修士論文を書き終えて
人間科学専攻 佐藤 純子
まさか,修士論文を提出することができるとは夢にも思っていませんでした。
まず,レポート提出にくじけました。レポートの課題には文章だけではなく,たくさんの図の作成などがありました。普段,一太郎を使っていたので,ワードの使い方もほとんど分からず,ましてエクセルなんてとんでもない世界でした。何度もやめようと思いました。しかし,入学金のこととかが頭をよぎり,退学しようとする気持ちを押しとどめました。レポート提出だけで精一杯でした。自分の研究テーマについては,先行研究どころかまったく手をつけられないまま1年目をやり過ごしました。
そして,あの大震災です。大学院を辞める大義名分ができました。もう,いつでも辞められます。退学願い提出が秒読み段階に入っていたのになぜそれを思いとどまったか,それはやはり,ゼミの先輩方々とゼミの仲間たちの存在です。直接的に「がんばりましょう」とかの声かけがあったわけではありません。しかし,スレッドやメールから,それぞれが,それぞれの場で精一杯にやっている姿が伝わってきました。また,「○○で講演会があるからいかがですか」と声をかけていただきました。それらは私にとって大きな励みになりました。落ち込んで,もうだめだという気持ちが少しずつ上向きになりました。そして,ようやく研究テーマに着手しはじめましたが,今度は時間との戦いです。今までなまけていたつけがいっきに回ってきました。自分の能力以上のことをやっていることがよく分かり,また,ずしんと落ち込みました。今度こそ,本当にもうだめだ,実験の結果は出ないし,実験をやり直す時間もない。12月の暮もおしせまったころでした。眞邉先生から「なんとかなりますから,完結させましょう。」との言葉をいただき,私は考えました。
「なんとかなる?」
「えっ?なんとかなる。まさか。」
「なんとかなる!」
「そう,なんとかなるんだ!」
眞邉先生は,多分深い意味でおっしゃったのではないと思います。しかし,私には,ものすごく大きな深い意味に響きました。そこからは一切の迷いを捨て,無我夢中で修士論文の完結を目指しました。1月の副本提出から口頭試問,そして,2月の正本提出まで,さらに苦しい厳しい日々でしたが,もう,迷うことなく猛進しました。
今,感じていることは,あんなに苦しかったのに「楽しかった」という感覚です。不思議です。普段,子どもの作文指導で「ただ,楽しいだけでなく,何が楽しかったのか,具体的に書きましょう。」なんて,自分で言ってながら,今出てくる言葉は「楽しかった」です。なんでも遅い私です。これから「楽しかった」の意味を考えます。
眞邉先生はじめゼミの皆様,ほんとうにありがとうございました。そして,これからもよろしくお願いいたします。