熱海よりの通信(#06)
─2011年・アメリカ自動車販売実績からの考察─

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳

 やはり、アメリカの自動車販売台数は復活傾向にある。このデータは、2月2日(水曜日)アメリカの2011年1月の自動車販売実績が発表された内容である。前年同月比の比較でみると、17.3%増加している。(別紙添付1項参照)

 全米自動車販売メーカーは、国内メーカーおよび海外からの輸入メーカーを含めると 20社ある。そのうちわずかに、日本のマツダのみが前年同月比マイナス9.1%でその他のメーカーはすべて増加している。また、この数字からみて今年度の年間販売台数の予測は1250万台と報じている。やはり、アメリカの景気も回復傾向にあるという具体的な数字が今年の1月の自動車販売実績にも顕著に表われている。

 トップはGMであり、1月の販売台数は21.8%増加で17万8896台であった。シボレー部門、GMC、ビューイック、キャデラック、と主要部門はすべて増加傾向である。

 2位はフォードの(同)販売実績は13.3%増で12万7317台であった。乗用車部門のフォード、リンカーン、マーキュリーは0.4%減であるが、トラック部門は21.1%増であった。

 3位はトヨタ自動車であり(同)米国新車販売台数は、前年同月比17.3%増の11万5856台であり、前年実績を上回るのは4カ月ぶりである。トヨタ部門は、23.7%増であり、レクサス部門は、17.1%減であった。

 4位はホンダの(同)米国新車販売台数は、前年同月比13.0%の増であった。ホンダ部門は13.2%増、アキュラ部門は11.6%増である。乗用車部門が前年同月比7.4%減、トラック部門が46.0%増であった。

 5位はニッサンの(同)米国新車販売台数は、前年同月比14.4%増であった。日産部門は15.4%増に、インフィニテイ部門は10.3%増であった。乗用車が前年同月比4.0%増のであり、トラック部門が39.7%増であった。

 6位クライスラーの(同)米国新車販売台数は、前年同月比23%増。乗用車部門が前年同月比22%減、トラック部門が38.0%増であった。

 7位は現代自動車は、22.0%増、8位の起亜は、25.6%増である。

 ここで注目すべきは、1位と2位はGM、フォード、3位から5位は、日本のトヨタ、ホンダ、ニッサンであり、クライスラーはなんと6位になったという点である。次の7位と8位は韓国勢であるが、気になる点はやはりクライスラーであり、近年は毎年ランクをひとつずつ落としてしている。それも今までは、日本のJB3、すなわち、最初にトヨタに抜かれ、翌年はホンダに抜かれ、今年はニッサンに抜かれて来た。更に韓国勢の2社(現代自動車&起亜)は兄弟会社であり、この2社の合計台数でみると、ひょっとしたら今年後半か来年前半には、韓国勢にも抜かれるのではないかと私は想定している。すなわち、クライスラーはアメリカの自動車販売でもずるずると他のメーカーの後塵を拝している傾向である。また、同社の収益についても、まだまだ赤字体質から脱却できないでいる。いずれフォルクスワーゲンもアメリカの販売では力をつけてきているので、数年後には抜かれるのではないかと思われる。

 さらに、1月度販売実績のデータの中で注目すべきは、トラックを除いた乗用車の販売台数の実績である。(以下、日本経済新聞2011年2月3日、抜粋)「驚くべきことに韓国の現代自動車(傘下の起亜自動車含む)の販売台数がフォードとホンダを抜いて4位に浮上したことである。(別紙参照)日本車が得意としてきた低燃費の中小型車分野で米国、韓国勢との競争が激しくなってきている。トヨタのカムリやホンダのシビックなど日本勢の主力車がモデル末期にあるなか、米、韓メーカーが新型車で攻撃をかけている。不安定な中東情勢を背景に、アメリカのガソリン価格は上昇しており、今年は低燃費な中小型車人気が高まる見通し。カムリとシビックは年内に全面改良が見込まれ、同分野でシェア争いが激しくなるだろうと予測される。」小生の予測でも、とくに米国の自動車市場で、現代自動車が攻勢を強めている点が今後も続くであろうと予測される。

 「原油価格に、上昇圧力が高まっている。指標である北海ブレント先物は、1月31日金融危機が起きた2008年以降、初めて1バーレル100ドルを突破した。」これは、2011年2月2日水曜日、日本経済新聞記事の抜粋である。これによると、年初は1バーレル70ドルから80ドルであったのは産油国と消費国の双方による満足のいく水準として推移していたが、ここにきて1バーレル90ドルから100ドルを超える価格になってきた。

 このことは、小生が昨年7月ごろまでアメリカにいた時点ではガソリン価格では1ガロン当たり2ドル台であった。今年1月に小生が再度アメリカに行ったときは、その時点のガソリン価格は、1ガロン当たり3ドル10セントを超える水準に上がっていた。デトロイト・フリープレスによれば「さらに最近の業界の予測では、今年中に4ドルから5ドルに達する!」との予測を出している。

 また更に同紙は「この石油価格の上昇は、今のところピックアップ・トラックやSUV、クロスオーバー、ミニバンを含む大型トラックに流れている購買者を引き戻すには至っていないが、GMが、11年にガソリンが4ドルまで上昇する可能性があるとみて、それが果たして客足をフォードのフェージョンやホンダのシビックなどの最新ハイブリッド車(HV)へ向かわせるかどうかは、今のところ未知数である。」と伝えている。

 小生は、このガソリン価格の大幅な高騰現象は現在好調な自動車業界を支えている大型のトラックなどの市場に大きな影響を与えてくると考えられる。さらに、乗用車部門でも小型車にシフトする傾向が見られると推測する。したがって、現在好調な兆しを見せている自動車業界も、ガソリン価格の高騰により、大型車のトラックやSUVから小型車の乗用車に移行してくるということは目に見えている。

 このことは、アメリカのみならず同様な変動は間違いなく日本にもやってくる。したがって日本の市場でいえば、現在のハイブリッド市場がさらに加速化されて行くことが予想される。加えて、電気自動車の台頭が著しい昨年後半からの動きがもっと注目されるであろうと思われる。

 今後の日本の自動車業界は、ひょっとすると今年あたりを境に小型自動車の垣根と軽自動車の垣根がなくなって、燃費や品質、価格面での競争が激化するのではないかと思われる。すなわち、今まで税制面で保護されていた軽自動車の恩典がなくなる、あるいは同様な恩典が小型自動車にも適用される。すなわちハイブリッドや電気自動車も軽自動車と同じような恩典が適用されるようになるであろうと私は想定している。

このような現象になった場合の今までの小型自動車業界と軽自動車業界、すなわち、ダイハツ、スズキなどのメーカーが軽自動車での優位性がなくなってくる可能性があり、私は日本の今でも多すぎる自動車メーカー11社による大激戦が展開されるであろうという予兆がこのガソリンの高騰により展開されるのではないかと危険な予測をしている。





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