やっと登山口にたどり着く

文化情報専攻 14期生 落合 貞夫

 修士論文の作成については、入学試験のときに「研究計画書」を提出しているので、大まかな構想と計画は立てていると思う。結論部分もまだ明確ではないにせよ、おおよその概要はぼんやりと見えているのではないだろうか。
 1年次の課題としては、文学作品の場合、一次資料と先行研究の解読をすすめることが中心になるだろう。資料の収集に努め、関係文献や論文はできるだけ早めに入手して、読み込んでおく必要がある。この1年次に、研究対象をできるだけ深く分析し、自分としての考察と解釈をすすめたい。先行研究の到達点をふまえて、それを批判的に発展させたり、新たな観点が発見できればとても大きな成果である。
 とはいえ、思ったように順調に行かないのが人生の常である。1年次にやっておきたい課題は、正直言って不十分にしか出来なかった。私は1年次に4科目の授業を取得したが、どの科目もずっしりと重い課題ばかりで、レポート作成に明け暮れる毎日が続いたからである。5月から12月までの約8か月間で16本のレポート提出は、月にすれば2本、だいたい2週間に1本というペースであり、私にとってはきつい難行であった。しかし、苦心して書いた最終原稿を送信したときは、何とも言えぬ喜びと達成感で心が満たされた。
 1年次は、レポート作成で労力を取られたため、修士論文に手をつける余裕はほとんどなく、年末頃からあせりを感じはじめた。私の研究対象とした文学作品は、まだ日本語訳が出ておらず、批評論文も英語文献が中心であったので、私の拙い英語力での翻訳作業は、遅々として進まずますますあせりを感じた。1日に2〜3ページしか翻訳できない場合もあり、これで修論完成までたどり着くことができるのだろうかと絶望しかけたときもあった。
 私の所属した松岡ゼミでは、2年次の4月に修論アウトラインの提出、7〜8月に執筆して第一草稿の提出(9月)、中間発表会(10月)を踏まえて書き直した第二草稿の提出(11月)、さらに訂正、補筆を加えて最終稿提出(1月)というスケジュールが示された。この予定表に合わせてやっていくしか道はないと思い、スケジュールどおりに執筆をすすめることを目標にして、何とか完成まで漕ぎ着けることができた。
 修論は一人で書くものだが、先生からの貴重な助言、学友からの意見、感想などの支援があって完成できるもので、ある意味ではゼミの共同作業という側面がある。そうした機会を与えてくれたのが、毎月のサイバーゼミであり、軽井沢の夏合宿であり、秋の中間発表会であった。私の場合、2年次からは毎月必ずサイバーゼミに参加して進捗状況を報告することを軸にして進めたのが良かったと考えている。
 振り返ってみれば、アーサー・ミラーを研究しようと思い立ち、まず日大通信教育部の英文学専攻に編入学したのが2008年9月であった。それからすでに5年半を経ているが、修論を書き終えた現在、私のミラー研究は登山にたとえれば、やっと登山口にたどり着いたところだと感じている。
 末筆ながら、丁寧にご指導してくださった松岡教授ならびに貴重なご意見をいただいた学友諸氏に心から感謝を申し上げる次第です。



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