私流ポジティブシンキングで

人間科学専攻 鈴木 朋子

 “とりかかることさえ困難に思われた修士論文を、皆さんの温かいご支援によって、こうして書き上げることができましたことに感無量の思いです。”
 これは、修論謝辞の書き出しであり、今の私の正直な気持ちです。
 現在の職場での仕事量は半端ではなく、中1と小2の母でもあり、自治会、PTAの役員も回ってきて・・・・毎日を暮らすだけでやっとというのが本音なのに、さらに修士論文?どう考えても無理でしょう。というのが自他の冷静な判断でした。
 しかし、言語聴覚士臨床現場から、某大学言語聴覚士養成課程の教員という教育現場に転職して数年。地域で仲間の言語聴覚士たちと会話パートナーに関する活動を続けてきて数年。私にとって、今おかれた状況の中で、修士課程でコミュニケーションに関する研究を始める必然性がありました。
 どうせやるなら少しでも早い方がよいという思いにかられて、スタートした2年間。眞邉先生、及びゼミの皆さんは、こんな私をも温かく迎えてくれました。修論を緩急のある日常業務の隙間に無理やりねじ込むしかない・・・・しかし、母親業務は年中無休。さてどうするか?子供たちを早く寝かして深夜を論文に充てる。という強行作戦でいくことにしました。
 1年前の3月くらいに問題意識を固め、先行研究を読み、研究計画を立て、さあやるぞと思ったら、一気に23年度の業務が始まり、修論を中断すること6カ月。勤務校が休みの8〜9月、方法を固め、何とか10月にデータ取り完了。しかし、勤務校の後期スタートにて、修論中断すること2カ月。勤務校業務大詰めは12〜1月。修論締め切りは1月頭。この丸かぶりをどうするか。年末年始の休みを使うしかない。しかし、大掃除、年賀状、毎年恒例の家族旅行、親戚へのお年始・・・・こんなに行事が満載の時期なのに、どうやって?・・・・・省略できるものを省略するしかない、ということで真っ先に抜いたのは大掃除。年賀状も一気にすませ、お年始も1日早く切り上げ・・・・・でも、他のことはやったのです!家族でスキーにも行ったのです!それをうまく気分転換とし、後はひたすら、PCに向かいました。この研究は、私が以前からやりたかったこと、それに対し、先生の指導が受けられるなんて、何とハッピーなことでしょう。と、自己暗示にかけながら、渋々ではなく、喜々として?取り組んだのです。PCに向かっている思いは、結構充実していたかもしれません。ただ、皆さんと比べると本当にぎりぎりの進み具合。でも、完成させればよいのだから・・・考察をする時間がない・・・でも、これで最後じゃない、また、続きをすればいいんだから・・・寝る時間がない・・・でも、もうすぐ時間切れで解放されるんだから・・・・ポジティブシンキングといえば聞こえはいいけれど、都合よく考えるこの癖が功を奏したとも言えます。先生はさぞ気をもまれたことと思います。わが家族も、友人も、はらはらしながら見守ってくれていたに違いありません。でも、とにもかくにも完成しました。これで出していいのかしら?どう頑張っても後悔は残ると先輩は言われてたっけ。とにかく書いて出して、と先生も言われてたっけ。よし、提出しましょう。かくして、ピリオドは打たれました。そして、やっぱり楽天的な私は、もうその大変さをすっかり忘れつつあります。(ついでに、後でやる予定だった大掃除も、忘れてしまっています。)
 それに対し、先生やゼミの皆さんと参加した箱根ゼミ、ドキドキしながら行ったサイバーゼミ、高揚する気分の中での口頭試問。それらは、勲章のごとく忘れ難い思い出になるものと思います。
 常に冷静に的確にご指導くださった眞邉先生、いろいろご意見くださった先輩方、存在そのものが励ましとなっていたゼミの皆さん、科目をご指導いただいた先生方(「行動分析学」や「社会心理学」「産業・組織心理学」などが私には何と魅力的だったことでしょう!)2年間本当にありがとうございました。ヘルプデスクの方々にもいろいろお世話になりました。
 さて、この先どうするか?今、遅ればせながら、やっと研究に取り組むものとしてのスタートラインについたところです。これからも、自分にとってのキャリアアンカーでもある「失語症の方々のコミュニケーション支援」に関する研究を、継続していきたいと願わずにはいられません。もちろん、短距離走ではなく、時間制限のないフルマラソンの心構えでいきましょう。え―?まだやるの〜と声の主はわが夫!私流ポジティブシンキングで“あなたもご一緒にいかが?“と返したいものです。



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