3度目の国際競技への参画
−アデレード(SA)、ニューヨーク(NY)、バンクーバー(C)、そしてシドニー(SYD) を顧みて−
国際情報専攻 4期生・修了 長谷川 昌昭

はじめに
 SYDとは、言わずと世界に知れた豪州の名港シドニー湾とハンガーブリッジ等で著名な港湾都市シドニーのことである。
 シドニーは女子マラソンの高橋尚子さんが同地のオリンピックにおいて、30キロ付近でサングラスを投げ捨て優勝候補の一角のリデアン・シモンとの一騎打ちにスパートをかけて、日本に初の金メダルをもたらしたことで日本人には好意的な印象をうけた地である。
 “Are you from Japan?”と諸処で声を掛けられた。自己の記録を気にかけるのは参加者の共通心理だが、それを上回る地元の歓迎ぶりが好印象だった。
 サブタイトルにあげた4都市はWPFG(World Police and Fire Game 世界警察消防競技大会、2において後述)の図上競技会が実施された都市であるが、ハンクーバー大会は、参加国の一部が当時のテロ情勢に鑑みて一部の競技の参加を直前にとりやめたため、当該競技は不成立となった。
 私が参加する予定だった競技が不成立となったため、世界一住みやすい都市として著名なバンクーバーにおいては盛大なる開会式参列や他の競技の参観となった経緯がある。特に氷上の格闘技と言われるアイスホッケーはその激しく激突する音と闘志に加えての応援合戦を目の当たりにすることが出来て稀有な想い出と土産話を得ることが出来た。
 そのような事情で、4回事前登録をしたが、参画は3回となった。アデレード大会での参画では、Acting DirectorとしてWPFGの一翼を担って日本選手団(14名)の登録・旅程・CIQ等々に約1年を費やした。

1.各国際競技の開催地と都市
(1) アデレード(SA)
 オーストラリアの南豪州首都アデレードでのWPFGのゴルフ競技参画
(2) ニューヨーク(NY)
 米国の最大都市ニューヨークはWPFGの10Kmクロスカントリーに参加
(3) バンクーバー(C)
 カナダ連邦のブリティッシュコロンビア州南西部にある都市で同州最大の都市でのWPFGの図上競技への参加
(4) シドニー(NSW)
 豪州のニューサウスウェールズ州のシドニーで毎年開催のシドニー・ランニング・フェスティバルである。私が参加した2017年は全種目(フルマラソンから10Kmや5Kmのファミリー・ランの5種目)の参加者数は33,000人で、海外からの参加ランナーは3,100名だった。
 コースは、全種目がシドニーの代名詞であるシドニー・ハーバー・ブリッジ(別愛称名ハンガーブリッジ)を渡り、フィニッシュは世界文化遺産であるシドニー・オペラ・ハウスの前庭と隣接する王立植物園入口(ファミリー・ファン・ランのみ)となっている。 大会の正式名称は「シドニー・ランニング・フェスティバル」である。 2018年大会は冠スポンサーの「ブラックモアー社」の名前がつき「ブラックモアー・シドニー・ランニング・フェスティバル」となる模様である。

2.WPFG(世界警察消防競技大会)とは
 発祥の経緯は、米国カリフォルニア州の一保安官であった方が、同一職種(法執行)に生涯を賭ける者同志の紐帯の絆を一層強固にして社会の安寧を保つため、職種特有の術技を競い、団結を強固にし、併せて国民に職業への理解と共感を深め、開催地への経済効果も狙おうと発案し、同州のサンディエゴで1967年に第1回大会が開催された。当時の参加は504人、16競技を2日間競ったのが嚆矢である。
 2007年初参加の際、私はActing Directorとして登録・旅程構築を担当したが、締切間際に、書類ミスが多く発覚し、faxやmailでは埒が明かず、事務局の米サンディエゴまで説明に乗り込んだ。その時の事務局次長がCathy Longwayだったが、その縁で以降のバンクーバーやNYでの好誼や未だにChristmas cardが届く。
 主催団体は1970年に米国内のNPOに発展し、2004年前回のスペインのバルセロナ大会は60種目、第12回目の今大会は49カ国、51種目、12日間、参加人員1万2千名、1兆2千億円の経済効果をもたらした大会に発展成長している。
 主要開催国は米欧豪で、日本は未開催、知名度も低いが、米欧豪では関心が高い。警察・消防・税関・入国管理官・森林警備官等々の法執行官のステータスの高さや信頼度を窺い知ることができ、次期開催地は米バージニアのファイアフォツクスからDC地区の模様である。
 競技種目は、拳銃競射、陸上・室内外競技一般で、トライアスロンや職種上独特のバケツリレーやホース展張や、通常競技のテニス、ゴルフ、レスリング、クロスカントリー等々と多彩である。
 参加資格は、やや厳格で同職種の現役と、円満退職・勇退後20年以内の健康な者だけ(途中退職や懲戒解雇者は排除される)で、現職者は当該官公署の写真付証明、退職者は退職官公庁証明又は組織認定団体の写真付証明が必須である。最後に競技中の受傷・他害行為は自己責任の同意誓約に署名し、参加資格認定授与と極めて厳格であった。
 参画するたびに、職種への信頼性と理解に畏敬の念と、法執行官の社会的貢献への高い関心と国民との紐帯の強さを感じ、大変有意義だった。
 2007年のアデレード大会の電マの記事が当時の都政の担当者の眼に停まり、オリンピック誘致の事務局からの接触があったことが過る。公式には日本警察消防スポーツ連盟が認定機関の認証をえているものの知名度はやや低いのも実態でもある。

3.今次の参加競技
 2017/9/17開催のシドニー・ランニング・フェスティバルに参加した。公式記録は(Truly run Length 5,798mで51.51)だった。私は前記のハンガーブリッジでの記念・記録写真を忘れて反転したことで都合同橋を3回も走り4Kmのところを5,798m走った記録だった。
 橋の傍からのスタート地点では、Qantas Airの関係者と再会して一緒に歓談・事前情報の収集に努め、大勢の参加者に交じって大混雑の中でのスタートとなった。時間を競うよりも参加に意義を感じる種目で世界の仲間と著名な橋を渡り、ゴールは世界遺産のシドニー・オペラ・ハウス傍の王立植物園際だった。同地点では雑踏警戒中のシドニー警察のゴール地点警戒陣との記念撮影と公式写真も善い旅の思い出となった。
 つまり、記録よりも将にファミリー感覚の競技種目であり、国際競技参加への一里塚との感覚での参加者が年々増加していると伺った。同地は南半球なので季節は逆でも、時差が2時間程度でその負担も少ない感触である。
 世界で2番目に大きな橋は、その頂上へは2度登頂したが、その360度の展望に勝るとも劣らぬ景色がゆっくりと味わいながらの走りは、達成感と自己身体への自信を同時に享受することが可能な競技であるので、是非学びの途中の気分転換に推薦するものである。加えて、時折テロ事前検挙が報ぜられるが、ハワイとともにマスシューティングの無い地でもある安寧が参加者増に結実するのが、現下の世界の課題と看取した次第である。

終章に替えて
 自己発信の資料が検索されることは、在院生として科目履修生を継続中の身では、真に良質な読み物をと推敲を重ねレベルアップの決意を一層新たにした。
 編纂の諸先生方への負担を減らすべく時流に添った、そしてニーズの高い内容が検索されるとの認識を新たにし研鑽継続中である。

  “機会はどの場所にもある” オウィディウス


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