論文テーマを決め,研究計画を作成するということですが,ここでは学修者と教員がとことん相談することが望ましいです。教員と学修者の研究に対する意識が一致していないと,満足のいく研究はできないでしょう。私が担当する院生は社会人経験が長い方が多いことから,「漠然とした」問題意識を持って入学してきます。このような方の研究テーマ決めは,研究経験がある方のテーマ決めとは異なる悩みがあります。そもそも,研究というのは,各自が持つ問題意識から領域を決めていくのですが,同時に学修期間の間に達成できる具体的な研究テーマを絞り込むことも重要です。社会人経験の長い学修者は,人生の経験に裏打ちされた興味,問題意識を持って,大学院に進もうと考えています。朧げにやりたいことは分かっているものの,その問題の本質を探り,言葉にするということで苦しむことが多いです。具体的に自分のやりたいことを達成するためには,どのような研究の切り口で臨めばよいのかがわからなくなってしますということです。

例えば,自分の家で事業をしている学修者がいて,家業の役に立つ研究をしたいということで大学院に進んだのですが,いざ,研究に着手しようとしたときに,そもそも家業はどのようなビジネスなのかを正確に理解できていないことに気付きました。どのような事業環境の中で仕事しているのかもよくわからないため,どのように研究をしたらよいのかわからなくなってしまったということです。この学修者に対して,対面で繰り返し話を聞き,問題意識を正確に理解するための時間をたっぷりとることにしました。自分の進むべき方向がどちらなのか,自ら考え明確になったうえで,論文を書き始めさせることで,その学修者なりに満足できる論文を書くことができたと思います。

学位論文を仕上げるためには,最後は時間との戦いになります。問題意識が固まらなければ,論文を書く時に試行錯誤してしまいます。そして,満足のいく学生生活を送れないことになります。そうならないように,最初に十分な時間をとって会話を繰り返すことで,研究内容を目的に沿ったものにするように指導することを心がけています。

趣味、休日の過ごし方は?

さみしい話ですが,銀行員時代から今の大学教員に至るまで,「仕事が趣味」というような生活を送っています。ただ,本大学院の教員になってからは,社会人経験の深い方々の研究に付き合うために,皆さんの多様な興味に追いつくために,多くの文献を読むようになり,興味の幅が広がってくるようになりました。それはそれで,楽しい時間の過ごし方になています。

そうはいっても,昔から,「無趣味」だったわけではなく,大学生時代には空いた時間に映画を見に行ったり,美術館に行ったりするようなこともありました。社会人になった最初の職場が銀行だったこともあり,週末もかなり忙しい生活が続いていました。また,40歳を過ぎて社会人大学院に入ったので,週末は本や論文を読み,レポートを書くことに追われていたので,あまり自慢ができるような週末の過ごし方は出来ていません。

今も週末にはこの大学院での指導のほか,学会や研究会が開催されることも多く,あまりゆっくりとした時間の過ごし方はできてないですね。ただ,いろいろな学外の方との接触の機会が増えたことは,とても楽しく,今の研究に役立っています。ある意味では,趣味を仕事にしてしまったようなものかもしれません。ただ,これからはオンとオフの切り替えを意識しなくてはいけないなと思っているところです。

志望者に向けて、一言お願いします

よく言われる話しですが,私たちは「人生100年時代」になっています。その気になれば,いつから始めても遅いことはないのです。それは,趣味のことでも研究でも同じことです。人生を学びの時期(学生生活),生産の時期(社会人生活),そして老後という3つの期間に分けるのではなく,生産の時期の途中に学びの時期が入ることもあるし,老後でも学びのチャンスはあるのです。私たちの大学院のようにインターネットを活用した大学院での学びは,仕事をしながら効率的に学ぶことができるスタイルです。社会人の皆さんにとって,気が付いたときに,時間や物理的な制約を気にすることなくスタートできる機会だと考えてください。

もう一つ,お話ししたいことは,大学院での学習は,人から教わる学びでではなく,自分から課題を見つけ,探求する学びであるということです。自分にとって必要な学びの場を悩みながら,見つけ出してほしいのです。その思いがある人を最大限にサポートしていきますので,恐れることなくトライしてください。

教員プロフィール

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