成長の喜びと感謝の2年間を振り返って

国際情報専攻 20期生・修了  砂川 雄一

大学院国際情報専攻経営・経済コースで学ぶことになったきっかけは、前職での先輩の大橋さんからのお誘いでした。学部卒業後は、商社勤務を経て水産物の流通や食品製造などの仕事に携わって参りましたが、大学院に進学しなかったやり残し感や、仕事に必要な水産物や経営の専門知識を生噛りのまま済ませてきた自分への焦りを感じていました。

大学院に入学し、改めてこれらを学び直す機会を持つことに大きな魅力を感じましたが、その一方で仕事と学業が本当に両立できるものなのか、どちらかが疎かになるのではないかとの心配もあり、入学については大いに逡巡しました。数年前に経営体質の強化を図るため、長年の懸案であったグループ会社の経営統合と事業再編を行ったことから、出身会社の違う社員達のベクトルを合わせつつ、日々直面する様々な課題を待ったなしに解決する必要があり、ことさら仕事へ費やすエネルギーや時間に影響を与えてはいけません。

しかし、組織の中での重い責任を果たしながら、大学院を修了された階戸先生と大橋さんの体験談をお伺いし、学びを通じて仕事でより良い結果を得たというお二人の励ましによって、清水の舞台から飛び降りるような気持ちで入学を決意しました。

このような背景から、履修科目については企業経営に関する教科を選び、論文については日本の水産業の競争戦略に関するテーマとしました。

履修科目については、どの科目も実際に自分が仕事を通じて習得した断片的な知識を補完、整理する素晴らしい内容のものでした。学習と並行して業務の上で日々発生する課題解決へすぐに活用できた知識も少なくありません。レポート添削を通じたオンライン授業であるため互いに顔は見えませんが、先生方の教育への情熱とお人柄が滲み出る丁寧なご指導で、対面授業に対するハンディを感じることは一切ありませんでした。 また、指定教材はもとより、どの参考図書も質が高く、在学中に全てを読み切ることはできませんでしたが、修了後の楽しみとして全て購入しました。

論文作成では、思いのほか苦戦しました。自社が属する水産業界の競争戦略をテーマとしましたので、当初論文作成のハードルは低いと考えていました。ところが、いざ論文づくりに着手すると、先行研究や仮説を論証するための各種統計・データ・文献を集めるだけでも大変な作業であることに気が付きました。また、研究の対象も当初考えていた水産業全体では範囲が広すぎて、散漫な内容となってしまいます。そこで階戸先生から頂いたアドバイスに基づいて、研究の対象を水産業全体ではなく、その中核的産業のひとつである水産加工業に絞り込むことにしました。

テーマが決まると、次は各種統計・データ・文献の読み込みと記述です。30年前の学部生時代の環境と違って、図書館に行くことなく、世界中の論文や統計、データをインターネット上で容易に入手でき、また必要な書籍をAmazonなどで手軽に購入することができるようになったことは、大きな助けとなりました。

それでも資料の読み込みには、予想をはるかに上回る多くの時間が必要となりました。ひとつひとつの事象には、その背景や関連事象があり、更にそれらの情報にもそれぞれ背景や関連事象があります。なぜそうなのかという疑問を解くために、背景や関連事象を次々に掘り下げ、その答えが見えてくるまで思考する過程に思いのほか多くの時間がかかりました。

業務時間外で作業するため、作業を本格的に始めると、週末は勿論のこと、平日の夜間・早朝・昼休み・移動中の隙間時間も資料の読み込みと、思考、記述の時間に充てることとなり、ノートパソコンを抱え込んだまま寝込んでしまい、翌朝ワードの文章が意味不明の文字で埋められているようなことも幾度となくありました。

しかしこれらの作業は、決して苦痛ではありませんでした。資料の読み込みや思考を通じて、次々と新たな気づきや発見が生まれ、次第に論文作成が冒険のような楽しい作業となりました。その結果、当初描いていた論文のシナリオや結論は、作業が進むにつれて変化を続け、総ページ数は当初の予定から2倍近い100頁を越えるまでに膨らんでしまいました。

論文作成を振り返ってみると、当初の目的であった仕事に必要な商品や経営の専門知識を習得するということ以上に大きな成果がありました。ひとつは、時間が無いと諦めていたことであっても、本気でぶつかればやり遂げられる自信が出来たことです。そしてもうひとつは、日本大学大学院の素晴らしい先生方、ゼミ仲間達と知り合うことが出来たことです。

末筆ながら、指導教員の階戸先生をはじめ、ご指導下さいました全ての先生方、階戸ゼミの諸先輩方・クラスメイトの皆様には、2年間大変お世話になりました。この場をお借りして御礼申し上げます。また、大学院進学に賛同し、家事の全てを引き受けて、論文作成に集中できる環境を作ってくれた妻と家族に心より感謝します。2年間の大学院生活でお世話になった全ての皆様、有難うございました。




≪ 大学院HPへ | TOPへ ≫