修論奮戦記

文化情報専攻 15期生 桐ケ窪 牧子

 この原稿を書かせていただいているのは8月です。毎日暑い日が続いていますが,皆様お元気でお過ごしですか。この電子マガジンが発行される頃は少し涼しくなっているでしょうか。
前期課程二年目の方は,夏休みを利用して修論の執筆に本格的にとりかかる頃でしょうし,一年目の方は修論テーマを絞り込み,文献のリサーチをされているところかと思います。私も過去二年間を振り返りながら,修論完成までの道すじを書かせていただきます。

1 準備段階
  私の修論は,4年前に日本大学通信教育部で作成した卒業論文の継続研究でした。通信教育部で専攻した英文学と,もともと自分の専攻であった音楽を関連づけたテーマを想定していたのですが,その包含する範囲が広く,通信教育部の卒業年次に起こった震災等の影響もあって,当初の予定通り研究を進めることができず,卒論では基礎的な内容をまとめることで精一杯でした。
 そのようなわけで,通信教育部卒業後も研究を進めたいと思っていましたが,偶然参加した総合社会情報研究科の説明会で,竹野一雄教授のお話を伺うことができました。
 竹野先生のご活躍はキリスト教文学の書籍で私も目にしたことがありました。竹野先生は,ご専門である英文学ばかりでなく,私の研究テーマである音楽にも造詣が深く,この時直接お会いして先生とさまざまなお話をすることができ,また総合社会情報研究科のシステムについてくわしくご説明いただきました。私の修論の指導教員となっていただいた竹野先生には,総合社会情報研究科在籍の2年間だけでなく,現在もご厚意で研究についてのご指導,ご助言をいただいています。実際,竹野ゼミには,英文学ばかりでなく,さまざまな専門領域を持つ前期生,後期生,そして修了生の皆様が参加されています。私は宮城県に住んでいるため,東京で行われるゼミに参加することは難しく,最初はサイバーゼミで学習を続け,夏季合宿ゼミで初めて(やっと)面接ゼミに参加しました。面接ゼミでは,先輩方の様々な分野の研究の進め方や発表の方法を目の当たりにし,大変勉強になりました。
 また入学して間もなくは,仕事の繁忙期と重なり,論文作成のための参考文献も見つからず,なかなか修論にとりかかることができませんでした。夏休みに入ったと思う間もなく,前期科目のリポートの締切が迫り,何度も修正稿を提出することとなりました。それでも,各科目担当の先生方から,書式も含めたていねいなご指導をいただき,それらの学びから新しい視点を与えられ,修論作成にも大変役立ちました。そして1年目の文化情報論特講のスクーリングでは,松岡先生や講義された先生方からお励ましの言葉をいただき,自分の研究の方向性に迷いもありましたが,大変勇気づけられました。

2 参考文献との出会い
  基礎的な文献は,通信教育部の頃に入手していたのですが,入学当初はテーマに合致する先行研究が見つからず,時間があれば書店を覗いたり,インターネットで検索したりして資料や文献を探しました。研究を進める参考文献として,最初の大きな出会いは,J.Wordsworth著,The Music of Humanityでした。研究テーマに合致する文献ということで,インターネットから内容も確認できないまま購入したのですが,研究を進める上で大変貴重な基礎文献だということがわかってきました。当時Amazonから2,000〜3,000円台で入手したと思うのですが,数か月後にネットで価格を見ると,著者のサイン本であったこともあり,価格が数十倍になっていて,もう入手は難しかったので,本当に良いタイミングで入手することができたと思います。
 もう一つの文献との出会いは,日本大学の図書館のネットワークからでした。音楽に関する資料ということで,最初は芸術関連の各地の大学図書館をリサーチしていましたが,年代の新しい,専門的な英語文献はなかなか見つかりませんでした。手持ちの資料から参考文献の項を読み込む中で,イギリス文学と諸分野に関連したシリーズを見つけ,ふと思いついて総合社会情報研究科の学生用ホームページから「図書館」にアクセスしたところ,日本大学商学部の図書館にこの100冊以上にわたるシリーズが,ほぼ完全にあることがわかりました。さっそく商学部図書館に連絡し,日本大学大学院む総合社会情報科の学生であることを伝え,この図書館を大学院生として利用できることを確認し(蔵書を借りることもできます),実際に何度か通ってこれらの文献を調べたところ,特にイギリス国内のこの分野に関する近年の研究成果がわかり,修論作成の大きな前進となりました。この図書館ネットワークはさすが日本大学ならではと思わされました。たった2年の在学中に,修論作成のために必要な参考文献をすべて入手することは難しく,航空便でも専門的な書籍は取り寄せに時間がかかり,出版元に在庫がないことも考えられます。文献をお探しの方はぜひ日本大学の他学部の図書館もていねいに検索し,利用してみることをお勧めします。

3 サイバーゼミの活用
 先に記したとおり,私は地方在住で,仕事の都合もあり,東京で直接指導を受けることは難しかったため,サイバーゼミにはできるだけ参加するようにしました。最初は先輩方の研究を聴くだけで,その内容にただ圧倒されていましたが,その中で先輩方が,中間発表,学会での発表のリハーサルの場としてサイバーゼミを活用されていることに気づき,とにかく少しずつ断片的に修了研究の内容を発表してみることにしました。結果的に,それらの内容が修論の一部となっていったのですが,ここで参加者の反応から意外なことに気づきました。それは,この総合社会情報研究科の特徴として,研究がさまざまな専門分野にわたるため,自分の研究分野では基礎的と思っている知識も共通理解が難しいということです。わかっていると思われることもていねいに説明することを心掛けておくと,修論完成後,他の分野をご専門とする複数の先生に試問を受けるときに大変役立ちます。もう一つは,自分の研究が客観的な視点から耐えられるかどうかについても考える機会をいただいたと思います。
 修論そのものからは話がそれますが,サイバーゼミの近況報告,情報交換では科目リポート作成についてのアドバイスを先輩からいただくことができ,とても助かりました。

4 修論作成までのスケジュール
 おおよその修論作成の日程です。(日程は多少前後しているかと思います。)
2013.4月入学式,ゼミガイダンス
5月修論文献リサーチ(書店,インターネット)
6月先行研究資料The Music of Humanity購入(Amazonにて)
8月合宿ゼミ:修論アウトライン発表 ※前期科目リポート作成
9月修論面接指導:竹野教授より(市ヶ谷),論文の構成について
面接ゼミ:文献The Music of Humanityについて発表
修論に関係する音楽作品,楽譜の購入(アカデミア店頭にて購入)
10月中間発表聴講 ※後期科目リポート作成(〜1月)
11月サイバーゼミ発表:音楽作品The Nocturneについて
※冬季スクーリング参加
12月サイバーゼミ発表:Ode ; Intimations of Immortalityについて
2014. 1月サイバーゼミ発表:WordsworthとMetastasio
4月面接ゼミ発表:G.Finzi作曲Intimations of Immoralityの楽曲分析
竹野先生に修論要旨の提出,章立ての確認
日大商学部図書館にて文献リサーチ,読み込み
5月面接ゼミ発表:Wordsworthの詩に付曲された音楽作品
日大商学部図書館にて文献リサーチ,読み込み
サイバーゼミ発表:Wordsworthの詩に見られる音楽的比喩
6月サイバーゼミ発表:Wordsworthの音楽観
7月サイバーゼミ発表:Wordsworthと音楽 ※前期科目リポート作成
8月合宿ゼミ:W. Wordsworth; Lyrical Ballads序文について発表
日大商学部・法学部の図書館にて文献リサーチ
9月サイバーゼミ発表:中間発表原稿 ※前期科目リポート提出
10月中間発表(市ヶ谷)
11月日大文理学部図書館にて文献リサーチ ※冬季スクーリング聴講
修論草稿提出(全体の1/5程度) ※後期科目リポート作成
12月サイバーゼミ発表:Wordsworth初期の詩
修論執筆
   ・通信教育部の卒論の日本語訳を第1部として書き直す
   ・サイバーゼミ発表資料を加筆,第2部・第3部に
(通信教育部での指導教授にも草稿を送り紙面で指導を頂く)
1月英文要旨の作成 竹野先生に修論提出 ※後期科目リポート提出
修了論文試問(市ヶ谷)…サイバーゼミにて予行練習
2月正本提出 (3月面接ゼミにて報告)

おわりに
 あくまでも個人的な内容で恐縮でしたが,ここまで私の修論作成のエピソードを紹介させていただきました。ゼミの発表や草稿提出時には,毎回竹野先生にていねいなアドバイス,ご指導をいただき,研究室の蔵書もお借りすることができました。また竹野先生に許可をいただき,通信教育部でお世話になった指導教員の先生に草稿を郵送し,内容をチェックしていただいたり,ゼミの先輩方のアドバイスや,ゼミの同級生が提出前の修論草稿をメールで送ってくださったものも参考にさせていただいたりと,たくさんの方から助けていただき,何とか期日までに修論が完成しました。現在は仕事の傍ら,少しずつ修論の内容を補足,検証して,今後機会を見て発表もしていきたいと考えています。
 現在修論執筆中の皆様,修論作成までの道のりは,実際とても大変ではありますが,楽しみながら,進んでいっていただけると良いと思います。健康に留意され,この夏を乗り切ってください。皆様の研究のご発展を祈りつつ。



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