博士論文奮闘記

博士後期課程・修了 橋本浩介

 2016年3月25日、博士(総合社会文化)の学位記をいただきました。
 2011年4月に、日本大学大学院総合社会情報研究科博士前期課程国際情報専攻に入学、2013年3月に、修士(国際情報)の学位が授与され、引き続き、2013年4月から日本大学大学院総合社会情報研究科社会情報専攻に入学し、このたび、博士の学位を得ることができました。
 博士前期課程と博士後期課程を合わせると、5年間になりますが、ご指導いただきまして、誠にありがとうございました。
@ 入学の動機
 そもそも、私が本大学院で研究しようと思った理由は、専門知識をより高めたいと思ったからです。
 私は、税理士をしております。しかし、私の専門知識は、国家試験の受験生時代に得たもので止まっており、クライアントの役に立つためには、専門知識をバージョンアップする必要があると感じていたところ、本大学院のことを知り、本学は通信制大学院として、地方に住んでいても研究していける仕組みが整っており、ここなら継続していけると考えて、本大学院に入学しようと考えました。
A 東日本大震災
 しかし、博士前期課程の入学試験の合格発表があった後、東日本大震災が起きました。この震災により、私も自宅に大きな被害を受けました。その様な状況で、研究をしていけるのか、そもそも研究をしていて、いいのだろうかと、迷っておりました。
 そのような中、指導教授の階戸先生から、心が温まるメールをいただき、入学辞退の手続きはせず、本学で研究することにしました。
B 博士後期課程への進学
 指導教授の階戸先生だけでなく、ゼミの先輩や同級生のみなさんは、人間性豊かな方ばかりで、また、いろいろな職業の方がいらっしゃいますので、それぞれのお仕事で得ている知見からのアドバイスは非常に貴重でありました。
 博士前期課程の修士論文を提出した際、博士前期課程の修士論文だけでは研究しきれなかったことを、もっと研究したいという気持ちが強くなり、そこで、博士前期課程の修士論文で研究したファミリービジネスについて、より深く研究したいと考え、博士後期課程に進学いたしました。
C アイディアノート
 博士後期課程に進んだ際、アイディアノートという胸ポケットに入る小さなノートを作り、研究に関して、目にしたことや、気が付いたことをメモして持ち歩いておりました。このアイディアノートの1ページ目に、「楽しんで研究しよう」と記入しておりました。
 博士後期課程では、博士前期課程において予想していたレベルをはるかに超える高い水準の研究成果が要求されていました。 そのため、途中、何度も行き詰まり、修了することができるのだろうかと不安な気持ちにもなりました。誰かに強制されて研究をはじめたわけではなく、自分自身が研究しようと決心して、研究をはじめたにもかかわらず、このこと自体を見失いようになってしまうときもありました。
 その様な時、このアイディアノートの1ページ目をながめて、奮起するようにしておりました。
D 博士前期と博士後期課程の違い
 大学の学部までの学習と大学院での研究の違いは、課題が与えられるのか、自分で選定するのかにあると思います。
 小・中・高・大学の学部までは、中間テスト・期末テスト・入学試験でも、与えられた課題を回答できるかに主眼が置かれているように感じます。このことは、税理士などの国家試験でも同様で、過去問を分析して、回答できる準備をどれだけやったかで評価されるような印象があります。これに対して、大学院での研究は、課題は与えられるものではなく、自分で研究テーマを選定するという点で大きな違いがあります。
 大学院での研究は、博士前期課程でも博士後期課程でも、論文のオリジナリティーの重要性、研究課題・リサーチクエスチョンの設定の重要性、先行研究の整理、定跡となる基本セオリーの用い方の重要性、リサーチアンサーへのまとめ方、残された研究課題の整理などの研究の基本は、共通していると思います。
 しかし、博士前期課程と博士後期課程の違いは、グローバルな水準の必要性と洞察力の深さにあると感じております。
 まず第1に、グローバルな水準の必要性とは、博士後期課程では、例えば、先行研究の整理にしても、日本の書籍、論文だけの整理では不十分であり、海外の文献をもその範囲に含めて整理する必要があります。博士後期課程では、博士前期課程とは異なり、グローバルな水準での貢献が求められるという点で、違いがあります。
 このことは、指導教授の階戸先生から、博士後期課程では、語学力が必要となると、博士前期課程の段階からお聞きしておりましたので、博士後期課程の入学試験の準備としては、英字新聞に毎日目を通したり、大学院入試用の英語の添削教材に取り組むなどして、コツコツと語学力をつけるようにしておりました。
 第2に、洞察力の違いがあります。博士後期課程では、学会での発表と査読付き論文の提出が求められます。博士前期課程でも、指導教授やゼミの先輩やゼミ生から、自身の研究について、ご指導いただきます。博士後期課程では、これに加えて、学会において、学会に所属する先生方から、さまざまな視点でのご指導をいただきます。学会の先生方は、みな、その道の専門家でありますから、自身の研究について、より深い洞察力が必要になります。
 以上のように、博士前期課程と博士後期課程は、自身の研究に求められる水準に大きな違いがあります。
 このような経験を通して、学ぶことの真の意義がみえたような感じがしております。
E まとめ
 東日本大震災を乗り越えて、博士論文の作成を終えることができたのは、まわりのみなさまのおかげでありました。先生方には、いつも適切なご指導をいただきまして、どうもありがとうございました。
 今後は、研究したファミリービジネスの知識を実務に活用するだけでなく、本学で学んだ研究に取り組む姿勢を仕事にも活かして参りたいと考えております。5年間、ご指導下さいましたみなさまに、改めて、御礼申し上げます。



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