司書のつぶやき(2)
司書の資格と通信教育
文化情報専攻 13期生 大塚 奈奈絵
今年度から、母校である東洋大学文学部通信教育課程で「図書館に関する科目」を担当することになった。司書資格の要件である「図書館に関する科目」は、今年度から大きく変更されて、必要単位数が20単位から24単位に増加し、科目の内容も大幅に改定された。私の担当する「図書館情報資源概論」は、従来の「図書館資料論」に電子資料やネットワーク情報資源が加わった必修科目で、資料の歴史や特性の他、出版・流通、図書館での選書・収集・保存業務が範囲である。
実は、この非常勤講師を引き受ける過程で、先輩から司書資格と通信制の大学に対して、厳しい意見をいただいた。4年間通学してとれるものと同じ司書資格が、通信制でもとれることが、司書資格自体の権威を落としているというものである。
通信制の大学を卒業し、通信制の大学院で学んでいる身には痛い言葉だが、よく考えてみると、通信制の大学では、司書資格だけではなく教員資格も取得できる。私が卒業した東洋大学の通信教育課程では、国語の教員資格を目指す、日本語教師や書道師範が多く在学し、実際、教員資格を取って、常勤の教員になった学友もいる。通信制の大学で教員資格を取れることをうんぬんする意見もあまり聞かない。
一方、図書館司書は、都道府県や市町村の公共図書館等で図書館資料の選択、発注及び受け入れから、分類、目録作成、貸出業務、読書案内などを行う専門職員で、その資格は大学・短大で必要単位を履修するか、司書講習を受講することで取得できる。ただし、司書の職業に就くためには、自治体の採用試験などを受けて図書館に配属されることが必要で、資格を取るのは年に1万人、常勤になれるのは、年に数十人だけだと言われている。
これは、図書館の職員には非正規雇用が多く、また、公務員の定数削減による業務委託や指定管理者制度などによって、日々雇用で働く人が増加しているためでもある。民間業者の雇用の場合には、司書資格は必要ではなく、司書資格があれば時給に数十円の上乗せがあると聞いている。
さらに、自治体などでは図書館も県庁や市役所などの組織の一部として通常の配置転換の対象となるので、司書資格がある職員が通常の事務に従事し、司書資格のない職員が図書館に配属になる場合も多い。つまるところ、日本では、司書は教職のような専門職としては扱われていないのである。図書館員の資格は、アメリカのように、大学院修士課程でのみ取得するようにすべきだという意見も昔からあるのだが、これも現在の日本の雇用を考えると難しいように思える。
その半面、図書館に配属になってから、必要を感じて、司書講習や通信教育で司書の資格をとる人も多い。私個人は、十年以上に亘り、様々な図書館業務を民間企業に委託した経験から、少なくとも、監督者クラスに司書の有資格者がいるのといないのでは、仕事の質が大きく異なることを実感している。東洋大学では、雇用されている会社から司書資格を取るように勧められて、研修扱いでスクーリングに来ているという人もいた。
司書資格と通信制の問題には、よい、悪いとは簡単に言い切れない現実がある。教えることを通じて、図書館と社会の関係を考え続けたいと考えている。