いわきの日々

文化情報専攻 12期生 吉田 裕美

 (福島県いわき市の「ふるさと絆情報ステーション(イオンいわき店)」で本を受け取ってくださる吉田裕美さんが、お忙しい中、近況報告として子供たちや地域の様子をメールで知らせてくださる。その一部を掲載の了解を得、紹介させていただく。)

6月26日「本が届きました!!」
 本日、吉岡さんからの本が届きました。早速配布と思いきや、7月29日に贈呈式をやりましょうということになり、壁新聞の子供達、いわき赤十字センター、ミスいわき、ライオンズクラブなどを招いて、ささやかですが、イベントをさせていただくことになりました。吉岡さんが手間をかけて下さったおかげで、まだまだ新品のようにきれいな本ばかりです。吉岡さんすみません、ありがとうございます。
 先週、いわきの警察署から、感謝状を差し上げたいとお申出があり、一昨年から現在に至る社会貢献活動に対しての表彰ということで、同僚からは「吉田ついに自首か!」と冷やかされながら、本日出頭し?いただいてまいりました。社会貢献といってもほんとに小さな積み重ねでしたが、私の活動の基底には長谷川先生や松岡先生、同窓会の皆様の行動する姿が常にありました。この賞状は日大大学院総合社会情報研究科への感謝状です。喜びと感謝の気持ちを込めながら、事務所の壁に飾りました。(地震があっても外れないように、ドリルで穴をあけ、念入りに設置いたしました!)

7月2日「反響に感激しております」
 同窓会の皆様のお陰で「メールを見ました」という励ましや、ご提案のメールを頂けるようになりました。とても有難いことで感激しております。吉岡さんの本は一部子供会の集会所に寄付する予定でおります。今年は子供会のみんなに吉岡さんの本を読んで読書感想文(絵)を夏休みの宿題に出すつもりでおります。
 私の勤務する店の地域にある子供会より、今年はラジオ体操を復活させたいとの申し出があり、当店の駐車場で実施してもらうことになりました。公園はいまだに誰も利用する人も無く、除染はイタチごっこです。コンクリートのほうが安全というのも皮肉な話です。ラジオ体操は7/23からです。昨年を除き、私も毎年参加しておりました。楽しい子供達の感想が返ってくることを願って今年も毎日6時30分に参加します!
 研究科文化情報専攻の教育目標である「地域共生のための文化・社会活動の担い手、文化力向上に寄与するエキスパート」の養成は、これからの日本の活性化を左右する最重要課題だと思います。私は今の職場に就いてずいぶんになりますが、その間縁あってずっと子供に関するイベントや企画に携わってまいりました。今では始めの頃の子供達が、彼らの子供達を連れて店に遊びに来ております。子育ての経験もない私ですが(だいたいにして結婚もしておりませんが…)地域の子供達の成長を今あらためて見つめ直しております。
 上記に述べました子供会(幼児〜小学6年生)の在籍人数は2010年には100人を越えておりました。今年お楽しみ会で用意したお菓子の数は40コでした。また教育委員会から当子供会の地区では今年3人の新一年生を迎えるとお知らせがきておりましたが、結局3人とも他県へ避難してしまい、今年は一年生がゼロでした。これからの将来を担う子供達へ、母ではない私が出来る事は「子育ての環境」をいかに良くするかを陰で支えることだと考えております。同窓会の皆様のご協力で「地域共生のための文化・社会活動の担い手」に少しでも近づけるようがんばります!

7月9日「沢山の御連絡をいただいております。」
 同窓会の皆様のお声掛けで沢山のご協力の申し出をいただいております。
 昨日は、同じ長谷川ゼミだった友人が、職場の方に声をかけ、共感して下さった方より直接本が届きました。昨日は丁度、子供会の役員の方と打ち合わせ中で届いた本を見て感激しておられました。『読書感想文の宿題』というプリントを作ったので今日には回覧板にまわっていることと思います。
 今年は、行政企画の夏祭りが復活の兆しをみせております。一方、地域主体の自治体による行事は未だ自粛傾向が強いです。昨日お会いした子供会の役員さんから「今年も大多数の保護者から、夏祭りに関するイベントは中止のお話をいただいております。昨年に引き続き、子供会の活動はゼロです。なにかいい案ありませんか」と相談されました。毎年子供達が楽しみにしていた集会所前での縁日や、お神輿が今年も実施を見送られました。これは一つのケースというのではなく、他の多くの自治体が子供に関する行事については実施を断念しております。放射能に関する不安がその理由ですが、当店近所の小学校では通学路を放射能数値によって、その都度変えております。お神輿で練り歩く子供達の姿を見ることは、まだまだ先のようです。
 自治体は草むしりなどの清掃を実施できないでいます。(強制してはいけないということから・・・それでは誰も集まりませんよね)当店では従業員のボランティアで通学路の清掃をしています。「還暦に近い幹部、結婚を諦めた者など 君達の勇気は忘れない!どしどし参加してね」 と。参加メンバーは皆開き直って作業に汗を流しております。いつも「結婚を諦めた吉田」と参加者表に書かれますが「諦めたわけじゃないってば!」と泥にまみれて反撃している今日この頃です。

7月15日「とても喜んでいただいております」
西山様
 沢山の本とおもちゃをありがとうございます。きりんのおもちゃから音がでていて荷受けの係がびっくりして台車を走らせていました。みんなで大笑いしながら、西山さんからのありがたいプレゼントを開けさせていただきました。早速、折り紙とBAカラー用紙を少し頂き、七夕の短冊にさせていただきました。店内にコーナーを設けたところ2日間でなんと2000枚の願い事が集まり、またまた驚いているところです。
 西山さんからの贈り物は来週ボランティア活動予定の仮設住宅の子供さん達へ贈呈してまいります。こちらはめずらしく就学前の子供達が多くいる施設なので西山さんのチョイスは大変ありがたいです。特にはさみは嬉しかったです。

7月23日「どうぞ写真使ってください」
 仮設住宅に編み物が好きなおばあさんがいて西山さんから頂いた毛糸と編み具をもっていったら「がんばってみる!」と喜んでくれました。精神的に疲れてこのごろは何も手に付かない といっていた方だったので笑顔が見られて嬉しかったです。
 ハサミや画用紙は子供達が集会所で共同で使うと喜んでいました。西山さんの本も子供達の集会所にきちんと並べていましたよ。

7月24日「本は素晴らしい夏休みの思い出です」
 夏休みに入り、昨年は実施を見合わせていたラジオ体操を今年は当店の駐車場で行っております。子供達だけでなく、独り暮らしのおじいさん、おばあさん、出勤途中のサラリーマンなど子供の倍の人数80人以上が毎朝店先で体操しています。
 その際、皆様から寄せられた本を子供達に貸し出して感想文(絵)を書かせる宿題を出しています。ゴロゴロと台車に乗せて本を運んでくると、子供達が「ワァー」と駆け寄ってきます。『トルストイ』を手にした課長が「俺だって読んだことねぇべや」といったそばから、5年生の女の子が「その本を貸して下さい」と持っていきました。みんな朝から大笑いです。昨年の今ごろでは考えられない光景です。ラジオ体操は店長や店の職員もみんなで参加しています。(店が7時開店なのでもう全員出勤しているので・・・)皆さんのプロジェクトがこんな形になって福島の朝を賑わせているんですよ。
 子供の本は以外とお年寄りに喜ばれています。仮設住宅に行くときは数冊の児童書を持っていきます。最近では、集会所でおしゃべりをしているお年寄りを見かけなくなりました。長い非難生活に疲れて、一日中部屋で横になっている方が多くおられます。非難前、昼は畑で作業して夜は広い農家の家で寝ていた方々です。今では四畳半(家具を入れると三畳もありません)の仮設に夫婦二人あるいは一人で過ごす一日はどんなに空しく寂しいものでしょう。若い世代は他県へ仕事を求め移住してしまい、現在2万人とも4万人ともいわれる高齢者がこのような状況に置かれています。(非難市民は住民登録をしていないので行政では正確な人数を把握できておらず、上記のようなあやふやな数字がまかり通っているのが現状です。)
 西山さんが送ってくださった毛糸と編み具(機織りのような)を以前は編み物が得意だったというおばあさんにプレゼントしました。おばあさんは、以前は食堂を経営しており、食べ物を作っている自分が食事をする暇もない程毎日が忙しかったそうです。今では唯一持ち帰れた暖簾を眺めながら、一人部屋に籠る日々を送っています。みなさん自営業だったので非難していなければまだまだ現役で働いていた事でしょう。 避難先での高齢者は仕事がありません。生産性のない存在を自覚するほど人として苦しいものはありません。その毛糸をもらったおばあさんが「何作っぺ、オラ手のろだからョー、今は夏だべ?出来上がったころは冬で丁度いいあんばいだっぺ」と喜んでおりました。一人で過ごす四畳半の日々でも、目的が生まれることによって明日が見えてきます。
 「誰かのために、何かをしたい」、その思いが明日、来月、来年と続いていく事が生きる原動力になるのだと思います。西山さんの一玉の毛糸が、おばあさんの人生を繋げてくれたんだと思うと感謝の気持でいっぱいです。児童書の文字の大きさがお年寄りに丁度いいそうです。なにもせず横になっている時間のほんの一部でも、体を起して本を読んで欲しいです。
皆さんのプロジェクトが「誰かのための、生きる希望」になっている事を今回御報告させていただきました。

7月30日 「皆様からの本を贈呈しました 」
 夏期スクーリングの際に皆様から寄せられました本を子供達と贈呈いたしました。先日、いわき市保健所、いわき市赤十字、学生JRCいわき支部、明星大ボランティア部等とともに夏の献血キャンペーンを開催しました。壁新聞の子供達もお手伝いをし、赤十字センターの所長さんに皆さんからの本を贈呈いたしました。先に所長さんから、センターに来る子供達は小学校3〜6年生が多く、幼児は採血中、危険なのであまり連れられては来ないというお話を子供達は聞いていたので、自分達で本を選定し(どうやら自分達が読みたい本のようです)その旨を所長さんにお話ししておりました。保健所や、市役所その他大勢のNPOの方々に写真を撮られて所長さんも子供達も大いに照れておりました。
 初めて写真にとりました【絆ステーション】へは定期的に本を贈っております。この日は西山さんから送っていただいた積み木も嫁いで行きました・・・
松岡先生のメールにありましたJapan in a DayのトレイラーをYouTubeで見ました。海には近づきたくないという子供達がたくさんいます。学校プールは校長先生の判断で再開した学校もあります。プールサイドに鉄板を敷詰め、人口タイルをはり、期間中は父兄総出で毎回除染作業です。「内部被ばくするから、2L以上の水を飲まないことって言われた」と子供達が話してくれました。「あたし、水2Lはさすがに飲まないけど、うちのお母さんはビールだったら2L楽勝だって!」

8月10日「福島の夏をご報告させていただきます」
 暑中お見舞い申し上げます。
 関東はまだまだ暑い毎日が続いていると聞きます。東北は朝晩すっかり秋の気配で肌掛一枚では寒いくらいです。こちらはお盆を過ぎると一気に涼しくなります。
 先日町内の子供会と、西山さんや大塚さんから送って頂いた色紙や千代紙で七夕飾りをつくりました。壁新聞の子供達も別の日に制作いたしました。店の近隣の方々に、願い事の短冊を西山さんからの用紙に書いてもらい吹き流しにしました。その数なんと2007枚。子供達にせっせと繋いでもらい、写真のような飾りを13コ完成させました。8/20まで店内の中央通路の天井に飾り、市民の皆様の目を喜ばせております。



 別の写真は、8/4に壁新聞の子供達が宮城県のご招待で、宮城の利府にある森林公園(公園というより純然たる森です・・・)で生物多様性について勉強してきた様子です。東北といえどもこの日は日中34℃もあり、蚊が多く、一日中炎天下で、大人組は意識朦朧です。結果、生物多様性についてわかったことは「自然にやさしく人に厳しく…」ということでした。でも一年半ぶりに屋外で走り回った子供達の笑顔は、すいかの切り口のごとくあざやかで眩しかったです。

 8/18は、市の主催で風力発電について子供達と勉強してまいります。私達の活動を聞いて「子供達の生きる次の時代には、是が非でも主力エネルギーは環境と共存したものでなければならないと思うのです!」と熱いお誘いを頂きました。経済を原子力に依存していた福島県民として「今更」とも思われますが、大きな反省を踏まえて「今から」を子供達に託したいという主旨で、私達スタッフ(3人だけですが)も打ち合わせに臨んだのですが、先方のカリキュラムを聞くとなんと6時間!小学1年生もいるんですがと心配すると「吉田さんが代わりにハンダ付けやっていただければ大丈夫!」そうなんです。風が発電する仕組みを理解させるのに、風力発電機を作るんだそうです。会場は風力発電機の研究所がある山の頂上。また山です・・・「子供達が親になる10年後には、100%を自然エネルギーでまかなえる環境を作らなければと私共は焦っています。10年後より来年福島があるかどうかも心配なんです」と語る担当の方から「ご質問はありますか?」との問いに子供達のお母さんから「吉田さん達のお弁当はどうなりますか?私達が差し入れしますか?近くにコンビニがないそうなんで心配です!」との意見が。「そうですね、それが一番の心配ごとですね!!」と会場は爆笑の渦。「そこの所は大丈夫です、うちの店、売るほどありますから」と応えてお開きになりました。



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