ウクライナ出身者に対する日本語学習支援

文化情報・教員 島田めぐみ・保坂敏子

2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が起こり,多くのウクライナ人が祖国を脱出し,日本にも2022年9月現在,1,800人ものウクライナ出身者が避難してきています。日本が受け入れを表明した同年3月に,私たちにできることは日本語学習を支援することだと考え,ウクライナ避難民等を日本語学習の面で支援するための「日本語クラブ」を立ち上げました。保坂ゼミ・島田ゼミの大学院生,修了生に協力を求めたところ,日本各地,海外で活動する30人が応じてくれました。本稿では,半年あまりの「日本語クラブ」の活動を報告します。

「日本語クラブ」(https://sites.google.com/view/gssc-nihongo-club/)を立ち上げ,まずは,出入国在留管理庁に支援登録を行うと同時に,受け入れを表明している地方自治体に支援の申し出を行いました。実際に日本語学習支援の要請を受け,活動をスタートさせたのは2022年6月でした。その後,毎月,主に出入国在留管理庁を通し,1,2名の方から支援要請があります。支援要請をいただくウクライナ出身者の方は,幼稚園生,小学生,日本で仕事を始めた方,家族の元に身を寄せている方,大学の科目等履修生など,さまざまです。また,来日してから日本語学習を始める方,国の大学で日本語を専攻した方,英語を話す方,話さない方など,レディネスもさまざまです。一方,支援を行う学生・修了生は,小学校教諭・元教諭,国内外の大学の教員,ビジネス日本語を専門とする教師,日本語学校の教師,地域で教える教師など,こちらもバラエティに富んでいます。そのため,それぞれの得意分野や能力をいかして,支援にあたっています。例えば,小学生には元小学校教諭が,英語を解さない方にはロシア留学経験者が,英語でのコミュニケーションを求める人にはアメリカで教鞭をとる者が,仕事で日本語を用いる人にはビジネス日本語分野の教師が支援にあたる,というようにそれぞれの能力と経験を生かして活動しています。

2022年10月現在,メンバー16名が,年少者2名,成人7名のウクライナ出身者に対して,オンラインによる日本語学習支援(基本的に,初級学習者には週に3回,中級学習者には週に2回,1回1時間)を行っています。メンバーは2人あるいは3人からなる7つのグループに分かれ,1グループが1人あるいは2人のウクライナ避難民に日本語学習支援を行っています。表1が現在の時間割です。番号はグループ番号を表しています。例えば,グループ1は,1人のウクライナ出身者(初級者)に対して,火曜日,水曜日,金曜日の夕方,1時間ずつの学習支援を行っています。支援者は3人で,各曜日を担当しています。このように,現在は,16人が週に1時間のクラスを担当しています。都合により担当者が授業に入れない期間は,保坂や島田がレッスンに入ることもありますが,基本的には,16人の学生・修了生がグループ内で連携し,支援活動を行っています。


表1 「日本語クラブ」学習支援のスケジュール(2022.10.8現在)

午前 2, 4, 6 5 2, 4, 5 6 4 7
夕方 1, 3 1, 3 1 3


ここまで日本語学習支援について述べてきましたが,その他,翻訳の依頼もありました。ロシア語教員である修了生とロシアへの留学経験のある学生が,ある政令指定都市からの依頼で,市民のための「暮らしのガイド」のロシア語への翻訳を行いました。

写真は,2022年6月より支援させていただいているヴァレンチーナさんと修了生・学生3名(真保知子さん,松尾恵理沙さん,牧久美子さん)です。ヴァレンチーナさんは,私たちが最初に支援をさせていただいた方です。通算40回の授業を終えたところですが,まだまだ学びたいと希望されています。私たちができることはわずかですが,日本語学習支援を行うことで,日本に逃れてきた方々の生活が少しでも豊かになれば幸いです。また,私たちの思いに応えて,忙しい中,ボランティアで毎週支援を続けてくれる学生・修了生に心から感謝しています。




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