インタビュー

Interview

神井 弘之教授 国際情報専攻 国際(関係)・政治コース

先生の研究テーマについてお聞かせ下さい。

地域活性化,なかでも農山村地域の振興,農業・食品産業の振興,食料・農業・農村政策を対象にした研究を行っています。過去,行政官として活動するなかで,自らの業務で直面した社会課題を解決するために関連する先行研究や最新の議論を学び,それらを政策の企画立案に役立てることから,研究活動に発展したテーマがほとんどです。

例えば,多様なステークホルダーが社会課題の解決のために協働するメカニズムを分析することや,従来と異なる政策革新を実現するために必要な環境整備について考察することなどを研究テーマにして来ました。また,持続可能な社会の構築のために欠かせない自然資本(森林,農地,河川など)のマネジメントについても研究しています。これからも具体的なフィールドを想定しながら,社会課題を解決するための研究活動に力を注いでいきたいと考えています。

先生の経歴について教えてください。

2023年4月に本研究科に所属するまでの間,行政官として,食料,農業,農村に関する政策の企画・立案,その運用に長く関わって来ました。例えば,地産地消運動や地域ブランドの振興,食と観光との連携に関する政策や,フードシステムへの信頼向上のための産官協働のプロジェクトなど,新規企画の立上げに関わらせていただく機会にも恵まれました。他方で,教育や研究に携わる機会を与えていただいたことも幸運でした。政策研究大学院大学で地方自治体職員の方を主な対象とする修士コース(農業政策コース)を立ち上げたほか,農林水産省と三重県庁で取り組んだプロジェクトに関する政策分析を取りまとめた論文で学位を取得しました。

現在も,他大学,研究機関の研究者の皆さんや自治体,企業の皆さんと一緒に自然資本のマネジメントに関する研究活動に取り組んでいます。

インターネットを使った通信教育についてのご感想は?

仕事を持つ社会人の皆さんが,今までのご経験を活かして,新たなキャリアデザインを考えられるうえで,インターネットを使った通信教育は大きな効果を発揮すると考えます。従来,社会人の皆さんが,学術的なトレーニングを受けて,修士号,博士号を取得するためには,時間的な制約だけでなく,空間的な制約も大きな壁となっていました。

もちろん,学位取得のハードルは依然として高いですが,通信教育によって突破できる可能性が拡がっていると実感しています。

同時に,インターネットを使った通信教育は,教員である私にとっても大きな可能性を示してくれています。経験豊富な院生の皆さんに,地域活性化や関連政策に関する情報を説得力ある形でお伝えし,皆さんの研究活動をサポートするためには,机上の理論に止まっていては不十分で,現場に出て実際に活動することが必要不可欠です。通信教育によって,地域に入って活動する機会を確保出来るようになり,院生の皆さんに対して,最新の知見に基づき,地に足の着いた指導が可能になるものと考えています。

オフラインでのエピソードは何かありますか?

現在も,地域活性化のための取組の多くが直接対面で進められていることには疑いの余地はないでしょう。人口減少社会では,多様なステークホルダーの間の「協働」が地域活性化の推進力として,益々重要になっており,対面でのコミュニケーションが,相互の信頼関係構築の基盤として機能しています。

他方で,コロナ禍で様々なオンラインの取組が盛んに展開されており,地域の活性化を考えていくためには,リアルの参画とバーチャルの参画を,いかに組み合わせていくか,新たな形の「協働」が課題になっていくと考えています。通信教育を進める本研究科で,それぞれがリアルな現場を持っておられる院生の皆さんと,リアルとバーチャルを融合させる地域活性化のあり方について議論できることは,きわめて魅力的な試みになるだろうと楽しみにしています。

趣味,休日の過ごし方は?

スポーツを観戦することが好きです。どこか特定の贔屓のチームがあるという訳ではなく,純粋に早く,強く,美しいプレイを見て,興奮し,心洗われています。特に,高校,大学とラグビーをしていたので,ラグビー観戦が好きで,家族によると,観戦しているうちに,体が前のめりになって動いてしまっているようです。ただ,実際にプレイする方は,すっかり体力が衰えて,完全に引退しています。また,最近は,MLBでの大谷選手の活躍を見るのも楽しみにしています。朝のニュースでホームランの様子を見ると,その日一日,元気をもらったような気になります。

志望者に向けて,一言お願いします

皆さんが,地域活性化にご興味,ご関心を持たれて,学位取得に挑戦されることに敬意を表します。皆さんが,豊富な社会経験に裏打ちされた具体的な情報を強みにして,アカデミックなトレーニングを積まれ,その成果として論文をまとめられることで,今後のご活躍の場が飛躍的に広がることを確信しています。微力ではありますが,皆さんのチャレンジを精一杯応援させていただきたいと考えています。

これからのチャレンジで,皆さんに留意していただいた方が良いと考えるポイントが一つあります。豊富な社会経験という「強み」は,皆さんの捉え方次第で,学術的な考察を深めようとする際の「弱み」になってしまうリスクがあるという点です。皆さんが,ビジネス,行政などの実務の場で積んで来られた個別の経験に囚われ過ぎてしまうと,物事を俯瞰して見ることが難しくなり,論文作成に不可欠な概念の明確化,理論の組み立ての妨げになってしまうことが懸念されます。「場が異なれば,ルール,流儀が異なるのだ」と割り切って研究に臨んでいただくと,具体と抽象の間を往来し,学術的な考察を深めていただき易くなると考えます。私も皆さんとしっかりコミュニケーションをとってサポートさせていただきますので,どうぞよろしくお願いします。

教員プロフィール

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