「株式会社制度の日本における変容(従業員派)」

国際情報専攻 8期生 田中 良知


 「株式会社制度」は、歴史的に英米が発達させてきた制度であり、英米的な社会制度のもとで効率性が最大となるように設計されている。そして制度の根幹として、「経営と所有の分離」のみならず、「経営と社員の分離」という社会的現実があり、その下で「フェアネス」を追求するスタイルがある。
 異なる社会的風土を持つ日本は自ずから、異なった対応を考えなければならない。日本では企業に対するコミュニティー感覚が強く、そのため英米で考案された「監査システム」が脆弱にしか機能しないことが、日本における株式会社制度援用の弱点であり、「終身雇用」を行うことが、従業員の仕事への就業インセンティブを駆り立ててきた点が特長である。「経営」の監視機能が弱い点は、まさに株主軽視に繋がり株主主権論の論拠となっている。しかし、アメリカ型の企業統治が報酬と確定拠出型年金で生み出そうとしたインセンティブをコミュニーティー的一体感で達成してきた日本の株式会社の特長であり、英米型そのままの株主主権主義の導入は、日本の社会的現実を踏まえたものにはならない。

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