研究科長を辞するにあたって

教授 階戸 照雄

本年3月末をもって、65歳の定年となり、研究科長の職を辞しました。長年にわたって関わりを持ってきた大学院の電子マガジンにこの文章をのせることはとても感慨深いです。

大学院総合社会情報研究科で教職をとり始めたのは、2006年4月からです。それまでは岐阜にある朝日大学経営学部教授として3年間おり、その前は銀行員として(10年間の海外生活も含めて)25年間勤務しておりました。銀行は早期退職でした。銀行員から大学教授への転身は、最初は全て戸惑うことばかりでした。そのうち、自分自身、大学生活に少し居心地の良さを感じてきた頃、日本大学へ移ってきたと思います。当時は大学院の研究室は所沢にあり、ゼミも公開講座も全て所沢で行いました。近年、今の市ヶ谷に移り、便利になりましたが、遠い所沢も今となっては楽しい思い出です。

2012年4月より、研究科長を拝命しました。財政難から学生数の増加は喫緊の課題であり、研究科長の間、最初から最後まで学生募集に明け暮れた気がします。当時、三崎町にあった通信教育部の夏のスクーリングで、累積で2000人以上の通信教育部の学生に早朝から大学院の入学案内を手交する等、大学院の教職員や修了生の皆さんにお手伝いを頂き、大変なご苦労をおかけしました。あらためて御礼申し上げます。特に研究科長に就任後、カリキュラム改定や入学試験機会を増やす等の施策のせいか、博士前期課程入学希望者が80名を記録した時は達成感を感じました。その後86名の入学希望者を迎えた年は90名の定員に対して、もう一歩であり、翌年を大いに期待しましたが、研究科長在任中はこれがベストでした。来年度の入学希望者数については、新型コロナもあり、予断を許さないとは思いますが、ピンチはチャンスであり、多くの入学希望者が集まることを期待しています。

研究面では、前任の大学ではフランスに6年間いた経験を生かし、日本とフランスのコーポレート・ガバナンスの比較研究を始めました。フランス関連の日仏経営学会では、学会会長を務める等(現在は理事)相応に自分の研究は認められたものと考えています。なお、研究を進めていくうちに、コーポレート・ガバナンスはもともと公開企業に対して言われてきたものですが、そのコーポレート・ガバナンスが真に必要な企業はむしろ未公開企業であり、なかでもファミリー企業と呼ばれる同族企業、オーナー企業であると気付きました。米国の著名なファミリー企業研究者も、あるエッセイで同様のことを書いている文章を見つけ、我が意を得たりの思いをしました。そうこうしている中、日本で一番社長の卒業生の多い日本大学に移ることになり、ファミリー企業研究をする決意ができました。当時、日本の経営学界においても、ファミリー企業経営の研究をしようとする機運が高まっていました。これまで経営学のメインストリームの先生方はファミリー企業経営を研究の対象とはされてこなかったのですが、2008年頃からファミリー企業研究への関心が大きく高まりました。2009年、小職もファミリービジネス学会設立に参画し、長らく常任理事、事務局として、微力ながら日本のファミリービジネス研究に貢献することができたものと自負しています(現在は理事)。本年6月、『ファミリーガバナンス』を同僚の加藤先生と編著者として中央経済社より発刊でき、一つの大きな区切りとなりました。

最後に、本年4月より研究科長を兼任頂いている、川又通信教育部長に御礼を申し述べたいと思います。大学院と昨年からお世話になっている通信教育部の教職員の皆さんにも御礼を申し述べたいと思います。大学院と通信教育部の益々の発展を心より祈念いたします。




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