熱海よりの通信(#02)Re:USジャーナリスト
──アメリカ放送随一のトークの帝王、マイクの名匠、ラリー・キング氏
CNN、長寿番組から降板──

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳

 アメリカ、CNNの看板トーク番組「ラリー・キング・ライブ」(Larry King Live)の看板ホストとして知られているキング氏が、今年後半に引退することを視聴者に発表した。
 25年間のCNN長寿番組から降板すると火曜日の夜の放送で自ら発表した!と6月30日付マイアミヘラルド紙が報じている。
 大きめの緑眼鏡・いかり型・巻きあげた袖・サスペンダーがトレードマークのアメリカ放送界随一ともいわれる巧みな話題により、トークの帝王、マイクの名匠などの異名を持つラリー・キング氏(76)が、25年間のトークショーに幕を下ろす時がやってきた。
 この「ラリー・キング・ライブ」は今年の秋を持って終了することになった。家族とより多くの時間を過ごすために!決意したという。今後のCNNで、特別番組などの司会一人は継続する予定とのことである。

 このトーク番組に出演した最近の日本人ゲストとしては、豊田章男(トヨタ自動車株式会社代表取締役社長、日本時間2010年2月25日放送)が2009〜2010年にかけて行われた自動車の大規模リコールに関連するアメリカ合衆国議会公聴会に出席、証言した直後の出演であった。その他のゲストとして出演した日本人は、大前研一、小錦、田丸美寿々、デーモン小暮、渡辺謙、などである。日本ではアメリカ版「徹子の部屋」とも言われている。

 今年の6月に入って今回でジャーナリストの大物二人が引退を発表した。一人は、ジャーナリストの女王、ヘレン・トーマス女史ホワイトハウスを去る!と2010年6月3日付のデトロイト・フリープレスのトップ記事で、女史の引退を大きな見出しでとらえていた。そして今回、トークの帝王、マイクの名匠とよばれたラリー・キング氏がCNNの看板番組から降りると報じられた。
 このことは、ジャーナリスト関係の人々に大きな衝撃と影響を与え、驚きの出来事である。今まで多くの人々を感動させた彼女や彼の功績に惜しむ声が多いが、今後ジャーナリスト業界に次の彼女や彼のような素晴らしい人物が出現くることを期待している。

 小生もアメリカ駐在の頃は1985年から開始された生放送の1時間番組を東部時間で夜9時よりよく見たものである。またこの番組は視聴者が電話で参加しゲストに直接質問したり、意見を話したり出来る特徴あるユニークな番組であると当時は大変興味を持って見ていた。

 ここで、ラリー・キング氏の経歴を紹介する。
 ユダヤ人移民の二世として、ニューヨーク州ブルックリンに生まれる。22歳の時に、ラジオ局の働き口を求めて、フロリダ州へ移りマイアミの小さなラジオ局に就職。雑用係りとして雇われたのだがアナウンサー欠員のため、1957年5月1日に初めて番組のディスクジョッキーを務めた。その後マイアミのラジオ番組は評判となり、1960年にABC傘下のテレビ局で討論番組の放送した番組が今日の基礎を築いた。1978年、全米ネットの夜のトークショー番組を担当することになり全米規模で知られる存在になった。

 彼の今回降板する理由として、家族とより多くの時間を過ごす!と言われているが、彼は今までに7度結婚して7人の子供があり「妻との時間を増やし、子供達のリトルリーグの試合に行けるように!」と説明している。
 また、「ラリー・キング・ライブ」が、同じ司会者、同じ時間帯で最も長く続いた番組として、ギネス記録に認定されたことを「とても誇りに思う」と振り返っている。
 同番組には、米国内外の大物政治家やスターがゲストとして出演し、その数は一説によると5万人以上。キング氏の穏やかで、しかも粘り強いインタビューが人気を集めていたが最近は視聴率が下降気味となり、番組終了の可能性は数ヶ月前からうわさされていた。

 詳細な内容は以下に6月30日付マイアミヘラルド紙の記事を添付する。



ラリーキング、今年後半の引退を発表 − 25年間のCNN長寿番組から降板

2010年6月30日付け マイアミヘラルド

 「やめるくらいなら放送中に死にたい」と公言していたベテランキャスターのラリー・キング氏は、毎晩放送しているラリーキングショーを終わらせるにはもっと良い方法があると考えたようだ。 キング氏は火曜日の夜の放送で、今年後半に引退することを視聴者に発表し、50年前に南フロリダで始まり毎日放送してきたショーに終止符を打つことになった。

 76歳のキング氏は、9時開始のCNNのショーの冒頭で、「人生の1章を閉じることになったが、次の章はどういう風になるのかこれからが楽しみだ。ただ、今は毎夜の私のサスペンダー(=訳注:トレードマークのズボンツつり)を終わらせる時が来た」と述べた。

 キング氏はCNNの特別番組には出演するとしたが、「妻と一緒に子供のリトルリーグに行く時間がほしい」という。確かにそうなのだろう − 夫人のショーン・サウスウィックさんは最近、処方薬の過剰摂取による症状から回復中であり、また夫婦は和解によりかろうじてキング氏にとって8回目となる離婚を回避したばかりだ。ただ、キング氏の番組視聴率が急落していることも確かだ。

 火曜日にリリースしたニールセン・メディアリサーチのデータを見ると、キング氏の視聴率は1年前に比べ36%も下落している。CNNは彼の番組ばかりでなく、この数週間のうちに他の番組も同じ運命に陥ることは確実だ。すでにもうひとつのゴールデンアワー番組の司会者キャンベル・ブラウン氏も番組を終了し、CNNはかつてケーブルネットワークのゴールデンアワーにおける圧倒的シェア誇っていた面影はなく、なんとかしようと懸命だが、今や業界第3位まで後退し崩壊の一途をたどっている。

 「視聴率が下がるといつも気分は悪い」とキング氏はワシントン・ポスト紙に認めている。ただ、「プレッシャーを感じたことはない。CNNは自分にプレッシャーをかけたことは一度もない」とも述べた。

 1957年、キング氏は10代のときに、今は廃止されているWAHRマイアミビーチラジオ局で清掃人として働いていた。たまたまディスクジョッキーが時間に現れず、あせった担当者はキング氏を生放送に出演させた。それ以降、南フロリダ・ラジオおよびテレビ局の番組を21年間持ち続け − 時折、お金にまつわるスキャンダルや上司である資本家、ルイス・ウォルフソン氏に対する詐欺行為で逮捕され中断することはあったものの − その後、ミューチュアル・ラジオネットワークで全米版となった。

 CNNではキング氏のスタイルやスタジオセット − キング氏、ゲスト、マイクロフォンのことだが − は南フロリダラジオ時代に使用したものとほとんど変わっていない。去年マイアミヘラルドのインタビューに次のように答えた。「私がいつも心がけているのは、ゲストを問い詰めるのではなく、会話をすることだ。視聴者が聞きたいような質問をしたいと思っている。ある本の作家にインタビューする場合、事前にその作家の本を読むようなことはしない。視聴者と同じ立場で質問をしたいからだ。」

 長いキャリアを通じてインタビューしたゲストの数は約5万人にのぼる。最近はハリウッドスターをゲストに迎えることが多かった。しかしCNNの番組を始めた当初は政治的ニュースをもたらすことも多かったのだ。1993年、アル・ゴア副大統領とロス・ペロー元大統領候補との間のNAFTAに関するディベートを主催した後、NAFTAを支持する国民が急増したため、キング氏の番組はNAFTAの法案成立の大きな要因になったというのが大方の見方だ。

(原文は以下に添付)





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