亀田尚己、清水利宏
『すぐに使えるビジネス英語スピーチ100』
研究社(2014)
博士後期課程 13期生 中嶋 千秋
語学ビジネス系専門学校に勤務している立場では、英語スピーチ指導は切っても切り離せない関係にある。当然のことながら毎年ホールを借りて校内スピーチコンテストがあり、また年末には全国専門学校英語スピーチコンテストが行われ、勤務校の代表が毎年上位の成績を収めている。コンテストに限らず、就職活動の英語面接の対策授業があるのでやはりそちらでも一分間スピーチなどを指導することになる。そのようなときに、一番困るのは〈使える〉参考書の少なさだ。英語スピーチの本は数多く出回っているが、なかなか「これだ!」と思えるものに出会わない。
しかし、この『すぐに使えるビジネス英語スピーチ100』を手に取ったときに、「これだ!」と感じた。著者は、亀田尚己氏と清水利宏氏。清水氏はGSSC修了生。また、本学教員の近藤大博先生が主催されている日本国際情報学会の理事も努められている。また、亀田氏は日大商学部ご出身で、日大コラボと呼べる一冊である。お二人とも現在は関西の大学でそれぞれビジネスコミュニケーション、英語スピーチを指導されており、この本にもお二人の豊富な知識と経験がぎっしりと詰まっていて、学習者だけではなく指導者も必読である。
本は二部構成になっており、「上達の秘訣」と「モデルスピーチ」に分けられている。「上達の秘訣」は目から鱗が落ちるようなスピーチのコツが30項目紹介されている。話の三層構造、言葉は絵筆、簡単レトリック・・・といった魅力的な見出しに釣られてするすると読み進められる。まるで著者お二人の授業を聴いているかのように。スピーチの着想から構成、語句の選び方、まとめ方、発音やジェスチャーまで、スピーチに必要なあらゆることが詰まっている。とても濃い内容であるにも関わらず読みやすいのは、それぞれの項目の中できちんと情報が整理されているからであろう。「ビジネス」と名前がついているが、このセクションはあらゆる英語スピーチに活用できる内容だ。
また、タイトル通り100本も収録されているモデルスピーチ。お祝い・歓迎・答礼・営業・紹介・記者発表・お別れ等々、ビジネスのあらゆる場面を想定しており、それも社内向け、社外向け、それ以外と分類されているので、自分の目的に適うスピーチを探しやすい。「本社から海外視察に来た役員を迎える」「新規営業先でプレゼンテーションを始める」「ネットでの顧客情報流出を謝罪する」「部下の結婚披露宴で祝辞を述べる」「子供が通う小学校で日本を紹介する」・・・国際ビジネスパースンの〈痒いところに手が届く〉きめ細かなシチュエーション設定である。また、モデルスピーチのひとつひとつにアドバイスやコツが散りばめられ、更にブレスの位置まで細かく指定してあり、まさに至れりつくせり。巻末には目的のスピーチがすぐに見つけられるクイック索引まで添えられている。著者お二人の熱意と工夫が伝わってくる本だ。普段、英語スピーチやコミュニケーションで悩んでいる人は、「こんなスピーチ参考書が欲しかった!」と思うこと間違いない。