通信制大学院での挑戦と成長
国際情報専攻 2023年度入学 2024年度修了 羽田 勇
「観光分野で活躍していきたい。しかし現場経験は乏しい。これは学びを深めるしかない。」そう考えていたコロナ禍後半の2022年夏、熊本で社会人大学院の雑誌を購入した私は、10月に福岡で開催された説明会に参加していました。わけもわからぬまま「では、研究計画書を書いてみて、この教授にメールでアポイントを取ってください。」と言われ、加藤先生とZoomミーティングを行うと、「入学試験は1次から3次までありますが、先生ごとに定員があるので、入学の意思が固まっているのなら早めに受検したほうがよいですよ。」とアドバイスいただき、気がつけばトントン拍子に入学していました。
若かりし頃、通信添削教材に挫折した経験を持つ私は、通信制といえば、教材が定期的に送られてきて、しかし提出期限が守れず挫折してしまうのではないかと不安でいっぱいでした。教授とのマンツーマンで個別ゼミとは、いったいどのようなものなのか想像もつきません。また、スクーリングのあと、教室での授業をうけることが本当に一度もないとは、夢にも思っていませんでした。
スクーリングで、「科目レポートは計画的に提出しないと、提出締切に間に合わず単位の取得ができなくなります。」と指導を受けていたので、早々に1本目の科目レポートを提出しましたが、教授からの返信に驚愕します。「科目レポートは、業務レポートではありません。論文形式のルールに則って修正してください。」と書かれており、この添削には戸惑うばかり。いったいどんな文章を書けば良いのか、途方に暮れてしまいました。
国際情報専攻には「学究会」という学生同士で学びあう自主ゼミがあります。M2の先輩がM1に、論文を作成する際のWordの使い方から、論文の書き方などを丁寧に教えてくれます。必要に応じて、教授にもご登壇いただき、論文を書くための初歩的な指導もしていただけたので、地方でひとり思い悩む社会人学生の私にとって、「学究会」は、トラウマから抜け出すまさに救世主でした。また、この「学究会」は、他ゼミの方とも一緒に学ぶので、さまざまな情報交換や不安の共有など、2年間の心の支えとなりました(M2のときには世話役の一人としてお手伝いをさせていただきました)。
まず、論文を書くには、目次をつくるのがセオリーと言われます。目次があれば、見出しごとに書くべき内容が明確になります。私は、なかなか自身のこだわりが抜けず、研究テーマを絞り込めずにいたため、目次をつくるのに時間がかかってしまっていました。それゆえに見出しごとの書くべき内容が散乱していて、後戻りしていたり、重複していたりで、見直すときに手間がかかってしまい、締め切り間際にてんてこ舞いしてしまいました。
論文は、意味もなく長い文章をダラダラ書く必要はありませんが、文量が少ないと研究が足りていないのではないかと判断されてしまうことも無きにしも非ずなので、一定量のボリュームはあったほうがよいと指導を受けました。
論文を書いていると、どうしても先に進まない「停滞期」が訪れます。私の場合は。この期間が結構長かったのですが、そんな時こそ、資料からの抜粋や事例の紹介など、集中力を高めなくても書ける事実や項目を書きためるようにしました。この「文字数稼ぎ」は、文章作成が苦手な自分にとって後半戦での精神的な支えになりました。
もうひとつ鬼門だったのが、中間発表です。M2の9月末に行われますが、論文内容を説明するために、パワーポイントにまとめる作業が生じます。9月の時点では、8つのDMOにインタビューが終わったばかりで、目次も確立できていない状態だったのですが、まとめていくための良い機会ととらえてチャレンジし、そしてあえなく撃沈しました。ただ、このタイミングで中間発表を迎えられたおかげで、10月以降の「書けない期間」に書くことが見えてきた気がします。中間発表は必須ではないですが、できていない自分のマイルストーンを確認する意味でも修士論文を書くのなら、できていてもいなくても、中間発表には挑戦すべきです。
神井先生から、常日頃アドバイスをいただいていたのは、「論文の過程は悪くない。あとは集中して書く時間をいかにして確保できるかどうかです。」でした。9月末の中間発表が大失敗だっただけに、M2の10月にしっかり時間をつくって立て直そうと考えましたが、仕事が超忙しくなり、論文に取り組む時間が取れなくなってしまうと、焦りは頂点に達します。同期の皆さんが順調に書き進めていると聞けば聞くほど、手が震えるほどでした。
論文の進捗が思わしくないと、個別ゼミの間隔も開いてしまいがちになります。そんな時、神井先生はおっしゃいます。「若い頃の大学の授業料は、保護者が払ってくれましたが、皆さんの年代は親のスネをかじって学んでいるわけではありません。ご自身の大切なお金、費用をかけて学んでいるのですから、遠慮するのは、相談しないのはもったいないですよ。せっかくの機会なので、指導教員をもっと使うべきです。書けないことも含めて、指導教員に相談して、「壁打ち」代わりに使って、指導教員というひとつのツールをうまく活用して論文を仕上げて下さい」と激励され、再び書き始めるといったやり取りの繰り返しでした。そして、10月の後半一段落がついたタイミングで、3日ほど有休を取り挽回を図りました。
11月からはとことん個別ゼミです。見出しの順序から、とにかく、チェックと修正が始まります。次回の個別ゼミまでにここまで進めるという目標を定め、次回までにどこまで書けたか、修正できたか、の繰り返しです。ほぼ毎週末に個別ゼミを設定いただきました。
12月に入ると、年末イベントも続きますが、論文も大詰め。会社の飲み会は全て断り、論文を仕上げるために寝る間を惜しんで時間を作ります。それでも、どうしてもまとまった時間がほしくなり、熊本から東京への航空券をとると、市ヶ谷の神井先生のお部屋に押しかけプチ合宿まで、させていただきました。
神井先生に論文を確認いただいている間に、先生からの指摘のあった部分の修正を進める、という繰り返しが続きます。土曜の朝便から日曜最終便の直前まで個別合宿ゼミで見ていただき、熊本に戻って最終チェックという、本当にギリギリの作業になってきました。
提出期限の3日前、最後の体裁を整え始めましたが、このままだと締切日に市ヶ谷に提出するには、郵送や宅急便では間に合いそうもない。飛行機に乗って自分で持ち込む覚悟をするしかないのか…。すると、同じゼミの同期から、「どう?もう提出した?」とLINEが届きます。「間に合うの?締め切り当日の朝までにデータで送ってくれれば、持込はしておくよ。」と言ってくれたのです。そして、締切当日の朝6:45にデータを送信し、本当にギリギリでなんとか修士論文を提出することができました。
修士論文で大切なことは、実質1年半で解明できる研究テーマなのかどうかを早めに見極めることです。
また、Wordのテクニックが論文を書く際に重要なスキルであるというのは、研究開始後に知った一番の驚きでした。これまで、Wordは報告書や業務レポートを書くためのソフトの認識でしたが、参考文献をまとめておく作業など、Wordを駆使しないと1か月以上タイムロスが生まれます。私は「学究会」のおかげで、Wordを使いこなすことができるようになりました。
論文を作成するにあたり、アンケートやインタビュー(聴き取り調査)は重要な分析手段ですが、注意しなければならないのは、質問数やインタビューの時間配分です。インタビューの時間は、概ね1時間程度と考えたほうが良いでしょう。事前にアンケート用紙を相手に送付しておくとしても、1つの質問の応酬で約15分はかかります。すると質問票で聞くことができる質問数は自ずと限られます。したがって、アンケートの前の段階で、何のためにどんなことを聞くのか、どんな答えを期待するのかを明確にしておくが大切です。
修論を書き終えて感じたことは、私が当初考えていた課題解決と、研究での課題解決は全く別のものでしたが、さらに研究を続けたいと考えるきっかけを与えてくれたことでした。今後も学びを継続しながら、皆さまと、より良い関係を築いて行きたいと考えます。
神井先生には、本当に感謝の言葉しかありません。そして、加藤先生、階戸先生、ゼミの皆さん、「学究会」の皆さんが、この2年間の私の心の支えでした。本当にありがとうございました。