準備OK?

文化情報専攻 21期生・修了 亀﨑 晶子

GSSCの日本語教育を専攻し島田先生のご指導の下、2021年3月に無事修了することができました。しかし、修了に至るまでの道のりは決して順調だったとは言えません。思い返せばGSSCに入学する上で、すでに大きな不安材料があったのです。まず、文章を書くことが大の苦手な私にとって、数万字にもおよぶ修士論文が果たして仕上げられるのかどうかという問題点です。入学前の事前面談の際、真っ先に島田先生にお伺いしたのは、2年という短い期間で修士論文が書けるようになるのかどうかということでした。さらに、日本語教育に携わっていたものの、教育理論については確たる知識を持ち合わせていない私が、大学院のゼミについていけるのかどうかという点も不安材料の1つでした。このように、大きな不安を抱えつつ、修士論文を完成させるに至るまでの自身の奮闘というより苦闘ぶりについて執筆したいと思います。

上述したとおり、私はGSSCに入学した当初から現在に至るまで日本語教育に携わっています。約13年前の夫の上海赴任をきっかけに、これまでの経理関係の仕事から日本語教師の道へと方向転換しました。上海での日本語教師としての活動は新鮮で楽しめたものの、教育に関する知識不足を常に痛感していました。帰国後も日本語教師を続けるにあたり、日本語教育に関する知識をもっと深めたいとの思いが強くありました。その思いから、仕事を続けながら自分のペースで学べるGSSCに入学しました。

自身の所属する教育機関では英語や中国語を媒介語とした教室活動を行っています。日々の教室活動において、媒介語の使用が学習者の日本語習得に良い影響を与えているのかどうか少々疑問を持っていました。上海では媒介語を使用せず、それでも多くの学習者が日本語を習得していたためです。この疑問に対する答えを自身の研究で探ろうと考えました。研究テーマは「初級日本語教育における媒介語使用の有効性―ビジネスパーソンを対象とした教育現場から-」とし、研究を進めました。研究の方法は自身の学習者5名に対し調査を行いました。アンケート調査、直接法(媒介語を使用しない)の授業実践、実践後のインタビューを行うという内容です。これらの調査をはじめ、修論完成に向け計画したスケジュールが順調に実行されたのかどうかについて、自身の研究を振り返っていきたいと思います。

下の表を見てわかるとおり、ほとんどの項目が順調に進まなかったことがわかります。その中で、調査のみがほぼスケジュールどおり進んだ項目です。上述したとおり、調査対象者は社会人であり多忙を極めています。仕事のスケジュールを考慮した場合、この期間に調査を実施する必要があったのです。また、コロナ禍という特殊な状況下において、緊急事態宣言発令前に調査が終了したという幸運にも恵まれていました。調査の内容についても納得のいく結果が得られました。媒介語の使用や外国語学習に対する考え方という少々難解な質問に対し、学習者は日本語で考えを述べてくれました。私が想像していた以上に、日本語の学習に対し考えを巡らしつつ向き合っていることがわかりました。この調査を通して得た知見は、実務においても大変役に立っています。

一方で、スケジュールの遅れが顕著だった項目は先行研究の調査、まとめとインタビューデータの分析です。その原因について、1つ目の先行研究の調査から振り返ります。

先行研究の調査を行う期間において、予想以上の作業が複数生じてしまいました。具体的にはアンケートやインタビューに関する参考文献の読み込み、質問事項の作成、授業実践の準備、さらに課題レポートの作成などと重複してしまったのです。研究を進める上で必要な準備のための時間や課題レポート、ゼミの準備など研究以外の作業時間についても、スケジュールを立てる際に考慮する必要があったのです。2つ目のインタビューデータの分析は最も苦労した作業となりました。分析にはソフトウェアを使用しました。データの入力後に図の作成を行い分析するという手筈になっていました。図が完成すれば分析は簡単にできるだろうと安易に考えていたのです。ところが、図が完成した喜びもつかの間、これらの図を用いて調査結果をどのように示したら良いのか答えがなかなか見つかりませんでした。結局、分析結果の章を執筆する時点まで苦慮する状態が続きました。考えては書く、また考えては書き直す状態が続いたのです。その結果、初稿提出期限に間に合わず、最終稿の提出は年越しそばを食べる直前となってしまいました。島田先生には大変ご迷惑をお掛けいたしました。提出が大幅に遅れた私が述べるのもおこがましいのですが、これから修論を執筆される皆様、先生方が安心して年を越せるように早め早めの提出を心がけてください。

ここまで、自身の研究について振り返り、反省すべき点が見えてきました。修論を書くための準備が明らかに不足していたと言えます。余談ですが、私はスポーツ観戦が大好きで選手のインタビューにもよく耳を傾けています。結果を残す選手がいつも口にするフレーズがあります。「次の試合に向けてしっかり準備します」です。考えてみれば教師の仕事も同様です。何事においてもしっかり準備しなければならないのだと改めて痛感しました。さて、修論を完成させる上でどのような準備が必要なのでしょうか。3つにまとめてみました。

1つ目はスケジュール管理だと言えます。研究の振り返りで見たとおり、スケジュールを立てる前に準備を含めた作業の見落とし、重複がないかどうか確認する必要があります。さらに、スケジュールが遅れた時点で都度見直していくことが大切だと言えます。2つ目はゼミ、合宿、中間発表など、発表の機会を逃さないことです。その機会において、自身が気づいていない問題点を指摘していただけます。自身の研究も、合宿の際受けたアドバイスのお陰でリサーチクエスチョンの明確化に繋がりました。3つ目は、事前面談における島田先生のお答えです。それは「1つ1つの課題レポートを丁寧に書いてください、そうすれば必ず書けるようになります」というアドバイスです。課題レポートを作成する上で、多くの参考文献を読み、ピア・レスポンスに参加し、何度もレポートを書き直した経験によって、修論を書く能力が養われたのだと考えます。もし、私のように書くことが苦手であれば、まずは課題レポートの作成に力を注ぐことをお勧めしたいと思います。

以上、私の修士論文完成までの苦闘ぶりについて述べてまいりました。これから修論を執筆する皆様、またGSSCに入学を検討されている皆様に、少しでも参考になれば幸いです。

最後になりましたが、数々の心温まるご指導をいただいた島田先生に深謝いたします。また、スクーリングや合宿にてご指導いただいた保坂先生、L2習得の観点から修論にご助言いただいた田嶋先生、スクーリングにて教授いただいた秋草先生に感謝の意を表します。最後に、数々のご助言と激励をいただいた島田ゼミの皆様にお礼を申し上げます。




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