右目の腫れとの闘い

文化情報専攻 小林 敬子

 この2年間、先生方には大変お世話になりました。こちらの大学院の存在は知人を通して存じておりましたが、まさか自分が入学させていただけるとは全く考えていませんでした。ただ、大学院の講義内容を初めて拝見したときに、もしかしたら、私が今まで興味があったことは、こういう分野だったのかもしれないとの思いがありました。子供の時から、読書は好きで、興味・関心があるものについては、手当たりしだいに読んできましたが、大学院での研究を始めたことにより、少しずつ焦点が定まり、自分が何に興味があり、何をどう考えたかったか、だんだんと明確になってきたことが非常にうれしいことでした。私が知りたかったことは、こういうことだったのだと目の前が明るくなったようでした。自分の好きなことが勉強できることは楽しいことなのです。
 仕事を続けながら論文を書くことができるのだろうかと始めはかなり不安がありました。まず、時間の確保が最大の懸案事項でした。入試の面接で、先生から、「いつ勉強しますか」と質問を受けたときに、「これは困った、一体いつ時間がとれるのだろうか」と思いました。
 しかし、時間の都合は自分の工夫次第なのだと思い、全ての事項に優先順位をつけて、取り組もうと決めました。長い間、仕事・育児・家庭とバランスをとりながら暮らしてきたので、そのときどき、何を優先させるのかは、得意分野ではありました。
 ただ、研究を始めてからは、とにかく楽しくて、優先順位をつけるまでもなく、それが最優先になってきました。例えば、1時間くらい電車に乗ることがあれば、辞書を片手に単語調べをしたり、課題図書を読むことにあてたり、自分の使える時間はすべて使って取り組むことができました。
 私の研究はフォーレの『レクイエム』です。フォーレは19世紀のフランスの作曲家です。彼はドビュッシーやラヴェルほど、フランスの音楽家の中でポピュラーではないので、あまり文献がなかったのですが、これはこれで、自分の独自性が生かせる場ともなりうると思いました。まず、曲を聞き込むことから始まるので、今まで何度も何度も聴いた曲ではありましたが、もう一度、違う耳で聴かなければと思い、楽譜片手に繰り返し聞いていくうちに、新たな発見もあり、驚くことがありました。ここの主題がここにつながって、ここでこう結び付き、解決していくのか…と納得し、あの自然な美しい響きの裏にこんな技が隠されていたのか…とあらためてフォーレに脱帽することもしばしばありました。
 また、自分の研究とは別に、先生方からの色々な課題に取り組む中で、今までの自分だったらなかなか知ることの出来なかった作家や作品と出会うことが出来て、それも嬉しい驚きでした。いかに自分が何も知らずに過ごしてきたかと恥ずかしく思い、もっと世の中のことに貪欲に取り組むべきであったと反省することもしきりでした。この二年間、楽しいことばかりでしたが、ただ一つ、大変だったことは、体力、特に視力の問題でした。
 体力の方は、ランニングを続けているので大丈夫なのですが、視力の弱さにはほとほと参りました。本を読みたいのに、目が腫れて読めない…、視力の弱さからくる頭痛など、目の不具合はどうにもならず、大変困りました。右目の視力が特に弱く、すぐに腫れる、真っ赤になる…など、見た目にもわかってしまうほどでした。どうしようもなくなったら、温かい蒸しタオルを目の上に乗せて、ひたすらじっとしたり、目医者さんで、お薬をいただいたり、(お医者様に行く時間を捻出することもなかなかできないのですが)、身体はどこが不具合になっても辛いものです。人によっては腰の不具合だったり、肩こりから来る頭痛だったり、その人により様々でしょうが、私の場合は目の疲れでした。もっと若いときにこの大学院に出会っていれば、こんなことはなかったのに…とも考えましたが、出会ったときが一番のチャンスでもあるので、もう繰言は言わず、出来ることを出来るだけ頑張ろうと思い、続けることができました。
 新しい世界が広がったこの二年間でした。先生方には、いつも丁寧にご指導いただきまして、心からありがたく思っています。これからも出来ることを続けていきたいと思っています。ただ、これから研究に入られる方々には、くれぐれもご自分のお身体のケアもお忘れなく…とお伝えしたいです。



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