熱海よりの通信(#05)
─2011年・デトロイトオートショー見学記─

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳

 今年も、デトロイトオートショーが始まった。毎年のように世界で1番早いオートショーである。私はこのデトロイトオートショーの見学記を書き始めてから今年で9年目である。しかしながら今年のオートショーには、日本からデトロイトに来て一般公開の日を待ってオートショーを見学した。

 今回は、1月18日に成田空港をフライトして、翌日は久しぶりに友人に会い翌々日の1月20日にオートショーを見学した。今年も毎年のように天候は小雪がパラパラとちらつく中の会場であるコボホールの道をはさんだ反対側の駐車場に車を預けた。

 駐車待ちでちょっと時間がかかったので誘導している若いお兄さんと少々話をしたら、そのお兄さんも毎年ここで仕事しているとのことであり、私も今年で9年目であると伝えた。来年もまた会おうね!とお兄さんから言われて何となく親しみを感じた。
 駐車料金は、昨年と変わらず10ドルである。何時間も駐車しても同じ料金である。コボホールの入り口に、珍しくおじいさんが座って紙コップを置いてあったのでなんとなく気になって50セントをその中に入れた。私は、日本でも新宿駅近くでよく見かける光景でありいつもと同じようなことをした。

 入場券を買おうとしたらその売り場の前で、地元のデトロイトの一部1ドルの新聞を本日は無料で配布していた。結果的には、良いことをしてさらに得をしたような感じである。オートショーの入場のチケットを買ったら、今年も12ドルであった。昨年と同じ料金である。

 しかしながら私のすぐ後ろに老夫婦が来て、「シニア、二人」と言ってチケットを買ったら二人で合計金額が12ドルであった。私は今まで知らなかったが、シニアは一般の人の半分の金額の一人6ドルであるらしい。私も来年から、適用してもらうようにしっかりと頭の中に入れた。

 今年も会場には、いつもと同じように中央の入り口から、往年のボクシングヘビー級チャンピオンのジョウー・ルイスの銅像の前から入場した。今回も中央の右側は、フォードモーター、左側はホンダであり、この会場のレイアウトはここ数年は全く同じようなレイアウトであり私には大変うれしく感じている。(会場のレイアウトについては、別紙添付する!)

 本日は木曜日の平日であったため、サラリーマン風の人たちよりも一般の人が多いように感じられた。特に中年以降のリタイアの人たちが多く見られた。全体的には男性が90%以上で、ジャンパーにジーパン、そしてスニーカーといういでたちの人が多かった。また、日本と違って新車の写真を撮っている多くの人たちは子供であった。家族連れは余り見られなかったが、今日の特徴としては身体者障害用の車を押して見学している団体が見られた。私は日本の自動車ショーではこのような光景が見られないと思い、しばらくベンチに座りながらその光景を眺めていた。また、いつものことであるが、会場はゆったりとしたレイアウトであり、日本のように人がぶつかりながら見学するような光景は見当たらなかった。全体には静かでゆっくり見られた。また会場内では日本と違って、食べ物を売るようなところがなく食事することもできないが、会場の外には大きなスペースをとって食事をできるようになっている。会場内も会場外も椅子やテーブルも置いてあり、いつでも誰でも座れるような環境であった。
 昨年と大きく違う会場レイアウトは昨年は会場に空いているスペースが何カ所かあった。すなわち、昨年は日産自動車やその他の大手の自動車メーカーが不参加のためそのスペースが空いてしまったためである。しかし、今年はその空いているスペースについては、デトロイトスリー、すなわち、GM、フォード、クライスラーなどが多くのスペースを使い、大型トラックから小型車までのフルラインの車を並べたためにスペースは完全に埋まった。

 新聞紙上やテレビの報道によれば、今年のデトロイトオートショーは大変活況を呈しているとのことであった、すなわち2010年通年のアメリカの新車販売台数が5年ぶりの増加に転じるなどで、景気回復を追い風に勢いづくアメリカの自動車市場の需要を取り込もうと世界の自動車大手は多くの新モデルを出展して、環境対策車を中心に開発、販売について競争が一段と激化することの予想であった。また、デトロイトオートショーの入場者は昨年までは下降気味であったが、どうやら今年の入場者は昨年を上回るとの予想が新聞に書かれていた。

 しかし、私の見た限りでは私の今年のオートショー見学記は少々辛目のコメントになってしまった。今年のオートショーの目玉はなんといっても、各社が燃費の良い小型車を多く出展していた。入口近くのフォード自動車でFocusという車で40/MPG、すなわちガソリンが1ガロンで40マイル走るという車を大々的に宣伝していた。さらに、フォードで面白かったのは、パスポートという小冊子をくれて、フォードの自社の18コーナーのうち、6コーナーをまわって6カ所すべてにスタンプを押してもらうと景品としてアルミ製のボトルをもらえることになっており、多くの人がフォードのコーナーでスタンプをもらうためにうろうろしていた。

 アメリカのオートショーでこのようなことを見るのは初めてである。そのために今回のフォードの会場はかなりの人だかりで活況を呈していた。ひょっとしたら来年から同じような手法を用いる自動車メーカーが出てくるかもしれない。
 隣のホンダはプラグイン・ハイブリッドを売り物にして展示していたが、それ以外は全体的には昨年とほとんど変わりがなかった。このことについては、私は大変がっかりした。特にホンダのアキュラ店の販売は昨年と全く同じような内容であり変わり映えがしいない。これでは今後さらに販売を伸ばすための販売店の苦労が目に見えるようである。来年以降はもっとがんばってもらいたいとつくづく思った。

 GMのコーナーも、フォードと同様にかなり活況を呈していた。今年のカーオブザイヤー車はシボレーのボルト(Volt)であり、大勢の人だかりがしていた。さらに隣のGMCもまたまた以前と同じように大きなトラックがズラリと並んでいた。

 隣にある今年のトヨタ社には私は唯一、今回のショーで素晴らしいと感じた。いつもと違って、なかなか面白そうな展示車が多かった。レクサスの部門はなぜか車体はすべて白のペイントであった。同じように、GMのキャデラックの車体はすべて赤であった。ホンダ車はグレー色、クライスラーは黒色、フォード社も白色が基調であった。

 今後なかなか面白そうだなあと思うメーカーはやはり韓国車である。現代自動車と起亜自動車は別々にかなりのスペースを取って、トラック以外は乗用車のフルラインで展示されていた。品質の向上と価格の安さを含めて多くの人たちが関心をもって見ていた。昨年の全米の自動車販売の実績でも、韓国メーカーの2社は大幅に伸びている。今年もさらに韓国メーカーの伸びが期待されると私はその感触をこの会場でかなり感じた。

 しかしながら、やはり日本車としては大手の日産自動車が参加していないのがとても寂しく感じられた。一部の報道では、日産自動車も来年以降にこのデトロイトに復帰してくるような情報であった。

 全体的な感想としては、今後ますます盛んになる環境に対応する車として燃費の良い車、そしてガソリン価格が昨年は2ドル台から3ドルに高騰しており、さらに今年の夏には4ドル台に突入するのではないかと予測されていることから、多くの会社が小型車にシフトしている傾向が見られた。ただしこの環境に対する車の内容は昨年来から各社が先行で発表して報道している内容と全く変わりがなく、目新しいことは、ほとんど見られなかったことは残念である。

 さらに、相変わらず大きな車やトラックの人気はなかなか根強いものがあるというのも、この国の事情である。おそらく今年は景気回復の基調であるためにアメリカの自動車業界全体は、さらに好調な販売を推移するであろうと思われる。大変喜ばしいことではある。来年はどのように変化をしているのか、またその経過を見るのが楽しみである。


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