働きながら博士号
博士後期課程・修了 石井 竜馬
「働きながら博士号(Ph.D.)が取得できる」このフレーズは、当時複数の上場企業のコンサルタントとして事業に関わりながら、大学院のMBA講座を客員教授として担当していた自分にとっては大変魅力的なものでした。自分の人生にも一区切りつけようと「研究者」「教育者」として生きていくのか、「企業家」あるいは「政治家」としてチャレンジし続けるのか、逡巡していた当時、日本大学大学院総合社会情報研究科は、走りながら考えることのできる唯一のソリューションだったのです。決断したのは2013年の年明け早々。入学試験の直前でした。
ネットで検索した階戸先生に飛び込みで受験希望のメールを打ったところ、簡単な自己紹介文面だったにもかかわらず的確にアドバイスをいただくことができ、入学を決意しました。その後、大学の専任教授となる傍らでコンサルとしてのビジネスも継続し、多忙な状況下、博士課程の先生方、また事務職員の方々皆様がとにかくフレキシブルに、かつ私のモチベーションを維持するよう導いていただけました。
レポート提出につきましては、経営学分野で北米のMBAを取得していた私に対して、グローバリゼーションの進展の裏ではびこる貧困や格差の問題など、立ち止まって考えるヒントを与えていただけました。チャットのように先生と直接取り交わすメールは、気軽に何でも意見としてぶつけることのできる大切なツールとなりました。風呂上りや夜中に思い付いたアイデア、疑問点や意見をタイミングなど気にせず、先生にメールすることができます。担当の先生から深夜や早朝に発信される返信メールは示唆に富み、研究する意欲を掻き立てるものとなりました。個別指導とインタラクティブ性のある教育インフラが何にも増して価値として実感できました。
また、博士号取得のための研究進捗を報告する研究発表会のたびに、先生方は真剣に自分の研究課題に向き合ってくださり、ともすれば形式的になりがちな博士号取得プロセスは大変有意義な自己研鑽の場ともなりました。私の実務経験がネガティブに作用し、研究に対する固定観念となっていた部分も多々あったのですが、先生方との活発な議論を通じて修正されていきました。
同時に、博士号取得要件となる査読論文の提出など、所属学会等十分なインフラのない自分に対しまして、階戸先生は懇切丁寧に学会活動のイロハまでご指導くださり、大変レベルの高い教育指導をいただけたと感謝しております。後期博士課程在学中の3年目の夏には、3年間での修了にこだわる自分に対しまして、明確な到達目標基準を与えてくださり、博士論文執筆にはきわめて短期間ながら人生最大の注力をすることができました。
ITC全盛となる今の時代に、ネットインフラを最大限研究教育の現場に活用することは、これからの時代の趨勢であり、ビジネス教育はもちろん、全人教育にも親和性のある教育システムとなると実感いたしました。図書館で時間を掛けて文献にあたり思考の森の中でため息をつきながらも、ネットを活用し最新の情報を吟味する、これからの高等ビジネス教育の現場に大変有効に機能する仕組みと思います。
一方でリアルの世界で展開される「階戸ゼミ」は、さまざまな業界や経歴の持ち主が研ぎ澄まされた感性でスリリングに議論し、知識や知恵の習得にとどまらず、人間性を磨く大変良い機会となりました。多くの仲間と出会い、若いころの学部時代を髣髴とさせるような親友もでき、日本大学大学院総合社会情報研究科での博士号取得は自分にとってはかけがえのない財産となりつつあります。私にとって、博士号は、研究者としても教育者としても、あるいはビジネスマンとしても、人生の宝として、必ず有意義なものとなるであろうと確信しております。