【令和8年度入学 総合社会情報研究科】陸亦群 日本大学大学院総合社会情報研究科長 式辞
式辞
新入生の皆さん,ご入学,誠におめでとうございます。
本日,この佳き日に,日本大学大学院総合社会情報研究科に,博士前期課程56名,博士後期課程14名,あわせて70名の新入生をお迎えできますことを,教職員一同,心よりうれしく思います。皆さんがそれぞれの志と問題意識を胸に,本研究科の門をくぐられたことに対し,心から敬意を表します。
本研究科は,1999年,日本で初めての通信制大学院として設立されました。本学通信教育の長い歴史と教育的蓄積を基盤としながら,情報メディアを活用した新たな学びのかたちを切り拓いてまいりました。現在では,市ヶ谷を拠点として,ICTを活用した柔軟で先進的な教育研究環境のもと,多様な背景を持つ院生が学びを深めています。年齢や職業経験,学問的関心の異なる人々が集い,それぞれの経験と視点を交差させながら学ぶことは,本研究科ならではの大きな特長でもあります。
現代社会は,きわめて大きな変化のただ中にあります。グローバル化の再編,生成AIをはじめとするデジタル技術の急速な進展,価値観の多様化,気候変動や地政学的リスクの顕在化など,私たちを取り巻く環境は,ますます複雑さを増しています。現実のフィジカル空間と仮想のサイバー空間とが高度に融合する社会は,もはや遠い未来ではなく,すでに私たちの日常そのものとなっています。
こうした時代においては,単に多くの情報を持つことが,そのまま力になるわけではありません。むしろ,膨大な情報の中から何を読み取り,どのように解釈し,何のために用いるのかを自ら考える姿勢こそが重要です。もっともらしい答えが容易に提示される時代だからこそ,真に求められるのは,答えをただ受け取る力ではなく,自ら問いを立て,仮説を構築し,検証し,必要に応じて考え直す力です。大学院での学びとは,まさにそのような営みにほかなりません。
本研究科の博士前期課程および博士後期課程では,国際情報,文化情報,人間科学の各専攻・分野において,現代社会の諸課題に理論と実践の両面から向き合う教育研究を展開しています。学問の世界において重要なのは,既成の知識を覚えることにとどまらず,それらを踏まえながら,自分自身の問いを深め,自らの言葉で世界を捉え直していくことです。皆さんには,専門分野を深く掘り下げると同時に,異なる領域にも開かれた姿勢を持ち,多面的な視点から研究課題に取り組んでいただきたいと思います。
とりわけ,博士前期課程に入学された皆さんにとって,大学院での学びは,学部での学修をさらに発展させ,自らの問題意識を本格的な研究へと高めていく新たな出発点となります。知識を受け取る学びから,知を生み出す学びへと歩みを進めることになります。その過程では,戸惑いや困難を感じることもあるでしょう。しかし,そうした試行錯誤こそが,研究者として,また高度専門職業人としての基礎を形づくっていきます。
また,博士後期課程に入学された皆さんは,より高度で自立的な研究の段階へ進まれます。ここでは,自ら設定した問いを粘り強く掘り下げ,新たな知見を提示することが求められます。研究は時に孤独であり,容易に結論へたどり着けるものではありません。しかし,地道な文献調査,資料分析,原稿執筆の積み重ねは,必ず皆さん自身の知的基盤を鍛え,社会に対する独自の貢献へとつながっていきます。
研究とは,未知のものに向き合い,問いを深めながら理解へと歩みを進めていく営みです。しかし,その道のりは決して平坦ではありません。時には行き詰まり,正解の見えない問いの前に立ちすくむこともあるでしょう。
そのような皆さんに,ここでマリー・キュリーの言葉を紹介したいと思います。
「人生において,恐れるべきことは何もない。ただ,理解すべきことがあるだけだ。」
未知の事象や複雑なデータは,時に私たちを不安にさせます。しかし,キュリー夫人が示した通り,それらは恐れるべきものではなく,まだ十分に理解されていない対象にすぎません。たとえすぐに答えが得られなくとも,問いを立て,考え続けること。その真摯な姿勢こそが,知の地平を広げる鍵となります。
本学の教育理念である「自主創造」は,まさにそのような学びの姿勢を表すものです。自ら学び,自ら考え,自ら道を切り拓く。この理念のもと,本研究科は,「教育の質保証」と「学生ファースト」の視点を大切にしながら,皆さん一人ひとりの学びと研究を支えてまいります。教員との対話,院生同士の交流,そして情報メディアを活用した学修環境を通じて,皆さんがそれぞれの可能性を大きく広げていかれることを心より期待しております。皆さんには,失敗を恐れず,自らの問いを大切にし,その問いを粘り強く磨き続ける大学院生であっていただきたいと思います。
ここで培う知識,研究の方法,広い視野,そして人とのつながりは,皆さんを次の段階へと押し上げる確かな力となることでしょう。それらは,研究の場にとどまらず,社会のさまざまな局面において,皆さん自身の判断と実践を支える礎となるでしょう。どうか,ご自身が選んだ道に誇りを持ち,着実に歩みを進めてください。皆さんの大学院生活が,実り多く,充実したものとなることを心より願っております。
結びに,皆さんが本研究科において,多くの出会いと知的刺激に恵まれながら,自らの研究を深め,知見を豊かに磨き,大きな成果を挙げられることを心より祈念申し上げ,式辞といたします。
あらためまして,ご入学,誠におめでとうございます。
令和8年4月5日
日本大学大学院総合社会情報研究科長
陸 亦群

