新たなスタートラインに立って
国際情報専攻 金 珍華



 修士論文を郵送するため郵便局に向かう途中、ふと入学式のことを思い出した。一昨年4月入学式を終え、その日の夜自分のブログに、桜が満開の武道館を背景に撮った自分の写真を載せながら、確か「新たなスタートライン」とタイトルをつけたのを覚えている。そして、新たなことにチャレンジできるチャンスを与えられたという、また、学生に戻れたというその当時の嬉しさをいまだに覚えている。
 しかし、そこからの2年間は、入学式で撮った写真の中の微笑みとは程遠いものだった。今振り返ると、この2年間は“果たして”という思い悩みの連続だったのではないかと思う。数年間の社会生活を経て、アウトプットばかりではなく何か自分にインプットできることをやりたい、日本と韓国の社会についてもっと勉強がしたいという強い希望から大学院という道を選んだものの、仕事と学業の両立はそう容易ではなかった。
 本格的にリポートの作成や修士論文の準備に取り組んでいくうち、“果たして自分の選択が最善だっただろうか”、“私には仕事と勉強の両立なんてやはりムリ?”、“外国人である私が果たして最後まで投げずにやり遂げるだろうか”、“今の自分の取り組み方は果たして正しいだろうか”などなど、この“果たして”という疑問と不安は常にあったかもしれない。それに一年生後期、仕事が急に忙しくなり、“やはり私に勉強なんてとても無理”と半分あきらめていた頃は、“今の努力や苦労で果たして何を得られるだろう”と懐疑に陥ったこともある。その頃、近藤先生からいただいたメールで“最後まで頑張って”と励まされたとき、いつも“果たして” という不安な気持ちに甘えている自分がとても恥ずかしく感じられたことを覚えている。“ 100%自分の意思で決めたことだから、やっぱり自分で最後までやり遂げないと! ”、“ まだまだ間に合う!”と気持ちを切り替えることは出来たものの、そこからがまた大変だった。“修士論文、何を書けば良いだろう” 、“どうやって書こう?” という新たな悩みの種が・・・。入学当時から、韓国と日本の放送コンテンツについて研究したいとは考えていたものの、修士論文のテーマをはっきり決めないまま、あれもこれもと欲張ってしまったせいで、研究テーマの範囲は広がる一方だった。結局、論文の作成を始めるまで、かなり時間がかかってしまった。今考えると、本格的に修士論文の作成に取り組むまでの、悩んだり、迷ったりしていた時間が、あまりにももったいなく思われる。“何について書こう”ではなく、“何を書こう” と研究テーマを思い切って早めに決めるべきだった。
 そうやって何とか修士論文を書き上げることができた今振り返ると、この2年間持ち続けていた“果たして”という不安や疑問も、いつの間にか消えているのが分かった。リポートや論文の作成のため、教材を読んだり、他の書籍や論文、雑誌などを調べているうち、自分が知りたかった部分が少しずつ見えてきて、またそれによってさらに仕事や社会全般に興味を持てるようになった自分がいた。“知る”ことに興味を持ち、楽しめるようになったことこそが、この2年間の最も大きな成果ではないかと思う。
 2年間の大学院生活を終えようとする今、再び新たなスタートラインに立っているような気がする。これから見えてくるもの、これから経験するものは、確かに2年前までのそれとは違うことを信じている。より“知る”ことを楽しめるだろう。この満足感と期待感は、これから論文作成を準備している一年目の方々や大学院入学を考えている方々にぜひ味わってほしいものである。



 
       
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