修士論文奮戦記  −濃密な2年間を振り返って−

国際情報専攻 18期生・修了 林 一将

 日本大学大学院総合社会情報研究科の一員になり2年間、ひたすら修士論文執筆のためにすべてをささげてきた、というとまったくのウソになる。いろいろなことがあった。迷走した時期もあったが、しかしすべてが有意義であり、またこれまでの人生で、これほど濃密な2年間はなかったと確信している。ここでその2年間を振り返り、私の修士論文への取り組みを、簡単ではあるがまとめてみたい。読者の皆さまの、何かの参考になれば幸いである。

 当大学院との出会いは、当大学院のとあるOBの方と、とある学会にて懇意にさせていただいており、そこでお誘いいただいたのがきっかけである。平成27年の5月のことであった。そのころ、自分自身の今後の研究の方向性、身の振り方等、様々考えを巡らせていた時期でもあったため、私にとって本当にありがたいお言葉であった。

 そして同年10月のオープン大学院に参加し、恩師となる階戸照雄研究科長と初めて面談し、その場で入学を決意。翌11月の入試を経て、そのまま聴講生のような感じで参加したころから、実質的に私の大学院生活はスタートした。
 といいながらも、当初は気楽に参加していたが、平成28年4月の入学を経て、本格的に研究活動を開始することとなった。修士論文は、私の職業そのものの分野である、地域金融をメインに据えようと考えていたため、当時設けられていた「地域金融機関経営コース」の科目を履修させていただいた。リポートでは、地域金融が置かれている状況や課題について、絶えず問題意識を持ちつつ取り組むようにした。

 私の研究スタイルをここで少し披露させていただく。私の場合、絶えずワードが使えるタブレットを持ち歩き、「朝活・・・出勤前の1時間(大学院入学前から継続、そして今も)」、「昼活・・・ランチの合間に(先生方からのコメントチェック、返信)」、「夜活・・・仕事が早く終わったとき」、「休日活・・・お気に入りのカフェで」と、空いた時間を利用し、取り組むスタイルであった。またゼミ出席のため乗車している新幹線の中や、滞在先のホテル、時間調整のため入ったカフェなどでも、まめにカタカタやっていた。いずれにしても、あちこちのカフェや出先が、主な私の勉強部屋であった。

 肝心の修士論文であるが、上記したとおり、地域金融をテーマに据えることは決めていた。しかし地域金融という素材を、どのように調理しようか長い間、思い悩んでいた。地域金融について、それまでに現況や課題等について、リポートで書きためてはいたし、地域金融に関して公表されている政府から出された文書類から、論文に使えそうなキーワードを抽出し、それらに関する様々な文献や論文を収集してもいた。しかし年が変わってからも、調理方法が決まらないでいた。
 ところが、である。その時は突然やってきた。忘れもしない平成29年2月、娘の大学受験の付き添いで滞在していた東京のホテルで、空き時間を利用して読んでいた新書に、まさに目から鱗の記述を発見した。あ、これだとひらめいた私は、論文の方向性について簡単にまとめ、階戸先生に電子メールで意見を求めた。すると先生からわざわざお電話をいただき、それで行こうということになった。調理方法が決まった瞬間であった。

 調理方法が決まればもうこっちのもので、一気に書き進めることができた、と書きたかったが、そんなに簡単ではなかった。
 上記したとおり、それまでに様々書籍や論文等を収集していたので、地道に、そして少しずつではあるが書き進めてはいた。M1の終盤からはゼミ長に就任し、いろいろと気を遣うことも増えたものの、何とかなっていた。しかし7月に、オープン大学院の実行委員長という大役を仰せつかってしまい、一気にストップしてしまった。そして10月のオープン大学院終了後は力が抜けてしまい、書き進めることはできてはいたが、立て直すこともままならないまま11月終盤を迎えてしまった。しかし12月初旬に、日本国際情報学会の全国大会で、修士論文のテーマに沿った内容で発表することが決まっていたため、そのころから一気にスパートを開始した。
 それからは、集中して書き進めることができ、初稿提出、副本提出、口頭試問、正本提出と、スケジュールに沿って進めることができ、私の修士論文への取り組みは一応の終焉を迎えた。

 正本の提出を終えたころだっただろうか、OBの方から修士論文の進捗状況を尋ねられた。終わりましたよ、とでも答えたのだろう。するとその方は、スッキリしたでしょ、ご苦労様、と言う。それを聞いて、正直驚いてしまった。あ、そうか、みんなスッキリするんだ、と。というのも、自分にスッキリ感はまったくなかったからである。もちろん、一仕事終えたという満足感はあったものの、それはスッキリとははっきり違うものであった。
 どうしたことかと思い悩んでみた。するとどうやら、研究への熱意がまだ消えていないらしい、ということがわかってきた。おー、そうか、私もまだまだ捨てたもんじゃないな、と(笑)。自画自賛も甚だしいが、一応本年度、引き続き研究生としてお世話になっているところをみると、まんざら嘘ではないのかもしれない。

 改めて振り返ると、2年間は本当にあっという間であったし、本当に充実していた。それも、恩師の階戸先生をはじめとする諸先生方、ゼミの仲間たち、OBの皆さま、そして当大学院のご指導、励ましのおかげである。この場を借りてお礼申し上げたい。引き続き、精進する所存である。ますますのご指導、ご鞭撻をお願いしつつ、筆をおきたい。




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