国際行動分析学会(ABA)に参加して〜関西人ノルウェーに行く〜

人間科学専攻 9期生・修了 藤原 誉久

 いざ、学会へ
 去年の11月頃、面接ゼミで眞邉先生から「来年ノルウェーで国際行動分析学会があるのでどなたか行きませんか、フィヨルドツアーにも行きます」とのお誘いがありました。最後のフレーズだけ耳に残ったためか、その頃修論作成で追い込まれ現実逃避したかったのか、「行きます」と即答しました。当時1年生、同じ関西人の村井さんも「行きまーす」とのことで、少しずつ話が進んでいったのですが、まだ二人とも学会に参加することについてはピンとはきていなかったのでした。
 出発3日前、ノルウェーの観光名所は調べ、フィヨルドは寒いとのことでしたので防寒具を買い、デジカメも買い、トランクに詰め込む段になってふと気づきました。「ちょっと待てよ、学会について何も調べてないけど、本来は学会に参加するんとちゃうやろか?」
 慌ててホームページを見て、英語であることにまず気づき、学会参加費が高いことに気づき、学会は3日間あることにやっと気づく始末。せめて関心のある領域の発表は聴かねば、「もったいない」とにわかに調べ始めたのでした。
 平成21年8月6日11時、私は眞邉先生ご夫妻と成田からご一緒し、アムステルダム経由で学会会場のあるオスローに向かいました。日本との時差は7時間、向こうのほうが遅いため、オスローのラディソンSASプラザホテルに着いたのは23時近くになっていました。ホテルでは大阪から出発した村井さんとご主人が先に着いて待っていてくださいました。チェックインを済まし、朝に計画を立てましょうということで、部屋へと別れました。

 翌日から学会が始まりました。会場は宿泊場所でもある、ラディソンSASプラザホテルで、主に一階と二階で想像したよりもこじんまりした会場でしたが、参加者が500名弱だったこともあり、ゆったりとした印象でした。参加登録でもパソコンのたちあがりがゆっくりで、受付の方は「おそすぎる」とぼやいておりました。先生は「アメリカでの開催はもっと参加者が多く、ポスターの数も多いですよ。」とおっしゃっていました。私のような国際学会初心者には身近に感じ、敷居も少し低くなったように思いました。
 7日は18時からポスターセッション、19時30分からオープニングレセプション、8日は8時から19時30分までペーパーセッション、ポスターセッション、シンポジウムがあり、9日は8時からペーパーセッション、シンポジウムで、5時からクロージングセッションで18時に閉会という日程でした。眞邉先生は7日のポスターセッションで発表されます。
 
まず、私たちはこのポスターセッションに参加しました。助手としてポスター張りを手伝おうと意気込んでいたのですが、あまり役にも立たず、邪魔ばかりしていたように思います。
 先生の演題タイトルは「Perception of Rotating Blade in Japanese Black Kites (Milvus migrans)」、日本のトビにおける回転体の知覚についてです。風力発電は環境にやさしいエネルギーとして近年より脚光を浴びていますが、鳥が風車に衝突する事故が報告されていて、野生生物保護の観点からも野生生物にとって視認性の高い風車の開発を目的として行った研究を報告されていました。環境問題、とりわけ人間と野生動物との共生はどこの国でも関心の高い問題であり、先生のパネルの前では参加者が足を止め、積極的な質疑がなされていました。
 その後のオープニングレセプションは、テーブルに座ってオードブルを取り分けて食べる、また飲み物はアルコールバーで購入する形式でした。アルコールの値段は、もともと消費税が高いので値段も高いのですが、さらにホテルということで値段が高く、関西人は「ぼったくりや」「隣で安く売ったら商売できるで」など言い合っていました。
 参加者は24カ国から来ていて、国ごとに参加者の挙手を求められました。ヨーロッパがやはり多いのですが、われら日本人は10数名の手が挙がり(うち関西人が5名いました!)、ヨーロッパ以外の参加者の中では多かったように思いました。

 翌日はもう一つの目的である、現地からのサイバーゼミを行いました。オスローは昼の12時30分ですが、日本は夜の19時30分、仕事から帰宅しての参加にもかかわらず、1年生、2年生、研究生と多くの方に参加して頂きました。今までも先生が海外での学会の時には、現地からのサイバーゼミを行っていただき、学会の雰囲気を伝えて頂いていました。その時はまさか自分が現地でサイバーに参加するなど夢にも思っていませんでした。先生から「(日本出発から現在に至る)経緯を話してください」と言われ、なにか気の利いたことを話さねばと思ったのですが「学会については3日前にあわてて調べました…先生の後ろから金魚のフンのように付いていっております。…楽しく過ごしております!」と全く情けない発言になってしまいました。ただ、このように遠くはなれたところから、それもまだ学生にとって遠い存在の国際学会が、ネットを介することで、少しでも身近に感じるのではないかとも思いました。

 学会3日目は午前中に、私や村井さんの聴きたいセッションがあり、先生に傍についていてもらい解説をお願いしました。なんとも都合のよいお願いで申し訳ないとは思いましたが、いかんせん、語学力がありません。私の研究は高齢者、特に認知症の方に対するケアに行動分析学を応用しようとするもので、高齢者に対する研究は数少ないのですが、ペーパーセッションで「Personality and disfunctioning in the elderly」というものがありました。高齢者で人格の変化や機能が喪失していくのには、成功体験が失われていくことが関係していることを行動分析の基本的な考え方である三項随伴性をもとに分析して、成功体験を持たせることで感情機能が向上するといった内容であったかと思います。このような高齢者のとらえ方は国が違ってもそれほど変わらないものであると感じました。また、村井さんは刺激等価性の発表やシンポジウムに参加されていました。比較的基本的な内容が多く、英語で聞くとこうなるんや〜と感心されていたとのこと。我々は国際学会が難しくてチンプンカンプンだと思っていましたが、少し身近に感じたのでした。 このようにして、私の学会体験はあっという間に過ぎました。

オスロー観光
 学会の合間を縫って(観光の合間を縫って学会?)オスロー観光へ繰り出しました。オスローは人口56万人、海と山に囲まれたこじんまりとした町です。多くの観光スポットは徒歩圏内、トラムと呼ばれる路面電車を使えばなお効率よく回れます。その中で、オスローに来たらここだけは行くべしといわれる、有名な観光スポットを紹介します。まずはフログネル公園、彫刻家のグスタフ・ヴィーゲランがデザインした公園で、212もの彫刻が全体に配置され、その数やその彫刻の動きのユニークさは、日本の彫刻の森美術館の比ではありませんでした。中でも男女121人が複雑に絡み合った17mの尖塔モノリスは圧巻です。この写真は眞邉先生撮影のもので、まさしく青空に向かい悠然とそびえておりました。
 他にも赤ちゃんの像「怒りんぼう」などが有名なのですが、我々の目に留まったのは、この星座の像、なんか変なことに気づきませんか。しし座とふたご座の間に妙な星座が…「さそりですかねえ?」「しし座とふたご座の間ってかに座ちゃいますかあ?」「どうみてもえびよねえ…」(眞邉先生の奥様)「ノルウェー人て、かにとえびの区別が付けへんのですかねえ?」「かに缶買うときようみなあかんわ。」これって間違ったのでしょうか、それともユーモアなのでしょうか、結局謎のまま残りました。
 もう一つの観光スポットがムンク美術館です。エドワルド・ムンクの絵画が多数展示されています。有名な「叫び」も観光シーズンでこの美術館に移されていて見ることができました。暗い題材や強い色彩の絵を見て、少し暗い気持ちになって展示室をでた私たちの目に飛び込んできたのは、かわいらしい「叫び」チョコレートケーキでした!

フィヨルドツアーへ
 学会を無事終えた翌日からは、いよいよ学会の次に楽しみにしていた、フィヨルドツアーです。ノルウェーの3大フィヨルドの一つであるソグネフィヨルドを、オスローから鉄道、船、バスを乗り継いでいく壮大なツアーです。オスローを朝8時11分に出発、次第に景色は人家がまばらに、原野と川、そして万年雪の山へとかわっていきます。ミュールダールでフロム鉄道という登山鉄道に乗り換え、谷間の急斜面をゆっくり登っていきました。次第に標高も高くなり、山容は白がはっきりと目立つようになっていきます。時々、列車が止まり、ホームに降りるとジャンパーを着てちょうどいい気温となっていました。
 そしてフロムという村に着き、いよいよ、船に乗り込み、フィヨルドへ!
 フィヨルドは氷河に削られたU字谷に海水が流れ込んでできた氷食谷の入り江で、最深部はなんと1308mもあります。その水面は静かで深い色合い、切り立った岩壁はいっそう静寂を醸し出します。そして船の廻りを飛ぶカモメ、鳴き声がまた静寂へと吸い込まれています。
 雄大な自然に身を置き、心地よいときをすごしました。
 その後、素敵なカモメの話に。
  眞邉先生「カモメは雑食なんですよ。」奥様「結構鋭い顔しているのよね。」眞邉先生「海のカラスみたいなものです。」
  関西人1「なんかイメージ変わりました…」
  関西人2「いっそのことスプレーかけて真っ黒にしたろかなあ。」

そして帰国―
 このようにして時は過ぎ、あっという間に出発の日を迎えました。ノルウェーではかなりゆっくりした時間をすごしました。列車の運行時間などはきっちりとしているのに、スーパーのレジで長時間待たされてもあまり気にしない、人間の動きは万事スローテンポ。学会参加に観光という大きなおまけが付き、大変楽しい1週間を過ごしました。
 関西人は日本に戻って早いテンポについていけるのかが多少不安になっていました。
 オスロー空港での記念写真です。左から眞邉先生夫妻、村井さん夫妻(関西人)、藤原(関西人)。
 最後に、眞邉先生、奥様、村井さん、ご主人、道中色々ご面倒を見ていただき有難うございました。自分では経験できないことをご一緒させていただいたおかげで経験することができました。この場を借りてお礼申し上げます。

総合社会情報研究科ホームページへ 電子マガジンTOPへ