忘れ物が戻りミラクルな邂逅感に浸る
−失敗からリスクリデュースを提言−
国際情報専攻 4期生・修了 長谷川 昌昭

はじめに
昨5月のSCIP国際総会参画の途上の失敗から教訓を提言するものである。
勿論、プルカードはNihon University GSSC Research student M.A.I.P.S.Eである。
港間で耳にする『日本の常識は海外では非常識』『羽田・成田CIQA通過後は外国モード』と自分と要請・講演や一昨年迄8年間に本邦初の創設、千葉科学大学危機管理学部での授業や本学のゼミ・研究発表の場で何度も表明した。
その本人の油断と不注意で委託品を善管注意義務不履行で占有を離れてしまった。
占有離脱物に対する法制・習慣を本邦と外国を比較検証する良い機会を得たことで今学期履修中の荒関先生の「安全学」の実体験機会に恵まれたことが唯一の救いである。

この失敗例は教訓構築の淵源と確信、本邦と海外の違いを念頭に生活化が如何に「安全学」が大事であるかを論考の上、教訓を提言するものである。
本邦と外国の占有離脱物に関する法制・習慣の乖離は、旅行案内書や海外安全書類は多く触れていない。海外旅行保険は物品の盗難・破損は対象内でも占有離脱物件は対象外の仕組みが現実である。
現実の警鐘は『米空港係員の盗み横行か』である。
マイアミで5年間に3万件抜取容疑で31人逮捕B、そのシナジー効果で我が品が戻ったと思うのは、あまりにも穿った思い込みでもある。

1 訪日外国人は「ミラクル!」と
一昨年都内の遺失現金33億円の内24億円は持主Cに返還されている。
この報に訪日外国人は「ミラクル」と言う。その証左は昨年、訪日客がハロウィーンで賑わう渋谷駅前交差点から少し離れた宇田川町交番のライブをTVで観た方も多いと思う。
『全財産入りの財布を落としてしまった。』と困惑した外国人に、警察官は財布の特徴を詳細に聴取、その外国人はやや不満顔の様子だった。
その結果は『先程、この財布を拾った方が届けに交番に参りました。これですか。』に歓喜。『ミラクル!』を連発、感激の落し主、本邦の遺失物扱いの世界に冠たることの証左である。
私は渋谷、銀座、秋葉原等々の盛り場や5・8・12月に成田・羽田両空港で遭遇の我が国への経済効果に寄与の場面かと我が目を疑う情景に出遭ったのである。
それは帰国直前の特定国の訪日客は自分の機内持込品を店頭に放り出しての暴買に熱中の光景で、観光立国の起爆剤でもあろうが。決して長続きせず、外貨持出しは自国の経済成長との関連で抑止策出現は時間の問題である。
訪日客「日本経済に影響力」とDは、一昨年の訪日客1,973万人+47,1%、消費額数兆円超と、この増加はアジア地域の経済成長と入国審査緩和策で訪日客増加が誘因、彼等は「品質が良い」との高回答は円安や消費税の免税制拡充も寄与し、この好機に国内企業は中高価格帯化粧品等の増産や販売方式を市中に空港型免税売店も出現した。
他方ニセコは特質の雪質の良さを豪州でアッピール集客に繋げていることを電子マガジンEでも指摘した。豪州の彼らは欧州より近距離と時差の少なさに治安の良さを挙げていたことが過る。昨8月から豪Qantasは成田増便や初の羽田豪州新就航で黒字化の報にも接している。

反面、訪日客受入態勢に課題もある。未だに訪日上昇機運はホテル不足や空港混雑化、マナー違いのトラブル増勢も指摘され、慎むべきは安易な規制緩和である。
既に欧米では観光客や移民増加・難民で治安崩壊や文化摩擦の事態への対処に人・物・金に貴重な地域連帯の崩壊の現出と言う歴史・地政学的教訓に学ぶことが不可欠である。
ネット登録の民宿紛いの宿泊提供の兆しは、旅館業法との兼ね合いと衛生や治安に生活習慣等の問題をクリアした上での調整が国際化へ道筋上の関門である。
私は以前から街角・駅頭で大きな旅具を抱え困窮中の訪日客には、’64以降救いの手を差し伸べている。F
  先日都営地下鉄で優先席を占領中の若い訪日客に忠告した。何とI'm thankful for your warning. By the way please, tell me a train to Higashi-shinshuku.と反応。Next station.と案内したところ、降車の際にHave you are nice trip!と告げたらYou too! と笑顔でドアー越しに盛んに手を振るスイス人観光客に逢った。
小江戸の川越駅頭では内図確認中の訪日客に探しあぐねている川越城址を示すとAppreciate!と米テキサスから30日間日本一周個人旅行の由。Bon voyageと返すとYou too! と何度も手を振った。

2 各国の遺失物件実態の一端
欧米の遺失物に関する法制と習慣の乖離を知り、知慮浅薄な自分に愕然。諸賢はご高尚のことと思うが、その一端を示した。
NY : 占有離脱横領罪:$20以上は差出義務.$10以下は無い。罰則$100以下の罰金6ケ月以下の懲役禁固で10年程前のNYC条例の由。
米首都DC : 差出義務は法定無く警察は取扱規定のみ、行政に拠る一元化のシステムは無い。
仏パリ:占脱横領罪の法条は無く、届出義務は社会規範として存在する。
英 : 遺失物法無し 警察職員の公務中のみに届出義務。

等々で前述の品の回復は無理と諦めていた。幸運にも多数の方々やDeltaの管理の善さで手元に戻り、邂逅感に浸った。

3 失敗から得た貴重な教訓
‘04に修了。爾来 研究生・科目履修生として隔年毎に繰り返し17年目を迎えた。本学は遭遇頻度のスパンの短い現況に鑑み「安全学」講座が時宜を得て創設された。
実体験を交え教訓を論考するものである。昨秋の院生の「機長と副機長の関係」中間発表は世界の輸送手段の大部分が航空機で、飛行の安全は機長と副機長の資質が大きい今、紀要にアップロードの際は本学へのシンギュラリティとなると確信するものである。

ハインリッヒ法則は、重大事故の背景に29件の軽微事故と 300件の小さなミスの存在が潜むと説く。
失敗→教訓「安心は人間の最大の敵である」シェークスピァはマクベスに言わせた。
忘れるのは人の常で、リスクリディュースこそは人類の叡智の危機管理たる「安全学」である。実行可能で有効な防止策としての習慣化を提言−海外旅行時−
(1)クロスチェックを忘れないこと
行動の節目に確認、励行、同行者の支援が不可欠「貴方忘れ物?」の一言で振り返る。
訪日客は電車で席を立つ時は、その目線は必ず自席を振返るのを散見する。
(2) 海外の法・習慣の特異性を認識すること
我が遺失物法は世界に誇れる文化と知った授業料は$60と10日間の憂鬱で、特異性の認識は不可欠、忘れ物以外にも総て自己責任の世界だ。『海外モード』に切り替える。
(3)本邦との遺失物行政の違いを知ること
本邦の国民の遵法意識に支えられ国民身近な警察行政として明治32年(1892)法定、連綿と120年の歴史がある。平19年(’07)に権利意識や新物件の発生・期間の変化等で改正、警察は適正運用を異例の52頁に亘る通達で過誤や瑕疵を防いでいる 。
警察を信用するから届けるを肝に!
(4)旅装具販売店も覗くこと
連結鎖(チエーンダイヤルロック)はヒッタクリ防止や忘れ物防止に効果的。
海外の到着空港で送迎バス遅延は頻繁にある。添乗員は団体客の耳と口に頭脳を海外では代行。言葉が通じないこと。このギャップに隙が生じる。
実例=目的地到着時の団体客24名の心理は到着の安堵感と期待に途中の空路の疲れで気が緩むのが常である。添乗員は遅延したバス会社に連絡に注力する。
この時に、携行荷物の監視に隙が出る。この隙を狙う置引犯が携行荷物に接近・移動を試みると当然団体客はザワックつく。添乗員は電話中に気が付き『触らないで』と日本語で、団体客は当然に荷物運搬員かと思う。
添乗員は通話を終わって振り返ると荷物は無い。「どうしたの?」『触らないで』と言われた団体客は『触っていません』と。先程の接近者は置引犯達で持去った。
でも 荷物を連結鎖で荷物を椅子に縛っていた2人は難を逃れた。
他の22名は持ち去られた。『触らないで』と言われたと茫然の団体客。
その2人は『到着空港と出発ロビーは荷物は自己責任で固定物に結束がベスト』講演受講済でした。

終章に替えて
一昨年都内の遺失現金33億円の内24億円は持主に戻りに訪日客は「ミラクル」と驚く。昨年4月に『米空港係員の盗み横行か』マイアミでは5年間に3万件抜取犯の31人逮捕の報道に接した。G
私は’02以降NPO JSCI日本代表でSCIP年次国際総会に夫婦で参画、親友には妻制作Hの木目込人形を日本文化の普及と永い友情の証として贈っている。
その品は何時も彼女自身の機内持込品、今度は私の持込品で深夜の羽田→ロス。客室乗務員(以下CAIと)は親切に機内持込品の人形3体の大きな私の包みを隣席頭上棚に収納した。飛行中は低気圧でやや揺れたが着陸はSilky landingと快適と降機時に見送る機長と談笑、大事な包みは忘れてロスで降機。乗継便でアトランタ向いその機中で思い出した。
大慌てでCA(Tony)へ「ロスで降機、乗換の際に大事な品を置き忘れた。」伝えると、彼は私に搭乗券の提示を求めそれの裏面に自署した。アトランタで降機の際は機長から届出をと念を押された。空港内のDeltaサービスに届けた。私は念のため係にCA と同様に担当のFox氏の自署を求めた。
驚きは、降機の時Tonyに投宿先を尋ねられた。長年の渡航経験でも今次の様な無様な出来事への遭遇は初めて、落ち込んでいた折に、『我が社で検索中』と宿に架電は驚きを禁じ得ない。SCIP学会参加者は「絶対戻らない」と。戻らないことに$30.-を賭けるとも言う方も居る始末で、落胆の心境に一層ガッカリさせられていた。欧米の文化・習慣の違いを思い知った。
学会後の5/14にアトランタ空港Delta顧客係F氏も検索中との由で、悲嘆に暮れて帰路に気分転換でハワイに寄った。


何と多くの方々の善意のリレーで帰国日5/19に『発見返送料は$60』のメールを受信した。
贈る筈の三体の人形(時価約10万円米価換算$1,500.-)は無傷で5/25自宅到着。
『顧客に選ばれるエアラインへ努力の継続中』と機内誌巻頭言に嘘は無かったことが実証された。
将に「ミラクル」でした。8月再送、9月に着荷と謝意のmailが届き都合 お人形達は都合3回太平洋横断の旅と言う稀有な経験を満喫した。


  「弊社を選んだ貴方には、期待の旅を約束する。」と機内誌巻頭言のDeltaのCEOと帰国便で「必ず戻る」と窮状を察し癒してくれたDL#579便Jamesa Stuart機長やCAのPatric,,Higashiと『米空港係員の盗み横行か』では5年間に機内からの3万件抜取犯の31人逮捕のマイアミ警察Mamual Orosa警察本部長へは謝意表明をしたところである。 


  M.Orosaは日大大学院紀要No,5をマイアミ図書館へ展示・収蔵Jの労を執られた方である。

私は自分が生まれ育んでくれた東京をこよなく愛する。訪日客へはミネソタナイスKの如くに最大限の支援を惜しまないことを信条にしている。これは本学へも同じ想いである。
つまり 日大大学院が何をしてくれるかではなく、自分が本学に何を残せるかである。
ケネディ駐日大使のご尊父John F. Kennedyのこの金言は忘れ得ぬ。
“Ask not what your country can do for you−ask what you can do for your country.”
昨秋 日本ビジネスインテリジェンス協会の24周年142回研究会で講演時に本学の入学勧奨資料を紹介。本2・3月は地元3市合同ロータリークラブと地元2市管轄の警察幹部研修で入学勧奨資料をと、後進の育成に聊かの寄与をと念じている。
修論の抜粋は依然GoogleのTop Rank Pageで ’14/6/11に同社Mr. Karim Temsamani 太平洋・豪地区副社長に”Great”と日経セミナーで賛辞を頂戴した。同日本法人Danny Tanaka販売部長に森ビルのセッションでも昨8/4「日大大学院の紀要と電子マガジンは凄い。」との賛辞に背中を押され生涯学習中である。


[引用文献・注]
A: Customer Immigration Quaratine税関・入管・検疫の各空港の出入国の際の関所の意
B: SA&D:日経平27.4.17,13版,7面’10-‘14全米で空港預入荷物から貴重品消えた3,621件250万$約2億700万円CNN報)
C: 平成 15.2.16「警視庁纏め」日経掲載
D: 観光白書2016.1.19閣議国交省発表
E: 電子マガジン56号「海外のスキー場」ニセコでサプライズをご一瞥
F: 電子マガジン38号「思わぬ反応−縁は異なもの」を朝日新聞の五輪特集班がググッって東京五輪物語の取材に自宅取材、27.4.12夕刊掲載
G: SA&D:日経平27.4.17,13版,7面、脚注Aと同件。
H: 古今流 真多呂人形教授 免許平13.5.1
I: Cabin Attendant (日系和製英語?) ・Crew .Flight Attendant(欧米・豪系)でSTEWARDESSは女性客室乗務員を、看護婦から看護師の歴史的変遷?でPurserも
J: 電子マガジン53号「日大大学院 紀要No5マイアミ図書館所蔵・展示」2013/9/10。
  ※同窓会Alumni What’ New 「日大電子紀要米フロリダ図書館収蔵」
K: 米中西部ミネソタ州は多くの湖(15,291)とミシシッピ川源流で多くの州民はこの土地をこよなく愛す、来訪者には最大親切で即応。
  車で道を尋ねると必ず「喉は乾いていませんか、トイレ?」と見えなくなるまで見送る姿が後映鏡に映るのを数回体験。州是である。
L: 2016.2.1現在も




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