デトロイトからの便り(13)
―勝利の雄叫びはFireworkだった!!―

国際情報専攻 6期生・修了 森田 喜芳

 初めての経験であった! 突然、球場全体の電気が消えて一瞬真っ暗になった。その途端、大音響とともに、白い大きな火柱が立った。バックスクリーンのセンターポールの近くから、連続してFirework(花火)が打ちあがった。
 横幅50メートルぐらいの打ち上げ筒から連続して、真っ暗な夜空にシュッ、シュッ、空気を切って飛ぶ上って行き夜空に花が一杯に咲いたように色とりどりの美しい花火が上がり、その花火が消える寸前に再度大きな光を放って球場全体を見渡すことができるようになっていた。 お陰で、なんともいえない優雅な雰囲気に浸った。約15分間のショーであったがこの花火ショーを見ただけでも今日の入場料の価値があったような本当に素晴らしい勝利の雄叫びFirework(花火)ショーだった。

 7月10日、コメリカ・パークという名前のデトロイト・タイガース専用の大リーグ球場でクリーブランド・インディアンスの試合が終了した。結果は5対1で、タイガースの快勝であった。
 試合終了後の勝利の雄叫びが、この花火ショーであった。私は日本でもかなり花火大会を見に行ったがこんなに連続してかなりの時間、花火の打ち上げを見たことがなかった。ちょっと日本と違うところは、日本の場合は尺玉が必ず何発に1発上がるが、こちらでは尺玉の花火が上がらなかった。しかしながら、大きくきれいな花火は大変すばらしかった。毎年この球場に1回は見に来るがこんなすばらしいショーは今回が初めてである。

 タイガースが勝利をした後、観客が皆さん残っていたその理由がよくわかった。普通の場合は、試合終了前にほぼ勝利が確定するとぞろぞろと帰るのが一般的であるが、その日は、最後までほとんどの観客が席に座っていた。

 本日、観戦したシートは一塁側の前から4番目のシートであった。今日の試合は私の6月21日「父の日」のプレゼントとしてもらったものである。球場には今日もちょっと早めに駐車場に到着したが、駐車料金が去年より5ドル上がっていた。昨年は、記憶によれば20ドルであった。私は、毎年この球場に1度は来るので、タイガースの帽子、Tシャツ、短パンを一つずつ買い揃えて、今では上から下まですっかりタイガース・ファンのスタイルとなって球場入りした。一塁側でも、ほとんどの人といっていいくらいに、タイガース・ファンであり身に付けているものの何か必ずタイガースのロゴが入っていた。したがって一塁側であるにもかかわらず、球場全体が、タイガース・ファンである。
 本日は、外野の一部を除いて、ほとんど満員のような状態であるため、タイガース選手の一挙一動に大歓声、沸き起こっていた。

 ちょうど今から30年前に、クリーブランドにあるインディアンス球場に、シンシナティ・レッズの広島カープと良く似た赤い帽子をかぶって球場に入ったとたんに、周りの人達から大ブーイングをもらった苦い経験がある。

 地元のチームをひいきにしている内容は大変なものである。現在の夏シーズンでは、TVの放送でもスポーツ番組は必ずタイガースの結果から放映している。地元の新聞のスポーツ欄では、やはりタイガースの内容が一面のトップに書かれている。
 新聞のスポーツ欄は10ページ分ぐらいある。全米のほとんどのスポーツがかなり詳しく報道されている。
 特に地元の新聞では、Michigan Six という紙面が1ページある。Michigan Sixとは1.Hockey(Red Wings) 2.Basketball(Pistons) 3.Baseball(Tigers) 4.Football(Lions) 5.Football(Wolverines) 6.Basketball(Spartans)であり4番までがプロ・スポーツである。
5はミシガン大学(U of M)、6はミシガン・ユニバシティ(MSU)である。以上の六つのチームについて、毎日各々詳細にわたって紙面を賑わせている。
 このほかデトロイトのプロ・スポーツでは、女子のバスケットボール・チームなどがある。したがって地元に対する思い入れと、ファンの応援は大変なものである。このようなことは、日本の事情と全く違うので初めてアメリカに来たころは非常に驚かされた。

 球場では相変わらず、大きな声で、ビールやコーラ、ピーナッツ、ポップコーン、ホットドッグなどを売っている人たちが、ひっきりなしにきていた。いつもこの球場に到着したときは、お腹が空いてくるせいかホットドッグやビールなどがとても美味しく感じている。
 今日は久しぶりに、生ビールを飲んだ。計算してみると、約5カ月間アルコール抜きであった。しかも、今日は生ビールを大きなジョッキーに2杯飲んでしまったため、試合が始まった当初は顔が真っ赤になりかなり気持ちよく酔っ払ってしまった。
 私の今日のお目当ての選手は、Joel Zumayaというリリーフピッチャーである。しかしながら本日も途中出てきたが、たった2球だけ投げて引っ込んでしまった。電光掲示板にはこの2球ともに球速は100マイルを超えていた。
 1週間くらい前に彼をテレビで見ていたときは、105マイル(168キロ)の数字が出ていた。これらのスピード・ボールを出す選手は日本ではまったく見られない。しかしながら、少々コントロールに難があるピッチャーである。

 アメリカでは、プロ野球のスカウトが高校生を見る基準として最低90マイル(144キロ)以上の選手でないと、スカウトの目には止まらない。今から25年以上前の話だが、私の息子の一人がアメリカの高校生の頃野球部のピッチャーとショートを守っていた。
 ある時、他の高校と練習試合を行っていたらプロのスカウトが見に来て息子が投げていて、90マイル以上は出すのか?と周りの人に確認していたということである。ちなみに私の息子は、大学は日本の大学であったが、卒業年度に読売ジャイアンツが一般人からの入団募集を行っていた試験を受けて第二次選考まで行ったが最終選考で合格しなかった! したがってアメリカの野球のピッチャーの条件は投げる球のスピードである。コントロールも要求されるがスピードのほうが優先されている。

 今年のタイガースは、現在のところ、大変良い成績であり、アメリカン・リーグのセントラル地区で首位を走っている。ちなみにアメリカン・リーグは、このほかにイースト地区とウェスト地区があり球団数は全部で14チームである。イチロー選手が所属するシアトル・マリナーズもアメリカン・リーグのウェスト地区である。ナショナルリーグは、3地区あり球団は、16チームである。両方のリーグの合わせたチームの合計は30チームとなる。

 尚、タイガースのOBでタイ・カップという素晴らしい打撃の選手がいて、今でも時々話題になっている。また、タイガースのユニフォーム姿は昔と同じでズボンがひざのところで止まっており、ストッキングが長く出ているスタイルである。
 最近の流行はヤンキースのようにズボンの裾がスパイクのところまで伸ばしており日本のプロ野球もヤンキース・スタイルが多い。アメリカでは選手も球団も色々個性を発揮しており私も熱烈なファンではないが見ていると中々面白く楽しませてくれる。


 以上、今年の野球観戦記でした。


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