行きつ戻りつ修士論文奮闘記
文化情報専攻 2021年度入学 2023年度修了 吉岡 千由里
私がGSSCに出会ったのは、英語講師として英語教育に携わり様々な学習者と接するなか、大学院で英語教育について学修し自分の土台を築き直したいという思いを漠然と抱いていた頃でした。GSSCでは多くの方が社会人大学院生として学んでおられることを知り、2020年夏、オンライン説明会に参加してみました。説明会では、事前相談に申し込んで研究内容について必ず相談するように、というお話がありました。しかし、その頃の私はというと研究テーマすら定まっておらず、大学院での学修についていける自信も事前相談に申し込む勇気もありませんでした。そこで、大学院生向けに書かれた研究の進め方や論文の書き方についての入門書を読んでみたり、シラバスに記載されている課題関連図書や英語教育研究に関する文献を読んでみたり、自分なりに研究テーマについて考えるうち、やはり大学院で学びたいという思いが深まっていきました。オンライン説明会から半年が経つ頃、思い切って事前相談に申し込んだところ、すぐに田嶋先生がご連絡をくださいました。面談そしてメールでのご助言をいただくなか、先生のご指導が既に始まっていることを感じ、入学後はこのようにしてご指導いただき学びを進めていくのだと直観したことを今も覚えています。そして、「自分の言葉で話せるようになりますよ。」という田嶋先生のお言葉が私のなかで強く響き、大学院での学びに挑戦することを決意しました。
入学後は履修科目の関連図書の講読と課題レポートの執筆に追いたてられながら、修士論文の研究テーマをどのように研究計画へと具体化していくのか頭を悩ませる日々でした。履修課題では、関連図書を読んでは考え、考えてはまた読み返すなか、読み込んだものが自分の中で消化され融合されてやっと一本のレポートに組み上がるような感覚を何度も味わいました。また、ゼミでは自分の研究テーマに合わせて月に数本の論文を読み、要約した内容を発表することを続けました。自分の研究テーマに関連する論文をみつけて要約することで知見を深めることができると同時に、修士論文の支えとなる先行事例を集めていくことができることを知りました。
ところが、初年次が終わろうとする頃、研究テーマの変更を余儀なくされる事態が起こり、研究テーマを考え直さねばならなくなりました。長期履修でしたので時間的には後2年が残されていましたが、新たな研究テーマを設定し直さなければなりません。様々な先行事例を読んでは研究テーマを検討するのですが、なかなか絞り込むことができず発散してばかりでした。研究テーマが定まらず研究計画へと落とし込むことができない時期が続き、行きつ戻りつの大変苦しい1年でした。
転機となったのは、なんとか研究テーマを絞り込むことができ、試行データを使って試行分析をしたことでした。頭の中で考えを巡らせてきた研究計画を実際に試行してみたところ、その分析結果からは発見や気づき、そして改善すべき点も見つかりました。また、研究テーマが変わってしまったため引用することはないと考えていた初年次の講読文献が、キーとなる研究事例として位置づくことも見えてきました。改善点を踏まえ、本番研究に向けての研究計画が具体的に定まっていきました。
こうして、ようやく修士論文の執筆を開始しましたが、データ分析を行い結果を考察していく途上で論点を見失い、データを分析し続けるばかりで論考を進めることができなくなってしまいました。途方に暮れそうになって思い起こしたのは、田嶋先生から幾度となくいただいた「今はここまで」というご指導でした。我に返って立ち戻ったのは研究計画で立てたリサーチ・クエスチョンでした。問いに対する答えは何か、行きつく先が定まりました。また、修士論文の提出間際にも最終稿の修正を終われないでいる自分に気づきました。研究にも学びにも終わりはない、今の自分はここまでと納得し、筆を置きました。
大学院を修了して半年後、修士論文の内容を学会で発表する機会をいただきました。意外にも落ち着いて発表することができ、少しは自分の言葉で話せるようになれたのではと感じています。大学院に挑戦する自信も勇気もなかった私がなんとかここまで辿り着くことができましたのは、幾多のご指導と励ましをいただいたお陰です。
田嶋倫雄先生をはじめ、ご指導いただきました先生方、学びをともにさせていただいた方々、お世話になりましたすべての皆様に、心から感謝申し上げます。家族にも心から感謝します。本当にありがとうございました。