進行管理と試行錯誤
博士後期課程・総合社会情報専攻 3期生・修了 岩田 元一



 ここでは、私の研究を前進させる重要なステップとなったことをご紹介するとともに、それに関連して、ささやかな助言をさせていただきます。

1.ロードマップの作成による進行管理

 入学当初、研究テーマの絞り込みができず、そのため、実際の研究の進め方についてもまったく見通しが立っていませんでした。最初の「研究(中間)発表会」(1年生の10月)では、当然ながら、先生方から厳しいコメントをいただきましたが、その後も明確な方針が浮かばない状況が続きました。
 その年の暮れも近くなって、(見るに見かねた)指導教員の近藤大博教授から、研究のロードマップを提出しなさいとのご指導がありました。そこで、「いつごろ、どんな研究を(どんな文献に基づいて)まとめて、どこに発表するか」といった内容の「研究の実施方針(案)」を作成しました。これによって、研究テーマがより具体的になるとともに、研究のスケジュール(学会や紀要への投稿時期も重要)を意識することができました。実際の研究は、多少の変更はあったものの、基本的にはこのロードマップに沿って進めました。これがなければ、私の研究は行き先を見失って、まだどこかを漂っていたかもしれません。
 緻密な計画でなくてもよいので(むしろ柔軟性のある「骨太」の計画のほうがいいでしょう)、研究の進行管理のための基本方針を持っておくことは非常に重要です。


2.試行錯誤の積み重ねの結果としての幸運

 ロードマップによって一定の道筋はつきましたが、実際の研究は簡単には進みません。近所の図書館、大学の図書館(オンラインサービス)、インターネットなどを利用して、関係しそうな文献を探しましたが、この作業は試行錯誤の連続といえるものでした。 私が最初に「おもしろい」「使える」と思った情報は、インターネットから入手しました。それは、外国ではどうなっているのだろうと英語で検索しているなかで、たまたま見つけたものです。その後、それを起点として、関係する論文や報告書を収集していきました。それらは、私の博士論文の中で一つの大きな構成要素となりました。あのときの偶然がなければ、研究の内容や進み具合は違ったものになったはずです。
 研究に当たって試行錯誤はやむを得ないと思います。無駄に終わる作業も少なくないでしょう。しかし、むしろ試行錯誤を重ねることによって、それまで思いもよらなかった新しい研究資料と出会うことがあり、よりレベルの高い研究へのきっかけになるのだと思います。あきらめずに試行錯誤を続ければ、きっと幸運が舞い降りることでしょう。


 
 
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