43号編集後記


 先日、上野の甘味処「みはし」にて餡蜜を食べてきました。ダイエットのため、神田から上野まで歩いていた際に、誘惑に負けてしまった形です。
 私は大学進学のため、東京に出てきた組です。初めて上京した際、いざJR上野駅に降りてみると全く勝手がわかりませんでした。私の田舎では、電車が通っていなかったので自動券売機による切符購入や自動改札を利用したことがありませんでした。そんな中、大学の学生寮は、千葉にあったため京成上野駅で乗り換えをしなければならなかったのですが、6時間程探した揚句、見つけられませんでした(駅員さんにも聞きましたが、さっぱりわかりません)。あまりの方向音痴ぶりに途方に暮れていた際に、目に付いたのが「みはし」でした。男一人で入るのは少々躊躇われたのですが、空腹に押し切られる形で入店し、餡蜜を注文。粗野な辺境の漁師町で生まれ育った私には、「みはし」の餡蜜が非常に小さく感じるとともに、上品すぎる印象を受けました。恥ずかしさに加え、空腹さが食べるスピードを助長してすぐに食べ終えてしまうと、急に不安な気持ちが心を埋め尽くします。京成上野駅乗換問題もそのひとつですが、東京で生活していくこと自体に怖い気持ちでいっぱいでした。そんな当時18歳、上京ホヤホヤの純情青年だった私の心を見抜いたのか、男性の店員さんが話しかけてきました。「何かあったのかい?」今思えば、そんな問いかけを突然されるような可視化された動揺だったのかと恥ずかしくなりますが、当時は東京の人の優しさに触れ涙がこぼれそうになりました。事情を話すと、笑うこともなく「ついておいで」と京成上野駅まで連れて行ってくれ、非常に有難かったことを覚えております。別れ際には、「困ったらまたおいで」と言ってくださり、私は不器用なおじぎを何度も繰り返しました。
 それからもう10年、上野駅は綺麗に改築され、駅周辺も大きく変わってしまいましたが、例の甘味処は趣も変わらず残っており、たまに出かけています。助けてくださった男性店員さんは、もういませんが新しいスタートを切って間もない頃を思い出すことができ、新たなことに挑戦する勇気をもらえるような気がしています。今号の特集は、修士論文奮戦記ですが、皆さまも修士論文を書き終えた後に、また各々の新たなスタートを切ることと推察いたしております。私も皆様のように挑戦することを忘れずに、初心を胸に秘めて精進していきたいと思っております。

 また今回を持ちまして電子マガジン編集担当者が変わります。今までご愛読いただいた皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。そして、今後の電子マガジンもより良いものになるよう、改めて皆様のご協力をお願いいたします。

 電子ジャーナルは院生・修了生の皆さんの投稿で成り立っています。
44号の申し込み期間は5月1日〜10日、原稿受付期間は5月1日〜15日です。
 

 なお、「投稿にあたってのお願い」をご一読の上、ご投稿下さいますようお願い申し上げます。


2011年2月22日



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