熱海よりの通信(#04)Re:2010年最近の日本自動車事情
──日本の自動車事情とその考察──

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳

 エコカーの補助金が9月7日に終了してその反動から日本の国内自動車販売台数が大幅に落ち込んで来た。11月2日の日経新聞によると「新車販売10月23%減」という見出しで大きく報じられていた。

1.10月の登録車の販売台数は193,285台となり10月の下落率としては過去最大となった。
 主要ブランド別にみると以下のようである。(単位台数、軽自動車を含む)


 以上から見ると軽自動車主体のスズキ、ダイハツ、を除いて他のブランドは軒並み20%以上の落ち込みである。とくに小型車比率の多いマツダは約半分に近い台数減となった。

 又、この現象はしばらく続く事を想定して自動車各社は新型車の発売を機に需要を掘り起こそうと懸命である。ホンダは10月8日に投入した新型「フィット」が約2週間で2万1000台を受注した。日産が12月に発表する電気自動車「リーフ」も「10年度分として既に6,000台の販売が決まっている。トヨタは年内に主力の小型車「ヴィッツ」を全面改良する予定でありこれらの新型車がどれだけ受注を獲得できるかが今後の課題である。

2.収益面でみれば、上記国内販売台数の落ち込み以外にトヨタは2010年9月中間連結決算でようやく3,231億円の営業利益を確保して黒字転換の見通しが発表されたが、その水準は売上高が半分程度のホンダ(3,978億円)日産自動車(3,348億円)を下回っている。その理由の一つと見られるのが輸出比率の高さである。トヨタは国内生産台数の約52%を輸出しており、ホンダの34%より高い。輸出比率が高ければ円高による利益の目減りは収益を直撃する。円高による輸出競争力の低下を避けるためには、海外移転を進める必要があるが国内の空洞化が加速する可能性がある。トヨタは300万台の国内生産は死守すると伝えられているが今期の国内販売計画は140万台であり、来年以降も相変わらず54%近くは輸出することになる。ホンダ、日産は100万台維持する姿勢である。

3.国内の生産拠点もトヨタは生産子会社を人件費や地価の安い宮城県に移転する計画である。日産は九州工場(福岡県苅田町)を2011年秋に分社化して賃金水準抑制が狙いである。(九州地区の従業員の賃金を抑えて労務費の削減を図る予定である)ホンダは埼玉県狭山市の生産を埼玉県寄居町の2013年稼働予定の高効率な工場に移管の計画であるが、ホンダの場合は国内の生産拠点の工場&本社の従業員の賃金体系は全く同一であり労務費の削減は期待できない。

4.現在の日本自動車メーカーの海外への生産拠点ではタイ国が日本メーカーの輸出基地となるべく各社戦略と投資計画を構築中である。アメリカは販売が横ばい傾向にあり、生産工場もすでに整っている。アジアでは中国の需要拡大が相変わらずであるが中国国内販売量拡大に伴って各社とも投資を増やしている。現在はインド国を視野に入れて各社の投資計画も構築中である。日産自動車はすでにタイで生産した小型車を日本へ輸入することを発表している。トヨタの場合は今まで国内生産にこだわっていたが主力車の「カローラ」を日本からの輸出を13年ごろに国内で生産していた輸出分を全て海外生産に移管する。「カムリ」や「ヴィッツ」などの車種で同様の対策を前倒しする可能性もある。国内で生産する車種についても為替を活用した廉価な海外からの部品調達拡大する方針のようだ。

5.為替による影響はすでに多くを語られているが、トヨタは、11年3月期の下半期(10年10月〜11年3月)想定為替レートを1ドル=90円から80円に修正する方針を固めた。トヨタは1円の円高で年間約300億円の営業利益が減少、半年でも150億円であり、今回の変更幅は10円であり、1,500億円の利益を失うことになる。しかしながらトヨタの場合はお得意の原価改善で900億円、海外値上げ、現地調達拡大などで想定レートを変更しても、業績は下方修正していない。原価改善で下請け、孫請けにも影響を出さないで達成出来れば流石にトヨタである。尚、為替レートを1ドル80円に見直した場合の営業利益に与える影響額(年間)はトヨタの300億円、ホンダの170億円、日産150億円、三菱15億円、スバル40億円、パナソニック20億円、ソニー20億円である。

6.以上のように今後の課題としていくつかあげられるが、1つはエコカー補助金終了の反動減である。2つ目はやはり円高であり営業利益の影響がどの程度か?更にアメリカ市場でのダイムラーなどの海外勢が自国通貨安を武器に攻勢を強めており競争も激化している。これらの不安要素を踏まえて自動車大手の下期業績は販売の急回復した上期には及ばない可能性を残している。中国の販売台数の、伸び率トップの日産、円高の影響の受けやすいマツダも取引先に一律数%の値下げ要請など、追加のコスト削減策を急いでおり各社それぞれの対応策を検討中である。

 今後、各社下期の業績に注目である。




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