コロナ禍で変わったゼミ運営

国際情報専攻 2021年度入学 2022年度修了 橋本 丈次

1. はじめに

日本大学総合社会情報研究科を修了し国際情報修士の学位を取得できました。
 それは、学部で体感できない学問領域の奥深さを体感することとなり、勉学の成果としては点が線に結びついたことでした。そもそも自身が知りたいと興味をもった物事を研究として捉え、関連する多くの文献をあたることで今まで知っていたようで知らなかった点に気づき、問題の中心を学び取ることができ、視点を広げて確認することによりまた新たな課題に突き当たりました。自分の研究分野ではこと足りず、関連する分野にも視野を広げることで点であった視点が線になり連綿と続くことで気づきの連続を得たことにありました。当初、この領域は他者では考えていないであろうと思い、先行研究で論文などをあたることからはじめますが、自身のテーマすでに先行研究されていたということを知ることで軽いショックを受けたことを思い出します。
 しかし、気付きを得ることによって、さらにその先の研究を進めるという希望が見えてきたことでした。まさに過去の研究結果に感謝しつつ新たに学ぶチャンスを得た瞬間でした。
 「学ぶとは自分をつくることであり、眼前にあることを懸命に探究することである」
 このように、過去に解明されなかった、あるいはできなかった物事に何故という問題意識を持った時点で、先達の成果物を先行研究し、どの程度解明したいのかあるいはどこまで解明すれば自分が納得いくか探求することでもあるように感じました。

2. 学生生活を振り返り

修士課程の2年間という時間は瞬く間に流れ、もう少し研究をしたいと思った段階で時間切れとなりました。
 この大学院では入学に興味をもった段階で、先生との入学相談が必須となっており、自分が何を研究しどこまで考察したいのか、あるいはご指導される科目や領域が合致するのかなど、回数と時間をかけて相談し、受験を決意します。もっとも先生の専門外や指導範囲外、フィーリングもあるでしょうが、大変貴重な時間であることはいうまでもありません。
 ただそんな私は、社会人であり、不動産事業を生業としており、特に業界で問題視する分野の研究をしたいと考えていたのであるが、先生も社会経験が豊富で、金融業界出身者であったため、なんなく受け入れていただけ、もっとも自身の知らない分野も学べる機会を得ました。とはいいつつも社会人にとって時間と費用を有効に使い、その中でも自分の成果物を得ること が目標であり、もっとも重要なことです。
 入学前、大学院の学びは現役に近い方々が勉学するためのものであろうと考えていましたが、実態は老若男女の年齢幅があることを聞き、入学へ向けての大いなる安心化と期待感が満ち溢れたことを思いだされます。
 通信制という勉学手法もさることながら、周りの皆様が社会人経験豊富な方ばかりであり、気概にふれることで切磋琢磨する周りの皆さんに、おのずと躍動感が満ち溢れる自身に気づき、おくれをとらないようにすることなど、楽しい時間の連続でありました。なかには社会生活の中間地点でこれまでの生き方を踏まえ論文をお書きになるとのきっかけで入学されている方に深く共感がもて、自分もこれまでの人生の折り返し地点、ターニングポイント時点での評価、カタチに残すことに焦点をあて入学したのでした。

3. 入学後の学びと姿勢

まず、入学後は決められた単位の修得にむけ、オンライン授業を受け課題のレポートに対し先生のご意見やご指導を仰ぎます。時に厳しいご指導もいただき、課題文献のみならず、さらなる参考文献を読み込むことでより深い学びと課題の中心を理解でき、さらなる深みをもった学びとなりました。
 通信制大学院は全世界どこにいても時差や地理的要因も超越して指導が受けられ、研究が進めることが可能であることに大きなメリットであり、その成果もネット上で確認すできるため、社会人生活を営んでいる私たちに学校はじめ先生方の配慮がなされ、自身が困難であるはずの時間管理も困難さを感じさせない学びやすさが特徴で、社会生活と学業の両立は難なくこなせました。また近年世界的問題となったコロナ感染症拡大で社会生活の多くの制約を余儀なくされ、学修にも影響があるように感じますが、そこは通信制という学修体系が確立された本大学院ならでは の指導体制 に大いに感謝するところでありました。
 ただし、対面にしか体感することができないことも存在します。オンラインでの科目授業も一方向であったため、時には質問のやり取りの中でも締め切りという時限的制約があり、どうしても孤独感に苛まれることもあり、質問や解答に自身が考えていることをリアルに対話ができず、ネットという空間的制約に苛立ちをおぼえたこともありました。

4. 実施したゼミ活動

修士論文作成にあたり、加藤ゼミは令和4年に入り、コロナ感染状況が小康状態となったことを受け、オンラインと併用のハイブリット方式で開催すればどうかとお声を頂戴し、対面でゼミの皆さんと対話ができることに大きな喜びを感じました。
 通信制という枠の中での学びはどうしても孤独感に陥ることがあることもあり、勉学に志を同じくする仲間との対話が実現できることへの感謝であったのです。
 さらに、電気ショックを受ける事態が訪れたのです。なんと自身がゼミ長という大役を仰せつかったのです。「自身のレポートもおぼつかないなか、皆さんのお世話なんてできっこない」と決めつけていたのですが、心優しいゼミの皆さんから協力をいただき、執行部員として会計、通信、懇親設営などご協力体制を固め、毎月可能なら対面で皆さんとお会いし、レポートの書き方や勉学の手法などを共有することをもって、科目消化の進め方にも参考とさせていただくことで、多くの皆さんがゼミ運営に積極的参加がいただけました。
 実際ゼミでは、参加者より研究発表に対し意見や質問などがだされ、自身の学修に対する方向性の確認、先生からのご意見やご指導を頂戴することでより充実した論文の作成につながりました。
 もっともゼミ終了後の懇親会も大いに盛り上がり、日ごろの研究での困難なことやリポートの書き方など困惑することなど情報共有することで自身への活力にもつながり、その楽しさからか参加者の数は回を増すごとに増え、人員的に会場確保も一苦労することもありましたが皆様の協力を得て楽しいゼミ運営となりました。

5. 軽井沢夏合宿

ゼミ運営も充実し日頃の成果、中間地点の振り返りと今後の修士論文終盤に向けて折り返し地点として日本大学軽井沢研修所で二泊三日のゼミ合宿が開催しました。
 8月の盛夏に多くのメンバーが集結し、授業や研究発表、自身の論文の中間考察を行う積極的機会とすること。合宿を通じてより一丸となることで就寝時刻を超えて楽しい情報交換など、寝食を共にする有意義な時間を過ごす機会となりました。
 この時期は修士論文も大まかな外枠が出来上がり、中身の充実に向け書き上げますが、同期の仲間たちの発表を聞きつつ自身の論文について意見や質問など互いに高めあう機会となりますが、ご意見によって大小軌道修正を余儀なくされることもあるため、夏合宿までに大まかな方向付けは欠かせないのであります。
 さらに、夏合宿が終了後9月には修士論文中間発表があるため、この合宿がとても貴重であるとともに緊張する期間ともなり、中間発表と最終審査へのタイムリミットを向かえるのであります。

6. 中間発表

修士課程で最初に緊張する中間発表会9月末に開催されます。自身が書いた修士論文を簡潔にパワーポイント形式を用いて、会場で発表します。
 緊張の連続で、しっかり説明できたのか発表中はあたまが真っ白になりました。
 ただ、参加いただく先生方や、ゼミのメンバーも参加することが可能なので、見慣れた風景と何時になく怖い顔の先生方も参加されています。
 発表後、会場内からの質問に回答することが一苦労で、心臓の高鳴りとともに何をしゃべっていたのか回想できないほどでした。
 ただ、他専攻の皆様ともお会いできる機会でもあるため、皆さんがどのような研究をされるのかなどを拝見できる機会でもありました。

7. 最終試験

中間発表でのご意見をもとに、論文は締め切りまでの期間に先生の個別指導をうけつつ変更、大小修正が入ります。訂正に訂正を加え、ようやく書き上げたのが元日の朝でありました。
 ただ、先生が最終稿を待っていただいておりましたので、先生も修正稿を寝ずにお待ちいただいていたことに心が痛みます。
 加藤先生のご指導と納得がいく論文を作成させてやりたいとの優しいお心に感謝しかありません。
 さて、最終試験日を向かえるにあたり、最終稿を提出し後には引けない最終考査日がやってまいります。面接官三名に対し、一人ずつの面談です。この時はさすがにどんな質問でも回答できるまでになっていると思っていましたが、やはり修正点を指摘されました。
 ただ、微調整のみであったため、大事には至りませんでした。
そして、最終稿を提出のうえ、次なる案内を待つのみです。それは修了式のご案内であります。論文試験合格の知らせの代わりに修了式の案内が郵送された日を生涯忘れることはできません。

8. おわりに

わたしはビジネスの中間地点として日ごろの問題意識を研究テーマとして、修士論文の執筆にあたりました。
 不動産を業務としているのでありますが、少子高齢化問題や地方消滅の危機に瀕している一方で都心にもその兆候が見られることがあるにもかかわらず、一定の都市開発はとどまることを知らず、工場の海外移転や市街地再開発での土地活用のあり方に疑念をもって研究を推し進めました。
 研究には担当の加藤先生よりご指導をいただき、修士論文として書き上げることができましたが、やはりこの先の研究も進めなければ疑念の払拭にならないこと。さらにはビジネス上での研究きっかけにはなりましたが、一層の深みが必要であることに気づくことができ、学問上と実態とでの乖離にも気づけ、この先も自身が納得のいく研究成果を上げたいと考えています。
 さいごに、本大学院に2年間お世話になり日頃気づけないものごとに学問的な気づきを得られ、通信制といえども加藤ゼミではリアルで開催が許され、ともに論文作成に汗した同士との思いやりや友情に出会い、互いにさらなる進化を約束しつつ修了式で笑顔が忘れません。
 自身が修士という学位取得に向け担当教授の加藤浩二先生はじめ、特任教授の階戸照雄先生から多くの学びを得ることができましたことに御礼申し上げ、さらなる研究への道標を与えていただき、研究を進化することをお誓い申し上げ、結びといたします。




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