デトロイトからの便り(15)
―2009年・第41回東京モーターショー見学記―

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳

 どこかで見たような雰囲気!の会場であると感じた。暫らく考えていたら思い出した。今年の1月初めに見たデトロイト・モーターショーに良く似たレイアウトの会場であった。其の内容はこうである!

 会場のスペースに余裕がある。乗用車と2輪車が同居している。部品メーカーの展示も同じフロアーである。このようなコンセプトは今年のデトロイトと同じであることがわかった。
 今年、このようなレイアウトになったのもやはり出展する自動車メーカーが少なくなって来ているからであろう! デトロイトではニッサンを始めヨーロッパからの出展メーカーが少なくなってきた結果であった。同様に東京では、GM、フォード、クライスラー初めヨーロッパメーカーの出展が少ない為である。そのためか、来場者も何時もよりは少なく感じられた。又、例年のようなラッシュアワーの電車の中にいるような雰囲気からは解放されて気分はよかった!

 最初に見たいのは、やはり一番気になっているホンダの展示場である。早速、3つある会場の「西ホール」に入った。入り口からはすぐに2輪車のヤマハ、ハーレー・ダビッドソンや、汎用関係のボンバルディアなどが展示されていた。同様に電装、計器、照明、等の部品メーカーさんが展示されていた。ここで、特に気になったのは電装関係のワイヤーハーネスを展示していた「ヤザキ」であった。ハイブリッド車のプラグ・イン用のワイヤーハネスの「高電圧電源分配システム」であった。展示していたシステムはトヨタ車のプリウスのものであった。一見したところ、この配線は従来の概念の延長であるが、とにかく、大きい、太い、重い、が第一印象であった。
 ご存知の方も多いと思うが自動車のワイヤーハネスは2つの役割を持っている。其の一つは電源=エネルギーを伝達する、すなわち人間で言えば動脈血管の役割でバッテリーからエンジンやモーターに動力用の電源を送るワイヤーである。二つ目は信号=計器などに信号伝達する、人間でいえば神経機能の役割であり、左右のウインカーに電気を送る、というような役割を持っているが、今回のハイブリッド車のプラグ・インのワイヤーは一つ目の役割のワイヤーである。
 このワイヤーシステムはとにかく重そうであった。私はヤザキの説明員に重量や材質、その他仕様にまつわるかなり専門的な事を聞いたので周りの説明員から注目されるようになったために質問を途中からトーンダウンした。トヨタからは更なるコストダウンや重量軽減の要望が出ているのではないかと質問したら、説明員からトヨタより強い要求が出ているとの回答であった。
 製品としては、従来のものに更にもう1本新しく10キログラム以上のワイヤーハネスが追加されたようであった。更にプラグ・インの電源も車の電極につなぐ充電ケーブルを持って見たが、両手で持ってもかなり重かった。とても片手では重くて操作できないと説明員からも注意された。私が少々時間をかけて質問をしたので、どうやら業界の人のように見られて他の説明員からも注目されている雰囲気を感じたため適当に切り上げて他のコーナーに移動した。其の近くにラバー製品の展示もあったが、見ているうちに以前から私の知っている説明員に会ってしまったので軽く挨拶だけをしてからホンダ車の展示場に移動した。

 ホンダのコーナーでは、偶然にもロボットのアシモ君が出場していて30人くらいの人たちがカメラを構えていた。子供がアシモ君に声をかけると立ち止まってポーズをとった。そのとたんに多くのカメラからフラッシュが光っていたと同時に黄色い声の歓声もあがっていた。
 また、その隣には最近発表された電動1輪車や、歩行補助機などの製品も話題を呼んでいた。以前、私は友人から、「定年退職してからボランティアで介護保健の研修に参加した時にホンダの歩行補助機がホンダ社より紹介されて歩行困難者には大いに役立つものであることが現場で証明された」と聞いたことがある。そこで、私も今回現物を初めて見たので大いに興味を抱いた。特に階段を上り降りするには素晴らしく有効であるとの事であった。
 尚、其のときのホンダ社からの説明では、まだ市販できる段階ではなくもう少々時間が掛かるとの事であった。私はこのような製品は今後の高齢社会に必要であるために早く市販されて又、廉価で社会に貢献できる日が来る日を願って止まない。
 また、ホンダのブースでは説明員やモデルもほとんどが若い男性で黒ポロシャツにスニーカーというスタイルで従来の女性モデルの姿は見られなく新鮮な感覚を憶えた。又、かなりイケメンのメンバーであった。展示されている内容は、従来タイプの車のコンセプトカーや先端技術のハイブリットや電気自動車の展示と2輪車、汎用製品などが展示されていて中々バラエティに富んだショーであると感じた。

 次の「中央ホール」にはトヨタと其の関連自動車メーカーがずらりと並んでいた。レクサス、ダイハツ、スバル、マツダ(新技術でトヨタと提携)などの自動車各社であった。ここでもホンダと同様に、従来タイプの車のコンセプトカーや先端技術のハイブリッドや電気自動車が多く展示されていた。しかし展示の仕方やレイアウトは従来のスタイルを踏襲しておりホンダとはかなり違ったイメージであった。数多くの現行車やコンセポプカーをところ狭しと並べ、女性のモデルによる新車の展示をしており、多くの人がモデルをカメラに収めていた。
 又、このホールでは、今年のカーオブザイヤー車なども含め30周年記念として過去の多くの車や、写真、パネルなどにも興味を引かれた。日本の自動車発展の歴史を見られて大いに楽しませてもらった。その隣には、先行して報道されているように今回の東京モーターショーには外国自動車メーカーの参画が少なくロータスなど数社であったのは寂しかった。

 最後に「東ホール」のニッサンと三菱を見たがここでも従来タイプの車のコンセプトカーや先端技術のハイブリッドや電気自動車が多く展示されていた。特にニッサンのコンセプトカーは人々の目を引き付けており多くの人だかりがしていた。  三菱は電気自動車一辺倒というような感じがした。又、展示の仕方やレイアウトはニッサン、三菱の両者もトヨタや他の自動車会社と従来のスタイルを踏襲していた。

 以上、今回の東京モーターショーを見学して感じたことは、
1.世界の最先端を行く日本自動車業界のハイブリッド車や電気自動車などの技術や環境に対する取り組み、最先端技術を駆使 した安全対策などは、他国の自動車ショーとは趣を一変した姿勢が良く現れている素晴らしいショーであると感じた。現在、日本の自動車技術は世界の国々より頭一つ飛び向けた状態にあり今回のように先端技術を一堂に集められて見られることはこの東京モーターショー以外には無く、私は今回の東京モーターショーは大変良い勉強の機会を得たと感謝している。

2.今回から、自動車ショーという名前よりもモビリティショーと趣が変わったイメージがした。乗用車、モーターサイクル、汎用製品、自動車関連部品、機械器具、電動アシスト歩行器、電動アシスト自転車、等も出展されており多岐に渡っておりまさに「Mobility show」であると感じた。したがって展示の仕方も従来型の乗用車の展示からMobilityの展示の仕方に変更してきたホンダのコーナーは大変良い趣であり、又今後の東京モーターショーのあり方を示唆しているように感じた。

3.たまたま、今回のショーを見に行った日は10月30日(金)は平日であった事もあり混雑することも無くスムースに見ることが出来たが、来場者は、家族連れ、多くの若者、学生、外国人、高齢者、等さまざまな人たちであった。特に今回は、背広姿のサラリーマンが減少していた。又、ここでも多くの女性の見学者が目立ってきた。学生さんは高校生の修学旅行で来た様な地方の学校の生徒も見られた。

4.総評としては、今までのような混雑した中で中々近づけなかった車に手を触れることが出来るようになったり、かなりスペースに余裕も出てきてゆったりと会場を見渡せることが出来て気持ちの上でも余裕があった大変良いモーターショーであったと感じている。私は今回デトロイトから出掛けてきてこのショーを見に来たが大いに収穫のあったショーであった。

5.次回の東京モーターショーに更なる躍進を期待している。


以上


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