あっという間の2年間

国際情報専攻 2022年度入学 2023年度修了 佐久間 浩史

1.はじめに

私がGSSCに入学するきっかけは20年以上勤務した企業から新しい事業を始める企業に転職したことです。前職では、ある意味、慣れた業務に20年近く従事しており、「新しい学び」という発想は生まれませんでした。しかし転職して、新しい事業に従事するとこれまでの知識、経験は点であり、線でつながっている状態ではなかったと思いました。このメッキが剥がれるような感じを何とかしたかったのかもしれません。

その時、もう一度、原点に立ち返り、点と点をつなげるアカデミックな学びが必要と考えました。それが大学院での学修の始まりです。

入学にあたり、我が家では子供が小さいため、妻との決め事として、週末の1日は家族に向き合う時間をつくることにしました。平日は仕事帰りに週3回の図書館通い、週末の1日は自宅や図書館にて学修。その中で家族と過ごす時間をと心がけましたが、結果として上手くいかず、家族には迷惑をかけたのが実情です。

仕事との両立については、M1の時期は新型コロナでの自粛期間中であったため、在宅での勤務が多く、また、出張や会食も少なく、比較的学修時間はとることができました。M2の頃はそうはいかず、できる限り会食や知人との食事の誘いは断り、学修時間を確保しました。社会人大学院生は勤務先の上司・同僚や友人の理解も大切です。

2.修士論文への取り組み(M1時)

M1の8月に研究計画を作成して修士論文(修論)の執筆をスタートさせました。しかし、第1章を作成するだけでも時間を要し、調査すればするほど、どこから手をつけるべきなのか判断に迷っていました。その状況を見かねた指導教員の雨宮先生から、章の順番にこだわらず、書きやすい項目から調査、執筆することがよいとの指導を受け、まずは8月から10月の3ヶ月で3本の修論に関わるリポートを書き上げることを目標に取り組みました。

10月から12月は通常の科目リポートに専念し、1月からの3ヶ月間で3本の修論リポートと銘打って執筆しました。特にリポート提出のない1月中旬から3月末までが修論を執筆する絶好の期間と考えます。

執筆方法としては、まずは研究テーマに必要な基本的事項を章ごとにリポートにまとめ、研究にあたる土台を約半年で作り上げました。先行研究に関しては国会図書館やGoogle Scholar等を活用して調査しました。調査を開始すると基礎の段階だけでも膨大な資料のまとめが必要であること、また、調査を進めることで自分の知識不足を痛感し、体系的に理解ができていなことに落ち込むこともありました。したがって、調査項目の深堀と拡大によっては修士課程2年間では時間が不足しており、自身の研究項目に大きく関わらない箇所は、今回の修論では立ち止まらず、次の章・節に進めることにしました。

3.通信制としてのメリット・デメリット

通信制のメリットは周知のとおり、自分のペースで学修を進めることができることです。現在、夜間や週末大学院がありますが、やはり社会人でその環境下で学べる人は、ごくわずかです。私も出張や状況によっては定時に退社できるわけではないため、通信制大学院は大変ありがたい制度でした。

一方、デメリットはやはり、「孤独」との戦いであります。通学生であれば同じ机を並べる仲間が多数いるかもしれません。ただ、冷静に考えてみると大学とは違い、大学院は研究することが目的であり、各々テーマは異なり、結局のところ、一人で学修を進めていかなくてはならないのです。ただ、GSSCはサイバーゼミで1ヶ月に1回程度はゼミ仲間と顔を合わせることもあり、また、指導教員には気軽に相談できる仕組みがあります。私は勤務先から帰宅後、オンラインで特別研究の指導を受けることもあり、時間に制約のある社会人には大変助かりました。指導を受ける前日にはメールで研究内容の相談や修論の進捗を報告し、当日、オンラインで指導を受けながら粛々と修論の執筆を進めていきました。

4.科目に関して

大学院は特別研究である修論を執筆するだけではありません。24単位という科目を履修し、単位取得がマストです。少なくとも2年間で24本以上のリポートを書き上げることが必要となります。私が大切にしたのは当然ながら、時間配分です。まずは体調不良や急な長期出張等に備え、提出日の約1ヶ月前までには初稿が提出できるスケジューリングを立て、次に学修書を読むスケジュールとリポート作成のスケジュールを別々に立て、毎週末にスケジュールを確認してリポートを仕上げるようにしました。電車通勤の私は通勤中に学修教材を読み、場合によってはスマートフォンで要点を打ち込んで、リポートを仕上げるように努めました。運よく、私の最寄り駅は始発駅になることが多く、座っての学修も幸いだった気がします。

5.少しだけ2足の草鞋に慣れた2年生

M2になると本格的に修論の執筆が始まります。特に、研究の独自性を出すには独自アンケートを作成して客観的なデータに基づいた考察を導き出す必要があります。ただし、アンケートには多くのN数を集めなくてはなりません。私の研究テーマは現在の業務に関わる内容であるため、勤務先のメンバーに依頼することもできず、大学時代の友人やGSSCの仲間に協力を仰いでN数を増やして、客観的な数値を集めることにしました。目標のN 数に届くまでに約3ヶ月を要したため、検証に時間が掛かり、9月の中間発表会には考察までは間に合わず、結果として10月にまとめ上げたと記憶しています。

また、各章のバランスに関しても大変苦慮しました。調査を進めていくにつれ、疑問点が生じ、その内容を修論に追記すると論文全体のバランスが変わってしまうのです。追記した分、刻々と時間が過ぎ、修論締め切り日にじわりじわり近づいていきます。中間発表会前後にはこの状況下に、日々追い込まれていくのを実感しました。

6.中間発表会と最後の追い込み

M2の9月には中間発表会が行われます。これまで執筆した修論をパワーポイントにまとめて先生方や院生の前で発表します。発表にあたり、何度もゼミ仲間の前で模擬練習をする等、事前準備をしましたが、結局のところ、私が納得できる発表には程遠いものでした。また、指導教員以外の先生から厳しい質問を頂き、回答にしどろもどろになったことを記憶しています。今思えば、一院生が大学教員からの質問に簡単に答えられるのであれば、学生をする必要はないのです。しかし、その質問や指摘から、これまでの執筆した修論を見直すきっかけとなり、さらに精度の高い修論に仕上げていきました。

11月に入ると最後の追い込みです。章立ては間違っていないか、章ごとのバランスはよいか、最終のまとめはこれまで執筆した内容から理論的に導きだしているか等、多くの確認事項が必要となります。また、誤字脱字、図表の番号振りといったチェックも必須項目です。この時期の大きな修正は時間的にも精神的にも大変厳しいものです。私の妻によれば、11月、12月の顔つきが一番険しかったようです。

12月末の修論提出で少し胸を撫で下ろし、そして1月末の面接試問を越えれば、GSSCの修了がみえてきます。面接試問での指摘事項を修論に修正・追記して完成です。

7.おわりに

修論を書き終えて感じたことは、私が入学前に解決できると思ったことの一部しか解決に至ってないことです。入学した際には新規性なものを生み出すと誓ったものでありますが、とてもそこには到達していなかったのです。しかし、アカデミックな視点や定量・定性の重要性などGSSCの学びを通して知識以上に考え方と導き方に自信を持つことができたと感じます。博士課程前期修了生としてやっと研究部門の入口に立ち、雨宮先生の紹介で学会に入会し、引き続き学びの機会を得ることができました。

最後に指導教員の雨宮先生や科目担当の先生方に感謝申し上げます。またこの2年間、GSSCの仲間にも支えられ、本当の意味での孤独に陥ることもなく、修了できたことは喜びです。今後は更に自身の探求心を刺激するような学びを続けていけるよう励んでまいります。




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