安藤 貴世教授 国際情報専攻 国際(関係)・政治コース
先生の経歴について教えてください。
学部時代から国際法に関心を持ち、大学院修士課程、博士課程を通し、国際法を研究してきました。今日の国際社会は国際法により秩序づけられているといっても過言ではありません。国家、国際組織、個人といった主体がどのような国際規範に基づいて行動しているのかという点を念頭に、特に個人の国際犯罪の処罰に関する法構造について、これまで戦争犯罪や海賊行為、国際テロリズムなどに焦点を当て研究を進めてきました。
大学院博士課程在籍時に、国連本部で開催された国際刑事裁判所(ICC)の設立準備委員会と締約国会合に日本政府代表随員として参加する機会をいただき、さらに博士課程の最後の3年間は、外務省北東アジア課において任期付き職員として勤務しておりました。特に外務省での3年間は、実際に日本と諸外国との外交関係が形作られていく様子を目の当たりにするとともに、「働く」とはどういうことかについて日々考え、色々と気づかされる毎日でした。大学教員になる前のこの3年間の実務経験は、何にも代えがたい貴重な経験となっています。
2009年に日本大学国際関係学部(静岡県三島市)において大学教員としての生活がスタートし、主に国際法、国際機構論、国際関係論といった科目を担当してきました。生まれ育った東京を離れての三島での生活でしたが、大人数の講義からゼミ生の指導に至る様々な形態での「教育」と、自らの「研究」、さらには多様な「学内業務」、これら3つすべてにバランスを取りつつ取り組むことの重要性を学び、国際関係学部での7年間は大学教員としての今日の私の原点となっています。2016年からは、新設された危機管理学部に異動し、国際法や国際人道法などの科目を担当しつつ、新たな学部を作り上げていく大変さもありますが、それを上回る充実感を味わいながら日々過ごしています。
インターネットを使った通信教育についてのご感想は?
「学び」において最も重要なことは、年齢でもなく環境でもなく、「学びたい」という意欲ですが、そうした意欲が仮に時間や空間といった何らかの物理的な制約により妨げられ、その結果として学びの機会が失われてしまうのは非常に残念なことです。インターネットを使用した通信教育は、そうした制約によって学びの意欲を妨げられることなく、むしろ新たな学びを可能とする素晴らしいツールだと思います。様々な仕事や生活形態を有する人が、自らの学びの意欲を具体的な形に実現するうえで、今後はこうしたインターネットを介した通信教育の需要がますます高まるでしょう。さらにスクーリングや対面ゼミなど、直接的なコミュニケーションを介した指導も含め、多面的・多角的な学びの場を組み合わせ、提供することにより、院生の皆さんの学びへの意欲に資することが私どもの大学院の大きな強みではないかと思っております。
オフラインでのエピソードは何かありますか?
国際関係学部に所属していた時は、学期末などに定期的にゼミ生と懇親会を行ったり、夏休みにはゼミ合宿を実施していました。普段のゼミの指導からだけではなかなか知ることのできないゼミ生たちの意外な姿や隠れた本音を見聞きすることができたり、授業中には聞きづらい私への色々な質問が飛び出すなど、ゼミ内の親睦を図るとても貴重な機会でした。
この大学院での普段の指導は基本的にオンラインが中心となりますので、こうしたオフラインの機会を設けることにより、同じゼミ生としての繋がりを実感することは非常に重要だと思います。またそうした関わりの中で、様々な経歴や人生経験をお持ちの院生の皆さんから私自身が学ばせていただくことも大いにあるだろうと確信しております。
趣味、休日の過ごし方は?
趣味といいますか休日の過ごし方としては、月に2回、フルートのレッスンに通っています。フルートは小学生の時に始め、高校生まで続けていたのですが、長いブランクを経て数年前に再開しました。小学生の時からお稽古をしていただいていた先生に再び教えていただきながら、今は楽器を演奏することが研究や授業の準備などに追われる日々の生活の中での気分転換となっています。他には、週末にオーケストラの演奏会を聴きに行ったり、長期休暇中には海外に行くことも多く、特にパリの街並みが大好きです。
志望者に向けて、一言お願いします
研究やレポートの作成、学位論文の執筆作業というのは基本的に地味で地道な作業であり、時に孤独との戦いですが、その先には必ず大きな達成感があります。私自身、研究面で何度も壁に突き当たり、いまだに論文執筆において悩み多き日々を送っていますが、国際法の研究者としての今日の私があるのは、学部、大学院を通して、国際法の魅力、そして学問の厳しさを教授して下さった亡き恩師の存在によるところが大きいと感じます。複雑で混沌とした今日の国際社会における様々な問題を、国際法を手掛かりに解き明かしていく醍醐味を院生の皆さんと共有しつつ、少しでも学問としての国際法の魅力を伝えられればと思っています。