修士論文奮戦記
文化情報専攻 17期生・修了 大川たかね

1.はじめに
 私が当大学院への進学を希望した理由は、社会人学生向けに通信で授業を行っていることにあった。仕事を続けながら受講し研究ができるのは、非常に魅力的であり、子育てをほぼ終え、気持ちと時間に多少の余裕ができた身には、勉強と仕事と家庭の両立(?)は可能ではないかと考えていた。しかし、入学後すぐ、それが安易な考えだったことに気付かされる。非常勤という立場ではあるもののほぼ毎日仕事をしている私が、期限内にリポートを提出できるのか。修士論文を書きあげることができるのか。30年ぶりに学生になり、PPTの使い方も分からなかった私の入学後の正直な気持ちは、「無事に2年で卒業したい」、それだけであった。

2.奮闘して気付いたこと
 修士論文に奮闘して気付いたことを2点記したい。「こんなことは言われるまでもなくわかっている」と言われそうであるが、一人の体験談として読んでいただけると有り難い。
 1点目は、修士論文につながる準備を早くからすると余裕を持って執筆に臨めるということだ。準備は科目登録から始まった。研究内容に関しては、知識もある程度あり、具体的ではないものの自分の中にイメージがあったが、必要な調査の手法やその処理の仕方、結果の見せ方などの知識がほとんどなかったので、1年で調査分析特講と統計基礎の授業を選択した。調査分析特講の授業では研究に用いる調査紙を作成し、統計基礎の授業では調査結果の処理の仕方を学ぶことができた。また、1年次に取れるだけの単位を取得し、2年次に選択する科目のリポートの準備を、1年次のリポート提出後から始めた。これにより、2年次の論文執筆に多くの時間がさけるようになった。2年次に時間的余裕を作ろうとしたのは、私が時間のプレッシャーに弱いという自覚と、論文追い込み時期の12月に娘の結婚式が行われるという家庭の事情があったからである。実際には、娘の体調不良による実家療養や引っ越しなどが重なり、9月から12月にかけて論文どころではなくなるのだが、それを切り抜けられたのも早目の準備のおかげであった。 もう一つの必要な準備は多くの論文を読むことだったが、この点では出遅れてしまい、論文的な組み立てや表現などに対する指摘を、保坂先生から何度もいただくことになり、先生の手を煩わせてしまった。何度推敲しても、多くの論文を読みこまない限り、なかなか問題が改善されないことに気付かなかったのである。
 2点目は、ゼミでの発表を通して多くの気付きが得られるということだ。保坂ゼミではピアラーニングを行っている。授業でも学生のリポートがマナバにアップされ、それに対しコメントをする機会が与えられる。最初はコメントを書くことを躊躇していたが、コメントをもらうことで多くのことに気付き、よりわかりやすいリポートにつながることを学んだ。修論の発表も同様で、途中経過や一部を発表することにより、自分の主張が整理され、コメントを頂くことで新たな見解を得ることができた。また、ピアラーニングを重ねることで、自身の原稿を客観的に批判的に読む力がつけられた。最後は自分で推敲を進めるため、その能力をつけることは大切だと実感している。

3.おわりに
 早目に行動したことから、2年次は比較的時間に余裕があったが、早く始めた割には、結局1月まで推敲を重ねていた。「2年で卒業」を目標に始まった学生生活だが、その内容は期待以上であり、「充実」という言葉では言い表せないほどの、学びの詰まった濃い2年となった。これはひとえに、保坂先生をはじめ、松岡先生、他の先生方のあふれる知識ときめ細かいご指導のおかげだと感謝している。さらに、ゼミの仲間、先輩、ゼミを超えた同輩に恵まれたおかげである。この場を借りて、皆様に心から感謝申し上げたい。



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