研究経過報告
「「科学史」の考え方をめぐって
―VOA レクチャー「科学史およびアメリカにおけるその研究状況」の紹介を兼ねて―」
平成12年度修了生・人間科学 大槻秀夫
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は じ め に
修士論文においてニュートンによる「科学革命」について述べた。この西ヨーロッパ17世紀における革命の後、20世紀前半においてこれに匹敵する「科学革命」といえばアインシュタインによる相対性理論、およびシュレーディンガーとハイゼンベルグによる量子力学の形成が上げられる。このことには異論がないものと思われる。
ところでニュートンの力学に先がけてコペルニクスの地動説やガリレオの運動の理論があったように、多くの先人の業績がその「科学革命」の理論を引き出す役割を担ったことは否定できない。そこで私は、修士論文の成果を踏まえて、17世紀のニュートンに対する先人達の業績に比肩することのできる19世紀、20世紀のそれらの科学者、哲学者達について検討し、その足跡をたどってみることは意義があることであると考える。そしてこの観点から先ずとりあげて見たいのはドイツ科学の最高のスポンサーと言われたマックス・プランクである。更に長岡半太郎、湯川秀樹、朝永振一郎など日本の科学者の名前も見逃すわけには行かない。その他数々の科学者達を概観して、そこに何がしかの人間の知的活動の関連と意義を見いだしたいものと思っている次第である。修士論文を提出して1年、現時点において、私はこのような研究の展望を描いている。
ところで、このような構想を具体化する研究に立ち入る前に、私は「科学史」という概念について自分の考えを纏める必要を痛感している。「科学史」という学問分野については、デュアン・H・D・ローラーによる「科学史およびアメリカにおけるその研究状況」という論文がある。これはもともと、VOAが行なったThe History of Scienceという公開講座(Forum Lectures)の第1回講演である。
この講演は、ニュートン以後の物理学の発展の経過を考察して行こうと思っている私にとって、「科学史」とは何かを考えるうえで恰好の刺激と材料を提供してくれる。この問題への手がかりを掴む意味で、講演の議論を辿り、その要旨を紹介してみたい。
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