デトロイトからの便り(18)
―2010年・4月度のアメリカ自動車販売の実績と今後の予測―

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳

 クライスラーが大幅に販売を伸ばした!そのとき私は車を運転中であったラジオからの男性アナウンサーの声が突然大きくなって4月度のアメリカの自動車販売の実績を報じた。今朝(5月4日、火曜日)の101.9放送局からの放送であった。本日、私は久しぶりに日本人の仕事仲間と日本食レストランへランチのために出掛ける途中あった。

 この放送を聴いたのは午前10時10分であり、更に10時半まで放送していた。今年に入ってアメリカの自動車販売の先月までは予想に反して販売実績が好調である。特に今月の大きな変化点としては、クライスラーの販売実績が久しぶりに前年同月比でマイナスからプラスに転じたことである。しかも24.8%と大幅に伸びたことであり、アナウンサーの声も必然的に大きくなったのはうなずける実績数字であった。

 私も今朝の新聞2紙(デトロイト・フリープレス&ザ・デトロイトニュース)をスターバックスで購入してコーヒーを飲みながら4月の販売実績の記事を見たばかりであった。
 ちなみに私はデトロイト・フリープレスを購読しているが宅配は木、金、日、の週に3日間である。その他の日は毎朝メール配信してくる。ちなみに月額購買料金は上記の内容でなんと$9.24である。但し市販用の新聞は従来とおり毎日発行しており1部$1.00である。

 両紙の記事の書き方にも注目である。デトロイト・フリープレスはビッグスリーの販売実績を書いて次に日本の3社(トヨタ、ホンダ、ニッサン)、ヒュンダイ、と続いているが、デトロイトニュースは販売実績の順番にGM、フォード、トヨタ、ホンダ、クライスラー,ニッサン、となって書いている。両社の表現の仕方の違いの現れている点は中々興味深いところである。

 先月の全米販売実績トップはGM(前年同月比7.2%)2位=フォード(同24.9%)3位=トヨタ(同24.9%)4位=ホンダ(同12.5%)5位=クライスラー(同24.8%)6位=ニッサン(同35.1%)7位=ヒュンダイ(同29.7%)8位=VW(同39%)9位=キア(同17.3%)10位=スバル(同48.2%)であり、なんと上位10社の販売は全て前年同月比プラスであり、しかもGM、ホンダ、キア、以外は軒並み20%以上の伸び率である。すばらしい実績である。

 更に特筆すべきは今年の1月から4月までの累計実積で前年同月比+30%以上の会社が4社あることである。フォード(+33.2%)、ニッサン(+31.6%)、VW(37.7%)、スバル(+41.1%)で日本車2社、アメリカ、ドイツ、である。その中でもなんといっても突出しているのはスバルである。スバルはこれから更に販売を伸ばし、ぜひとも車種別実績でトップ20位までに顔を出してもらいたいと願っている。

 4月の車種別販売実績のトップはFシリーズ(フォード)2位=Silverado(シボレー、GM) 3位=アコード(ホンダ)4位=カローラ(トヨタ)5位=カムリ(トヨタ)6位=シビック(ホンダ)7位=エスケープ(フォード)8位=フュージョン(フォード)9位=ソナタ(ヒュンダイ)10位=CR−V(ホンダ)である。

 トップ10の銘柄はフォード3車種、ホンダ3車種、トヨタ2車種、GM1車種、ヒュンダイ1車種である。この中で、わずかにシビック(ホンダ)のみが前年同月比マイナス4.6%であり、他の9銘柄は全て前年同月比でプラスとなっている。

 ラジオの放送では、何故クライスラーが大幅に伸びたのだろうか?とのアナウンサーの質問にゲストの自動車専門家の説明では、フリートカー&リースカーが大幅に伸びた。又損益分岐点が大幅に下がっているので利益が出てきた!との事であった。「デトロイト・フリープレスによれば同じような現象はGMとフォードも消費者向け販売よりもレンタル会社や政府、フリート向け販売が増加している。(US Auto Front 2010-05-05, P2)」との事である。しかしながら以前にも同じようにフリート販売とレンタルで収益が悪化して、一時のビッグスリーはこの販売方法を中止していた経過を又ぶり返すような営業戦略を取り出したのである。

 このフリート向け車とリースカーの詳細は小生の以前のレポートである電マガ33号アメリカ自動車事情「フリート販売とレンタカー」および電マガ34号アメリカ自動車事情「リースカーとローン販売&インセンチブ」を参照戴きたい。

 又、今年に入ってからの販売の特徴は、ローン販売やインセンチブ、無料メンテナンス(保守・点検)などであり、トヨタなどは最高5年間のゼロ金利ローンや10車種でリース販を値引きや2年間の無料メンテナンス(保守・点検)など、これまでに無い大胆な販売促進策を延長している。(US Auto Front 2010-05-05, P1~2)

 ちなみに最近の新聞紙上で以上の販売促進策のPRを見てみると、GMシボレーの金利0%=72ヶ月、キャシュバック、5年間10万マイル保証、フォードも0%金利、$1000のキャシュバック、クライスラーは5年間10万マイル保障、キャシュバック、トヨタのカムリは$750のリベート、60ヶ月の金利0%、ホンダは 4つのゼロ販促($0=Down-payment, $0= Security Deposit、$0=First Month Payment, $0=Due at lease signing) をPRしている。(Time 誌 Mar 3, 2010, P05)
 など以上は、一例であるがほとんどの自動車会社は同様に販売促進策を打ち出している。
 そのためにこの販売促進策が終わった後の販売がどのようになるのか予測は難しい。トヨタの例では6月1日までこの販売促進策を続けると発表している。

 このような自動車販売の状態が続きGMとクライスラーは政府からの借入金を返済すると最近発表している。自動車業界がアメリカ経済の牽引車となって経済の復活を遂げていくであろうし、又そうなってもらいたいと切望している。そのことは、今年の今までの好調な状態を続ければアメリカだけでなくおそらく全世界の経済にも影響のある注目すべき大きな動向である。



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