初の国際学術大会参加を終えて
文化情報専攻 14期生 高橋 優貴
私は8月24日に釜山で行われた「東アジア日本語教育・日本文化研究学会国際学術大会」に参加してきました。これは自身にとって初参加となる学会です。この大会に参加するきっかけとなったのは、修士課程1年生の頃に受講していた科目の担当の先生である保坂先生からの一声でした。現在中国で日本語教師をしている私のもとへ、先生から1通のメールをいただき、参加を決めました。しかし、そのメールに気がついたのが学会主催事務所へテーマを提出しなくてはならない締め切りの前日だったこともあり、不安がつのりました。時間が迫っていたことから、テーマを先に提出し、その後に修士論文の指導教官である呉先生へ相談をしました。
私の発表テーマは「認知言語学の視点からみる日本語教育 ――中国人学習者を対象にした一考察――」です。これは私自身が日本語教育に携わっているということ、そしてこの学会に参加する先生方がその道のプロということもあり、意見を伺いたいと思ったからです。しかし、今年修士論文で書こうとおもっている内容は、同じ認知言語学を扱うテーマではありますが、日本語教育のような言語習得に目的を置いたものではありません。修士論文と同時進行で学会の準備ができるか不安に思う気持ちがなかったとは言えませんが、やってみたい、と思う気持ちが勝り、テーマを決めました。
8月はちょうど中国の大学は日本と同様に夏休みです。私は日本へ一時帰国をし、この間に日本で見ることのできる資料を見ておこうと思っていました。しかし、なかなか思うようにはかどらず、このような時は焦りばかりがつのります。「この時までには絶対にここまで終わらせる」と段取りをつけて準備に取り掛かりました。特に初めての学会ということで、最初は何を準備したらいいのかも分からず、先生方に当日持参していくとよいものや、発表時の時間配分のことなどを教えていただきました。そこでまずは発表用のPPTを作成し、その後に何度もイメージ・トレーニングをして本番に備えました。
学会の前日に韓国の釜山に到着。すでに緊張が高まっており、せっかく韓国へ来たものの、よそ見をせず、すぐに発表会場である新羅大学へ向かいました。この時のために唯一覚えてきた韓国語で、タクシーのおじさんに会場まで連れて行ってもらったのですが、言葉が通じずとも、ここでおじさんがにこやかに対応してくれ、少し落ち着くことができました。
宿泊施設は、ホテルと学校内の宿泊場所を選択することができました。私は会場が近いという単純な理由で、学校の宿泊施設を選択したのですが、これは大正解だったと思っています。実は学校の宿泊施設は相部屋で、私は他の大学の先生と相部屋になったのです。これは私にとって、とてもラッキーなことでした。一緒に相部屋になった先生は、ご自身の研究分野について、また日本で行われる学会の様子や現在の職場のことなど、様々なことを教えてくださいました。どの内容も大変興味深く聞き入ってしまったのですが、今改めて考えてみますと、その先生の話し方や人柄にも学ぶ点があったのだと思います。人の耳を傾けさせ、かつ説得力がある話し方です。おそらくこれは知識だけではなく、経験を積んでこそ得られる技だと感じました。
そして本番当日、研究発表は蓮池薫さんの講演に引き続き始まります。私の発表はその日の最後です。正直なところ、最後まで気が抜けませんでした。発表する前には、この大会に参加するきっかけとなったメールをくださった保坂先生が声をかけてくださり、とても心強かったです。また発表の時は、相部屋になった先生も話を聞きにきてくださり、あとでアドバイスまでしてくださいました。他の方の発表を聴いてみても、「こうした方がよかったな」とか、「こんな方法があるのか」などと新たな発見があります。自分自身も発表を終えてからいろいろと反省点が見えてきます。こうした経験の積み重ねが大切なのだろうと実感しました。
今回の学会は日本人だけでなく、韓国人、中国人の先生方もいらっしゃいます。国籍、年齢関係なく、みなさんが交流できるこのような場での収穫は大変多いです。今回はまだ周囲を見渡すゆとりが持てませんでしたが、次回このような機会があれば、今回よりはもう少し、さらに次の機会には更にもう少しと、頭、体ともに慣れさせていきたいです。
今は「ああ、参加してよかったな」とつくづく思っています。