歴史上の教訓抽出の継続は人類の英知
―不作為の戒め―

国際情報専攻 4期生・修了 長谷川 昌昭

S-11・アルジェリア事件・対応の遠因は意識的不作為

はじめに


本学の総合社会情報研究科において国際情報学を体系的で学術的にも汎用性の高いものを学ばせて頂いた一人として以下に具体例を示しつつ、当大学院はインターネットを駆使した大学院の嚆矢として他は見られぬ高い汎用性と生涯学習性を兼備していることを研究・渉猟の継続の場で、最近の事象に絞り問題点を探求、提言論考をするものである。ここに示せるのは’02入学面接試験以降の諸先生始めとして院友のお陰である。加えて 事務課スタッフにヘルプデスクにも急場を幾度か救われた。

情報処理技術科目では情報爆発現代の必須学科とし継続中、長年に亘り担当の先生には親身なご指導を頂戴しているお陰である。その証左は20年近く購読の情報技術関連雑誌の数年先を行く超最新スキルを紹介、教科に取り入れ原点から現在までの要点を絞ってくれ、毎年外せぬ科目でIT社会に遅れを取らせない最重要科目である。

その話は最後のエピローグへ との声も院友諸賢から聞こえる。でも『mailは最初の3行に注力』との近時の傾向とPlease tip is better than Thank you tipとのコミュニケーションに従ったものでご理解を戴きエピローグまで読了の価値は、本拙稿に存在する。

“問題点”と言うフレーズは巷間 私共は毎日耳にする。・しかしながら 精緻に核心を突いているには残念ながらあまり遭遇しない。提言や問題点の指摘は学識経験者や専門家の罠に嵌らないことが信頼と達成に繋がり、教訓抽出のベーシックなスタンスでもある。だからこそ 問題点とは、当該事象或いは学説や見解について、将来の期待像と現在や通説とのギャップ に気付き、それを埋める具体的方策や新説を指すものである。

であるから『問題点に強い方』とはギャップ に気が付き 精緻な解決策を献策可能な意欲と感覚を持ち合わせる方を指すものである。シッカリやります は解決策の提言では無い。「シッカリやります」はトップのみに許される言葉である。以下のスタッフはその意図を汲んで具体的に、この案件には、この点・この方法に将来像や期待される数値との差が存在する。そこで この現況と異なる新体制をこの様に再構築、何時までに完了させる。そして期待に応えて、この様な改革した姿・期待される数値に約束・実現することである。

であるかこそ 気付く意欲と感覚に加えて達成意欲を兼備する者には、自らの将来像も開け、クグられてGoogle のTop Rank Pageをも占め、人生のターニング・ポイントとなるのである。


近時の著名な事案について

1 S-11における異見の検討・評価の不作為


以下に共通する”不作為“とは当然になすべきことを敢えて積極的にしないこと。不作為によって構成要件に該当する結果を実現すること。法的に概観すると構成要件が不作為を要素とするのを純正不作為犯。作為による犯罪を規定する構成要件を不作為によって実現するものを不純正不作為犯−。卑近な例で前者は不退去罪、後者には保護責任者遺棄罪が刑法にある。S-11とは、正確にはSeptember 11,2001.である。なので 9-11とは言わない。S-11=2011の米国同時テロのことである。何故S-11に拘り、9-11ではダメ?なのか。その訳は、本邦の警察110番は米国では911番である。従って 米国内では911とは言わない。百歩譲って”9-11,2011”である。米国で一人の日本人の911との発言で、途端に皆が身構えて座が白けたとの由、これが有用情報でもある。

今春まで8年間教鞭を執った千葉科学大学での学生アンケートの数通には、就活の場で「S-11」と応えた、逆に尋ねられて経緯を出典を明示の上、奉答したところ「ホワイトハウスのHPを引用とは。」と面接官に好印象を与えて内定の誘因とも記されていたことは教師冥利に尽きるものである。

2011の春にホワイトハウスへの複数情報がアリゾナとミネソタ所在の航空訓練校1では、ジェット機の離陸後の空中操縦方法のみを習得希望の特異なイスラム系の学生所在の不審情報の存在・呈報があったことは、事後の調査委員会で明らかになっている。因みに航空機操縦のウィークポイントは『魔の11分』とも言われる如くに『離陸3分着陸9分』が何れの操縦訓練生も特化するのが空の常識である。しかしながら その異端の異見は検討・評価されずに異見として葬られた結果はS-11で三千余の犠牲者を出すこととなった。将に 不作為でなすべきことをなさなかったのである。この真の情報の検討を要請した捜査官(FBI,NY主任捜査官J,オニール)は、誰も耳を貸さぬと彼は辞職した。後にWTCの保安責任者とし転出している。J,オの初出勤日が9月11日でした。’96にNYのA,ジュリアーニ市長は、’95の東京サリンの教訓から130億弗でコマンドセンターを設立・テロ対応の訓練・体制強化をしていた。彼は東京サリンを教訓に有事の際は、市長・消防局長・警察本部長の自主参集場所を発生現場と既に規定し数回に亘り現地実働訓練を済ませていた。A,ジが現場に参集後に近くのメルリンチビルからホワイトハウスへ緊急電話報告の時に第二弾のテロは南タワーに激突した。北タワーの攻撃後にJ,オは南タワーへ被害状況に調査に登って行って崩落・犠牲となる歴史の皮肉である。情報・予兆に対する検討・評価の不作為の教訓である。

ご記憶の方々も多い本件はそれ以前からの’93のWTC爆破未遂直後の’94のフイリッピン発航空機の本邦沖縄上空での爆破で初渡航者がタッタ一名の犠牲者であったテロとも関連があったとなどは忘却の彼方にある。実際にS-11に繋がる重要な示唆が含まれたいたことは、当時はフイリツピン・ゲリラ事件として背後関係が掴めずに、捜査不完結の不作為の教訓であることに警鐘があったものである。異見を詳細に分析・評価・検証を済ませないと多大な犠牲を負うと言う、不作為の罪である。

しからば その対応策は

(1) 情報のフィルターを忌避すること
  公刊資料の収集、分析、評価は国際性を堅持、「 悪材早く、好材遅く」を生活化する

(2) 人類学者の様に精緻に観察すること
森羅万象の総てに予兆が存在するとの信念と執念を燃やしてことに臨む姿勢を堅持し、事案は総て事前調査・設置・運搬はヒト・モノ・カネ・アシが必須とを確信する

(3) パターンを探し見分けること
何事にも好奇心を抱き関連事項の渉猟を精緻にすることを習慣化して生活の一部として生活化しパターンを探求する

(4) バラバラ゛の点を線で繋ぐこと
予兆は、歴史上教訓で生起する事象を関連付けて教訓抽出姿勢を継続し、資料化、共有の継続と過去の記念日闘争的日時には、当然態勢強化や突然の変更、取消等々で柔軟に対応、内通者排除にも配意する

(5) 価値ある失敗を奨励すること
確認無き着手は厳禁で、価値ある失敗は奨励し、教訓抽出のスタンスで事に臨み、見送り失敗は厳罰で対処する。特に、失敗事例は、改善貢献資料の発掘発想は、責任追及よりも真相把握の観点上容易である場合もある

(6)話し方と聞き方を訓練すること
聞々管理は危機管理と心し聞六話四(ぶんろくわよん)を常とすると信頼関係が醸成され継続的な続報が続き、其処に信頼感と達成感と確信の姿勢が収集・分析・検討の根幹的信頼が醸成される

(7) 行動は常に振り返り、反省検討を怠らないこと
行動を振り返り、反省検討、再挑戦のプロを目指すには、「鉄は熱いうちに打て」の諺の如くに教訓は、迅速果敢に収集して、即刻還元の姿勢で対処することは危機管理体制主管部署への関心の高まりと以後の同種事案への対応力の向上になる

これらが卑見の一端で諸賢のご叱正を頂戴出来たら僥倖に存じます。


2 公刊資料活用の不作為

本年1月16日に発生のアルジェリア事件は各種メディアにも取り上げられずに直後の調査委員会報告にも、漏れている貴重な資料がある。既に発刊の「イスラム原理主義過激派の脅威−東南アジア地域におけるその動向と安全対策−」2についての検討・評価・検証である。加えて発生現地管轄の在外公館員の情報伝達・収集・共有の不作為にあまり触れておらず、本邦の外貨獲得の尖兵たる方々の無念の犠牲には内心忸怩たる思いは私のみでない。

海外進出企業はカントリーリスクを負うところから、日本在外企業協会に加盟、現地情報の収集・分析・評価・共有をしている。また当然に在外公館は、現地情報を在留邦人等・現地進出企業に現地情報を伝え啓蒙、自国民の安寧の手立てが最低限の任務であり、多額の在外公館経費は国家予算で賄われて、現地駐在の公館員には在外公館特別手当が支給されていることは、先刻国民の知るところである。

しかしながら 本件は上記資料のpp-49には『イスラム原理主義過激派によるテロの発生が懸念される「要注意日」一覧』には1月16日はイラン革命によりパーレビー国王イランを脱出(1979年)と記載、更に1月17日は湾岸戦争開始日(1991年)と掲載されている。

従って 当然に当該日は避けるか、警戒警備体制を強化するか、平素と異なる時間、ルートでの移動等の対応が当然である。トップ企業であるから、当然その措置をとらなかった筈は無いと確信する。その理由は20年程前に同企業の社長秘書と私の当時の運転担当が結婚、その宴席では社員を大事にする企業だとの強烈な他に無い対応に驚愕したことが過る。だからこそ「大企業だから現地の貧困対策に」「モット多角的にコンサルタントの活用」等々コメントは貧困対策については国対国の問題である。その1ケ月前のアフリカ支援会議で総理は、南アの副大統領の来日時に多額の支援を表明済みだし、更なるコンサルタント活用は営業行為的発言は尊い犠牲者や負傷者の心情を忖度すると噴飯ものである。何故 貴重な既刊資料が活用されなかったのか、歴史上の教訓を蓄積と既刊資料の更なる活用・援用を提言するものである。

特に在外公館の活動は今後の駐在員の増強をするよりは、喫緊の課題であるところから、現有人材の運用の妙で、発生即対応体制は『管轄外の公館員の一時的集中運用』で現地への近隣からの急派を提言するものである。旅券の裏表紙に「諸官に保護扶養」を要請している日本国は自国民の保護扶養に是非 発生地周辺国の在外公館員の集中運用計画が喫緊の課題である。どうか 検討の俎上に載せていただきたいものである。現に海外の大手メデイアや大手商社は一部実施済みでもある。現有人材や現有資材・資金の不活用は不作為の最たるものである。


終章に換えて

『鉄は熱いうちに打て』の如くに改善必要点の公募制度の創設

当該危機管理発現事象に直接携わった関係者と組織体や企業内の方々・偶然遭遇した第三者等には、特に平常業務を遂行する第三者的部門の総てに、短期間に改善必要点の公募を実施して隠れた施策や対処技法の改革を目標とすることが新たなインベーションである。専門家会議や有識者委員会は確かにある一点では専門家であっても、現場で遭遇した第三者や当事者からの創案による対処方法を公募すれば、経費対効果 現地事後調査に勝る緊迫感からの隠れた真の創案は将に イノヘーションである。

加えて 誰も触れない創案としては、年間数百万の海外渡航者に中には、過去に危機管理部門の経験者の遭遇事案に対し、既得の知見の基づく貴重な生の現況の教訓抽出の手立てが無い実体である。在日米軍の高官が退役後に世界的大手金融の本邦支社のトップ就任の例からも、是非 総力を挙げて安寧の確保への目と肌での感触を知見に照らしての発信というシステムの構築を提言する。費用対効果の観点、情報収集・選択眼の感覚からは有用情報提供の信頼性と達成感で十分に応えられる。

GSSCの同窓会から『私たちの大学院は通信制大学院のパイオニァです』のポスターが送付された。これを近くのスパーに掲示済、更に市役所には過日管理職危機管理講座の講師就任要請があった絡みで掲示申請中である。  不作為の戒めは「隗より初めよ」である。近く来日の米大使の父は「国が何をしてくれるかではなく、国に何を残せるか」との唱えが耳に残っている。



【注釈】



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