修士論文奮戦記

国際情報専攻 14期生 小原 隆子

 博士前期課程の2年間、日本大学大学院総合社会情報学科に籍を置きました。私は長崎県在住ですが、遠隔地に住んでいても通信制で修士課程を履修できることに魅力を感じ、総合社会情報学科に入学しました。階戸照雄先生のご指導と、階戸ゼミOB・OGの皆さんからのアドバイス、そして、同期の仲間に支えられて、無事に修士を修めることができました。これから修士課程に進まれる皆さんの参考になるように、修士課程1年目のレポート作成、2年目の論文執筆に際して実践してよかったこと、2年間を通しての心がまえ、以上3点について、私自身の体験から学んだことをご紹介します。
 まず、修士1年目は本来なら研究計画に基づいた先行研究、資料集めなど論文の準備にあてたいところですが、実際のところ、履修科目の課題レポートの作成に追われて過ぎていきます。前期に各科目2本ずつ、後期も同様です。5科目履修した場合、1年目は2×2×5=20本のレポート作成となります。考えただけでうんざりする数ですが、ここは気持ちの切り替え時です。ポイントは、目の前の課題レポートを自分の修論の一章、一節の「種(たね)」にすべく、修論の研究テーマを念頭において作成すること。私が履修した「グローバル経営戦略」「アカウンティング」の課題では、「1社以上の日本企業を選び論述せよ」とありましたので、修論テーマである航空会社を事例としてレポートを作成しました(各2000字程度)。提出から1年後の修論作成時に、この2000字の「種」を論文の一部として活かすことができました。たかがレポート、されどレポートです。せっかくの努力を無駄にしないよう、あとで役立てることを考えれば、おのずとレポート作成にも力が入るでしょう。また、後に修論に活かすことを念頭におくならば、レポート作成の際の参考文献も、新聞、雑誌、一般書からの引用に加え、学術論文、学術本からの引用を多くすれば、論文らしい体裁が整います。
 次に、2年目の論文執筆に際して実践してよかったことは、スケジュールの公表です。通信制である上に、遠隔地に住んでいるため集合ゼミに参加できず、先生やゼミ仲間から「論文、進んでる?」と言われるような外圧がない状態でした。ストレスがない反面、自分で自分の論文執筆スケジュールを管理する必要がありました。そこで、修士2年目のサイバーゼミから、発表用のパワーポイントに「修士論文作成スケジュール」(表1)ページを挿入し、階戸先生を含めゼミ参加者に論文の進捗状況と併せて報告することにしました。

表1 修士論文作成スケジュール
2013年7月15日論文初稿執筆(全体の30%)
7月23日課題レポート初稿提出
8月15日論文初稿執筆(全体の60%)
8月31日論文初稿執筆(全体の100%)
9月15日論文初稿を階戸先生へ提出
先生のコメント反映、追加訂正作業
10月12日修士中間発表
追加訂正作業
12月20日修士論文最終稿を階戸先生へ提出
12月21日面接試問リハーサル(市ヶ谷)
2014年1月10日修士論文(副本)を事務局へ郵送
1月25日面接試問(市ヶ谷)
出所:2013年6月29日サイバーゼミ資料より筆者作成。

 このスケジュールはあくまでも「予定」ですが、あえて公表して他人の目にさらすことで、自分自身に対してスケジュール厳守のプレッシャーを与え、タイムマネジメントの意識を高めることに成功しました。また、修論執筆に際し、初稿から最終稿に至るまで階戸先生にご指導いただくため、先生にはご多忙な中、貴重なお時間を割いていただかなければなりません。階戸先生に前もって提出スケジュールをお伝えすることで、「小原はこのあたりに原稿を送ってくるらしい」と心の準備をしていただく意味も含め、お忙しい先生のご負担にならないよう心掛けました。
 最後に、2年間を通しての心がまえを2つ。まず1つは自分に厳しく。特にスケジュール管理と体調管理を徹底することです。日々の労働に研究生活が加わることで、精神的にも肉体的にも疲労が蓄積されます。「まだ締め切りまで時間があるから」と、課題レポートを先延ばしにすると、締め切り間際に徹夜で仕上げることになります。1年目に最高5科目、10本のレポート作成で無理を続け、疲労困憊、体調不良、予定をさらに先延ばし、という悪循環に陥るのがよくあるパターンです。この悪循環を避けるためにも、スケジュールを前倒しし、時間に余裕をもたせ、無理のないようにすることが大切です。体調管理という点では、10月になったらインフルエンザ予防接種をうけるぐらい用心深くなりましょう。時間と体の管理は自分自身でコントロール可能なリスク管理なのです。
もう1つは、自分を甘やかすこと。前述の「自分に厳しく」との合わせ技ですが、2年間の長丁場を乗り切るためには緩急をつけることも大切です。私は旅行が好きなので、「レポートを早く提出したら、旅行に行ってよい」というマイルールを作り、韓国、上海、パリ、ロンドンに行く計画を立てて、レポート作成の動機付けにしました。おかげで、ゼミ内では「最速提出の小原(内容はどうであれ)」という評価をいただき、私にとって「甘やかしがモチベーションを高めるのに有効である」ことが立証できました。
 上述のとおり、試行錯誤しながら2年間の修士生活を過ごしましたが、論文を提出し終わるとあっという間の出来事だった気がします。これから2年前に戻ってもう一度やり直すことができれば、もう少し出来のいい論文に仕上げることができたのではないだろうか、そのような後悔と欲があり、地元の大学で研究を続けることを決心しました。階戸先生をはじめ日本大学大学院の先生方と階戸ゼミの皆さんとの出会いで、2年前には予想もしなかった新しい人生に踏みだすことになりました。これから修士生活を始められる方も、2年間を通して新たな発見をし、素晴らしい未来が広がることを心より祈念いたします。



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