明けない夜はない

人間科学専攻 大崎 千恵子


 2年前の4月、日本大学の大学会館で開講式を終えた私は、川べりのベンチに座ってサンドイッチを食べていました。桜の花が満開ののどかな日。行楽にきた家族連れのなかで、スーツ姿の私は明らかに浮いていたのですが、そんなことはまったく気にしません。そこにいることのほうが嬉しかったことを覚えています。
 しかし! ゼミに参加して愕然。会話は外国語?いえ、日本語ですが、なんだかさっぱりわかりません。初めの1年間はテキスト持参。じっと黙ってひたすら聞くだけ。おまけに、ゼミに参加したからには発表は必須。初めてのゼミ発表は5月のサイバーゼミでしたが、そのときのスライドはテーマと目的のたった2枚ぽっちです。
 2年間のゼミで発表し続けた資料をこのたび一列に並べてみました。パワーポイントのファイル数は29個。内容を見直してみると、もちろん枚数もサイズも増えましたが、回を重ねるごとに内容がすこしずつまともになっています。でも2年生になったころの資料では、テーマに独立変数と従属変数が入ってきて、なんとなく筋が通っているようにもみえますけど、実際にはなにを言いたいんだか分からない、といったほほえましい(?)序論のままだったり。ラストスパートの中間発表のあたりでやっと焦点が定まっているという感じでしょうか。
 そのころの私は、7月にやっと予備実験が終わった段階でも本実験の従属変数が決まらず、一番測定したいものが測定できないというジレンマに陥っていました。このころは、「看護職に必要な能力ってなに?」「どうすれば測定できるの?」という難題に頭を抱え、こうなったら違う研究テーマを考えちゃおうか・・。という考えがいつも頭をかすめていました。結局、自分は何がやりたいんだろう、と自問自答の繰り返しでしたが、その疑問はゼミに参加することで解決していきました。ゼミの仲間から素朴でシャープな意見を頂き、落とし穴から抜け出せて、また次のゼミではつまづき。やっと修了できるのも落とし穴から拾い上げてくれた眞邉先生をはじめ、仲間や先輩のおかげです!感謝!感謝!
この2年を振り返って思うもの。とにかくゼミに参加して、意見を交わすことの大切さ。はじめの1年間、「何がしたいのかわからない」といわれ続け、途中で自分でも何がしたいんだか分からなくなり。しかしなんとかゼミに参加し続けました。参加だけはしようと心に決めていました。いまになれば、これが一番の近道だったと感じます。そして何よりも仲間との出会い。こっそりとメールを飛ばしながら、携帯メールのある時代でよかった。と秘かに思うこともしばしば。明けない夜はないということを実感した2年間でした。
 修士は研究の方法を学ぶところ。眞邉先生がしばしばおっしゃる言葉です。この大学院での学びをさらに積み重ねて、もっともっと現場に還元できる研究を続けていけるように、これからもガンバリマス。


 
       
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